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111/119

111.見捨てない! たとえ・・・・・・

 何かなぁ

 絶対お知らせしたいことができました

 今日、変な仕事をしました

 田植えしたばかりの田んぼに、油らしきものをまかれました

 どうもラーメンの豚骨みたいな気がするんですけど、それを寸胴鍋ひとつ分くらい

 アレで苗は枯れるんですね

 食物だから、田んぼの中で分解されるなんて、とんでもない!

 市役所に申請したら、油を取るシートをたくさん持ってきてくれました

 回収に五時間かかりました

 これは犯罪です!

 ボルケーナ先輩が、ふらついて倒れたのを、とっさに達美さんが支えた。

『ああ、倒れたままで失礼します』

 先輩の、その気づかいは美徳だよ。

『助かりました』

 ルルディ王と王妃に手を振った。

 2人は文華のキャプチャーをおしだしていた。

『助けたつもりは、ありません』

 それが、ルルディ王からの答えだった。

『え? あの連中から、かばってくれたじゃないですか』

 あの連中? 

 こん棒エンジェルスのことか。

 ずっと先輩を閉じ込めていたと思った。

『貴女が文華をかばったのは、そのままでは文華めがけてこん棒エンジェルスが殺到するのが確実だったため』

 王が、震える声で言った。

 先輩への、恐怖から来る震えだ。

『我々は、それに便乗したにすぎません』

 もうひとつ、震える声がつづく。

『私たち2人だけで来たのも、疑問でしょう』 

 王妃だ。

『こん棒エンジェルスが得た力は、元はこの愚か者が持ち込んだもの』

 おしだしたキャプチャーを小突きながら。

『それも全て、わが国由来のもの。

 ならば、その始末はわれわれの手でつけたかったのです』

 2人とも、声は震えていた。

 それでも、言いたいことは言うのは、さすがだと思う。

『地球人の騎士団の手を借りなかったのは、彼らを煩わすのは、筋がちがうと思ったのです』

 人によっては、目的もなく先輩に従うのを、選ぶこともあるのに。

『どうしても助力が必要なら』


 王と王妃の後ろで、巨大キャプチャーがゆらめいた。

 何か生えてくる。

 それは、無数の泣き顔だった。

『た! 助けてくれぇ! 』

『もう、イヤだぁ! 』

 巨大キャプチャーに入った、こん棒エンジェルスが。

 肩から上だけだした姿で、並べられていた。

『フミカサマー? 』

 泣き顔のひとつが気づいた。

『貴女は、私は生きたいのか?とおっしゃった』

 王と王妃が持つキャプチャーに叫ぶ。

『その通り!

 生きたい! 』

 さらされた者は、男も女も関係ない。

『だから戦って!

 私たちを助けて! 』

 それぞれの方法でうったえてる。

『愛してる! 愛してるよ!

 ずっと側にいるから! 』

『わかりません!

 貴女からたまわった「私は生きたいのか」という言葉の答えがわかりません。

 どうか、ご容赦を! 』

『閻魔 文華のくそバカやろう!

 こんな無茶苦茶な世界に連れてこられたのは、お前のせいだ! 』

 

 王妃の手から魔法炎が伸びる。

 その形が、太刀の姿をとる。

『この愚か者の首、切り落として差し上げましょうか? 』

 ボルケーナ先輩へのおびえは消えてない。

 でも、確かな殺意を抱えていた。

『よしてください』

 真脇ポルタ社社長が答えた。

『そんな、こん棒エンジェルスにも迎えはきています。

 遠くから来た迎えの人たちの気持ちも、大切にしませんか? 』


――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


 もめる、かな。

 私としては真脇社長が言ったことに賛成だけど。 


 だけど今は、朱墨ちゃんに言われたことが、頭をグルグル悩ませていたんだ。 

(説得を朱墨ちゃんにまかせる、か)

 相手は閻魔 文華。

 魂呼長官の腕をうばった、極悪人。

 だけど正直、文華のことをそれほど驚異に感じてなかった。

 なんで?

 たぶん、一言だけ聞いた文華の言葉のせいだ。

(私は、生きたいのか。

 行きたいのか。かもしれない)

 あのボロボロの姿、やせこけた顔。

 安菜と集めた資料から作ったイメージとは、あまりにも合わない。

 それに文華は、こん棒エンジェルスの指揮官。

 でありながら、突然行方をくらませたらしい。

 それは、何でだろう?

 スッキリしない。

 重要なことを、知らない気がする。


「朱墨ちゃん。

 閻魔 文華からは、あなたが助けてきた人たちと、同じものを感じるんだね? 」

『感じる・・・そうですね』

 疑問はあるけど、約束は果たさないと。

「申請はしておく。

 正式な命令が下ると思う。

 それでも、この混乱状態だよ。

 あなたが文華を確保して、自分ひとりで説得することになるかもしれない。

 それでも良い? 」

 対する、朱墨ちゃんの答えは。

『それなら、いつも道理ですね』


 やっぱり、九尾 朱墨は文華を見捨てない。

 たとえ罪人でも。

「王さまとお妃さまへの話しは、私がやろうか?

 その、立場的に」

『そうですね。

 できるだけみんなで話し合いましょう』


 銃声が、おさまった。

 これで本当に1人残らず捕まったはずだ。

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