114.私の古い困惑、怒り
この作品の主人公、佐竹 うさぎはよい子です
でも、それが世界のどこまでも伝わっているわけではありません
そもそも無理です
そしてそれは、うさぎにとってもそうです
世界にたくさんいる人の心を完璧に理解するなんて、できません
そんな彼女がもらった「分かってもらえた」は、本当に分かってもらえたのか、その方がお得だからなのか
『どうか、答えてください』
ルルディ王夫妻が急かしてくる。
私は思った。
やっぱり、と。
それが真っ先に感じたコトだった。
今の夜よりも暗い、進む道が見えない気持ちになる。
だけど前ほどじゃ、5年くらい前ほどじゃないや。
前なら、大声で泣きだして、止まらなくて。
慣れたのかな。
それはそれで、寂しいかも。
「魂呼長官にしても、プロウォカトルの全職員にしても、以前受けた被害を理由に、勝手に攻撃することは、ありません! 」
言った。
「したとしたら、それは仲間ではありません! 」
こんな時のために、ずっと考えていたセリフを言った。
本当は、ほかにも言いたいことはたくさんある。
長官と、その父親を捨てた母親のこと。
長官の体は、ほとんどが機械のこと。
それで母方の故郷からも人間として見てもらえないこと。
思いだす、私を形作る、たくさんのこと。
だけど今は、言うべきじゃない。
それも、話を短くまとめることも、王夫妻の要望だからだ。
言えない、くやしさはグッとがまんして。
「そして、私はそれで良いと思っています。
以上、通信終わり!! 」
ピッ
ああっ切っちゃった。
思わず、切っちゃった!
役人のお仕事としては正しい、のかな?
王夫妻に、それが分かってくれるのかな?
私には分からない。
あの夫妻のことは、良い人たちだと思っているよ。
娘を追って2人だけでやって来て、今は困りきっている。
きっと、同じことをする人は、地球にだってたくさんいる。
それでも・・・・・・。
心の半分は、疑ってる。
私は、自分が美しい・・・・・・とは言えないにしても、美しくありたいと思ってる。
そしてそれは、ある程度成功したと思ってる。
だって、安菜たち友だちも、みつきやしのぶたち家族も、話しかければ笑顔で答えてくれる。
だけど、王夫妻は外部の人だ。
私は、どう見える?
プロウォカトルと言う得たいの知れない組織の、巨大ロボットと言う訳の分からない兵器をあつかう変な人。
そう言えば、「何に悪用するか分からない」と面と向かって言われたこともある。
それはルルディ騎士だった。
この作戦に参加してるかは、調べない方がいい。
いたら、私は必ずキレるから。
ため息がでるよ。
自分がイヤになるよ。
その時、またスマホに呼ばれた。
また、達美さんだ。
話したくない。
きっと、ルルディ王夫妻からの伝言だ。
でも、話さない選択肢はない。
話すのが、私の仕事のひとつだからだ。
これからどうなるか。
分からない不安を振り払い、スマホを繋げる。
ピッ
『ルルディ王夫妻から伝言。貴女方を信用します。
文華を託します。だって』
・・・・・・分かってもらえたみたい。