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101.何だと思う?

 ハンターキラーの一人が、遠隔操作ロボットで撮してくれた。

 ライトに照らされた、その姿。

 ・・・・・・何度見ても、閻魔 文華だよ。

 でも、何て変わりようなの。

 凛々しく気品ある顔立ち。

 それが初めて彼女を見た感想だった。

 そのときの感情が、年を重ねるごとに恥ずかしくなっていく。

 その美貌が羨ましいと思えない。

 それは、彼女があると信じていた貴族としての自覚。と言う名の傲慢がにじみ出ていただけだ。

 それが今の文華からは。

 面魂?

 それを感じない。

 それでも、生き物としての警戒心は持っていたみたい。


――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


 イヤそうに歯を噛みしめた。

 同時に、腕を振ってカメラをはらった。

 そう思った。


 カメラが倒れる。

 同時に、街が闇に。

 照明などで照らされた部分が、黒い何かで覆いつくされ、断ち切られていく!


――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


「飛んで! ジャンプ! 」

 まず叫んだ。

 まずい!

 なんで、こうなることを予測できなかったんだ?!

 あれと似た光景を、かつて見たことがある。

 いきなり現れた怪獣の、正体不明の光。

 その後おこされた、破壊!


 ウイークエンダーをジャンプさせる。 

 同時に、スカートを起動!

 腰から左右一枚づつ広げた炭素繊維の羽。

 ジャンプで浮き上がるギリギリの高さで、中のプロペラは猛スピードで回転した。

 間に合った!

 機体がググッと浮き上がる!

 その時。


 ドカン ドカン


 連続で爆音が響いた。

 今のは、飛行とは関係なかった?

 そうだ! 後ろの安菜とはーちゃんは!?

 振り返ったそこに、もう閉じたシャッターがあった。


 そうか。

 2人がいることが当たり前に思えるようになっちゃったんだ。

 自分の単純さを反省するべき。

 と思ったけど、やめた!

 それだけ幸せだったってことだよね?

 だったら、覚えておく。

 何が幸せが分からなかったら、幸せを守るときに、とんでもない間違いをしそうな気がするから。


 前に向き直る。

 文華の放った黒いモノ、確実に魔法炎は、消えていた。

 だけど、それが襲った家が、燃える瓦礫になって倒れてる!

 せっかくクオさんとMCOが直したのに!

 そして、さらに照らす黄色い炎は。

 盾になっていた戦車が燃えていた。


――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


 一方、遠隔操作ロボットは、まだ映像を送り続けてた。

 雨でぬれたところが白く反射してる。

 ザラザラした黒い路面に、横たわった光景だった。


――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


 カメラ自身にバッテリーがあるのかな。

 そのウインドウに、ボディカメラと書かれたリンクがある。

 体に着ける、小型カメラのことだね。

 タッチしてみた。

 

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


『前の3列ほどの戦車が切られました!

 ブッ! 』

 偵察していたハンターキラーだ。

 報告を続けてる。

『同時に爆発が起こってます!

 ブッ 』

『おい!

 血がながれてるぞ! 』

 違う声が割り込んできた。

 あのブッは、口に血が入ったから吐き出したのかも。 


――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


 そうだ! 

 ブロッサムとディメイションは?

 ウイークエンダーと同じように宙に浮いていた。

 良かった・・・・・・。


 ほかの被害は?!

 魔法炎の効果は・・・・・・文華から約30メートル。

 腕を振ったおよそ90度の角度で切られていた。

 何て恐ろしい威力だろう。

 だけど、思ったよりも範囲が小さい気もする。

 私は、ポルタがある河川敷から動いていない。

 そこまで、攻撃されると思っていた。


 原因を考える間もなかった。

 たちまち、無数の銃声が聞こえてきた。


――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


『囚えていた、こん棒エンジェルスが動きだしました! 

 ブッ』

 銃声も一緒に飛んでくる。

『封印が甘かったんじゃないのか?! 』

『ごめんなさい!! 』

 キャプチャーをかけたハンターキラーのあやまりも一緒に。

 

 その背後で、こん棒エンジェルスが立ち上がった。

 夜の闇を放つ炎でできた、無数の剣先を張り上げた全身。

 電柱から電柱までの間の距離で、ざっと図ると。

 20メートルはある!


 すぐそばでオーバオックスが。

 今は六輪駆動する装甲車だけど、人型ロボットにもなれる。

 このクラスのロボットのなかでは一番重装甲。

 それが、絶え間ない銃撃をあびせはじめた!

 銃撃を表すオレンジの光の線

 こん棒エンジェルスの背中で弾かれて、空に消えた。

 全身に銃撃を浴びてるはず。

 でも、気にしてなかった。

 猛然と走りだす!

 背後を、対戦車ミサイルが当たった。

 爆発が起こり、痛みのためか倒れてしまう。

 それでも、仲間を捕まえたキャプチャーをつかむ。

 次々に、辺りにばらまいた。

 すべて破壊できなかった。

 でも割れたものからは。

 こん棒エンジェルスが次々に現れる!


――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


 まずい!

 それだけは確実だ。

「しのぶ! みつき!

 飛行したまま前進! 」

『了解! 』

『でも、どこに着陸するの? 』

 確かに、ここで着陸すれば街が壊れるだけ。

 それなら!

「着陸はしない! 

 少しでもこっちの姿を見せて、注意を引き付けるの! 」

 私の下で、いくつもジェットの軌道が走った。

 七星たちも、同じことをしてくれるみたい。


――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


『文華さま! 』

 倒れたカメラが声をとらえた。

 あそこだ。

 20メートルほどのこん棒エンジェルス。

『ああ!

 あなたが来たことを感じ取れました! 』

 文華の所へ駆けつけたんだ。

『さあ!

 我らを率い、お救いください!

 新しい世界を作りましょう! 』


 その返事は・・・・・・なかった。

 銃声、金属の打撃音、私たちの飛行音、そして、怒声。

 それらがカメラに近づいてくる。

 音が重なって、何も分からない轟音になる。

 その直前、聞こえたんだ。

 ようやく聞こえる、女のささやく声が。

『私は、生きたいのか? 』

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