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TSしたオレが女子バスケ選手としてプレイする話(改訂版)  作者: 武藤かんぬき


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59――海に行く準備

いつもブックマークと評価、誤字報告ありがとうございます。


 叔父さんと叔母さんの家には3日間お世話になって、4日目に自宅に帰りがてら教授の診察を受けに行った。


 この間は電話でトラウマのことを相談したので、実際には会っていない。心配だから一度実際に様子を見せてほしいと言われて診察が決まった。明日はまゆと一緒に海に行くので診察の予約は今日にしたんだけど、道中の暑さと夏休みの人の多さにちょっとウンザリする。パーソナルスペースを確保するために日傘を差しているんだけど、おかげでほんのちょっとだけ暑さがマシだと思えるなんて皮肉なものだと思った。

普段ならたくさん電車に乗っているビジネスマンの姿が見えず、その代わりにデート中のカップルとかグループで遊びに行くオレと同じぐらいの年頃の人たちとか家族連れが増えてザワザワと騒がしい。


 なんとか教授のラボにたどり着いていつもの検査をひと通り受けた後、体には特に異常はないと太鼓判を押してもらえた。ただ筋肉量とか身体的な運動負荷への耐性を計測すると、とてもじゃないがインターハイ優勝校のバスケ部員とは相変わらず思えないと言われてしまった。つまり非力で体力がない、一般的な女子高生と比べるとほんの少しだけ運動ができるという評価とのこと。一体誰がオレを女子にしたのかは知らないけど、なんでこんなややこしい体質にしたのかなぁ。努力したらその分鍛えられる体の方が、オレとしてはわかりやすくていいんだけど。


 海に行く話はこの間の電話相談の時にしていたからか、教授からおみやげに効果はすごいのに肌にやさしい日焼け止めをもらった。練習で外を走り込むこともあるけど、オレの肌は何故か焼けないし赤く腫れたりもしないんだよね。だから『日焼け止めなんて必要なのかな?』と疑問に思ったのが表情に出たのか、教授の助手のお姉さんに顔がくっつくぐらいに詰め寄られてしまった。


 お姉さん曰く今は若いから何も表に出てこないけど、年齢を重ねたらダメージがシミやシワとして目に見える形で現れるんだとか。前のオレなら『歳を取ったなら肌が劣化しても仕方がないのでは』ぐらいの無神経な言葉を口に出していたかもしれない。でも女子になってからいろいろと女子の感情の機微は学んだからね。それにオレだって、好きな人にはいつでもベストな自分を見てもらいたいという気持ちはわかる。だから素直に謝って、お姉さんのご高説に耳を傾けた。


 帰りに日焼け止めとか明日必要になりそうなものを買う予定だったので、ひとつだけでもお小遣いが浮くならありがたいよね。一応叔母さんちを出る前に高校生がもらうにしては高額なお小遣いをもらったけど、あれはさすがに無駄遣いするわけにはいかない。叔父さんと叔母さんの思いがこもっているお金だからね、いざという時に使わせてもらおう。


 家に帰ると姉貴が待ち構えていて、『明日海に行くんだっけ?』と唐突に尋ねられたのでコクリと頷いた。するとムダ毛がないかチェックしてくれるというので、一緒にシャワーを浴びることになった。もちろん素直に従ったわけではなくて最初は抵抗したんだけど、『水着からムダ毛がはみ出していてもいいの?』と脅されてしまってはもうどうしようもない。ただ静かに頭を下げて、『よろしくお願いします』としか言えなかった。


 ただオレって体毛薄いんだよね、というかほとんど生えない感じ。それなのに髪は伸びるんだから不思議なものだ。結局T字カミソリで背中とか股間とかも含めた全身を軽く撫でるように剃ってもらったのだが、姉貴に『腹が立つぐらい何も生えてないわね』と舌打ち混じりに詰られるだけで終わった。そんなこと言われても、女子になって体質が変わったんだから仕方がないとしか言えない。男子だった時には普通にすね毛も生えていたからね。


 うぶ毛すら剃れなかったけど、カミソリを使ったので念のために全身に保湿クリームを塗ってもらう。なんかベタついたらイヤだなと思っていたのだけど、姉貴がオススメするだけあってすぐに肌に馴染んでいつもと変わらない感覚になった。そもそも肉体年齢的にはまだ中学2~3年生ぐらいらしいから、あんまり毛が生えなくても不思議じゃない気がする。


 部屋で荷物の整理をして、忘れ物がないようにカバンに荷物を詰め直した。遠征慣れしてるから荷造りは得意なんだけど、女子になってからスキンケア用品とか細々とした荷物が増えて持っていくカバンのサイズがアップしている。下着を忘れたら大変なことになるので、換えのものをしっかりと入れた。水着は派手じゃないものを叔母さんと一緒に選んだんだよね。下着はもう着慣れて何も意識しないけど、さすがに水着となるとビキニとか女性っぽさが全開なものはさすがにキツい。まゆにだけ見せるのならまだ平気かもしれないけど、大勢の目がある海水浴場では無理だ。


 叔母さんから預かった手紙を母親に渡したり、叔父さんや叔母さんの様子を夕ごはんの時に話した。お小遣いをもらったことも隠さずに白状したけど、特にお咎めはなかったね。まぁ、教授の研究への協力報酬もあるから、お金には困ってはいないけども。


 明日は朝8時に駅で待ち合わせなので、早めにベッドに入る。でも普段はまだ起きている時間だから、全然眠くならないのでまゆとメッセージアプリで楽しく会話をしていたらいつの間にか眠りについていた。


 そして翌日、今日も元気よくギラギラと輝く太陽を背中に駅へと歩く。暑いけど海水浴の帰りは体が冷えて寒いかもしれないから、白のサマーパーカーを羽織っている。その下はミントグリーンのTシャツと黒のスカートを合わせてみた。一応恋人とふたりで出かけるわけだから、適当な格好はできないしね。ちゃんと昨日もらった日焼け止めは塗ったし、海でまた塗り足すためにチューブごと持ってきた。


 7時50分ぐらいに駅につくと、薄手のワンピース姿のまゆがこちらに気づいて大きく手を振っていた。タタっと駆け足で近寄ってまゆの前で止まると、急に両手を広げてぎゅっとオレを抱きしめてきた。


「まゆ先輩、汗がついちゃいますよ」


「いいの、数日ぶりのひなたちゃんなんだから堪能しなくちゃ」


 なんかまゆってこんなスキンシップ過多なヤツだったかなぁと思いつつ、落ち着かせるために背中に手を回してポンポンと軽くあやすように叩く。数十秒そのままでいたら、満足したのかまゆがそっとオレの体を解放してくれた。かと思ったら、流れるような動作でオレの右手を掴んで自分の左手と指を絡ませて手をつなぐ。


「水着、どんなの持ってきたの? もしかして、その服の下に着てきたとか?」


「もう、そんな小学生みたいなことしませんよ。まゆ先輩はどんなのなんですか?」


「ふふ、海に着いてからのお楽しみ。私もひなたちゃんの水着、楽しみだなぁ」


 妙にテンションが高いまゆの姿を見て引くよりもかわいいなぁと思ってしまうオレは、もしかしたら恋愛の熱でちょっとおバカになっているのかもしれない。でもそれでもいいか、少なくともひとりは同じテンションで一緒に楽しんでくれる相手がいるのだから。多少バカップルぽくなったとしても恥ずかしくはないだろう、おそらく、きっと。


 繋いだ手を軽く揺らしながら楽しそうに歩くまゆに引っ張られるように、オレたちは改札を抜けてホームへと向かう。さて、楽しい海水浴に出発だ。


7/2 第58話を加筆修正しました。

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― 新着の感想 ―
夏の海に美少女二人組って・・・ナンパ野郎が寄ってこない筈がない。トラウマが心配だなぁ。
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