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TSしたオレが女子バスケ選手としてプレイする話(改訂版)  作者: 武藤かんぬき


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41――姉貴とのひととき


 部活が終わって家に帰ってきて、眠いのを我慢しながらまずは風呂に入る。さすがに女になってから1年以上経っているわけで、自分の体を見ても違和感を覚えることが減ってきた。


 湯船でこっくりこっくりと船を漕いでは沈みそうになって慌てて起きる、を繰り返しているうちにちょっとだけ目が覚めた。風邪を引く前に湯船から上がって、脱衣所でパンツと男だった頃のTシャツを身につける。女子としてはあんまり褒められたことではないというのはわかっているが、家族以外は誰も見ないし。自分の家なんだから、リラックスした格好をしたいという欲求に素直に従っている。ワンピース状態だから寝てても腹とか出ないし、便利というか楽なんだよな。


 髪を乾かしてリビングに戻ると、母が夕食を用意してくれていたのでゆっくりと食べ始める。長距離シュート練習のせいか、両腕がズッシリと重たく感じる。気を抜くと箸を落としそうになりそうなぐらいの気怠さを感じながらも、なんとか全部食べることができた。対面に座る姉貴がその様子を見て怪訝そうな表情を浮かべていたから、もしかしたらオレの微妙な不調がわかりやすく表に出ていたのかもしれない。


「ひなた、Tシャツを脱いでこの上にうつ伏せに寝転びなさい」


 先に食べ終わっていた姉貴が、オレが食べ終わったのを見計らってそう声を掛けてきた。寝転べと指示されたリビングの床には、大きなバスタオルが敷かれている。というか、Tシャツ脱いだらパンツ一丁になってしまうんだが……まぁいいか、母と姉貴しかいないしな。姉貴が何をするのかわからないけど、途中で父が帰ってきて裸を見られたとしても特に嫌悪感もないし。


 膝の下まで隠れていたTシャツを脱いで、男らしくパンイチになってタオルケットの上に寝転んだ。顔の位置にあらかじめクッションを用意してくれているあたり、弟だった頃にはあまりなかった姉貴の優しさを感じる。普段は傍若無人な姉貴だけど女になってからは本当に世話になりっぱなしだから、なんかお返しをしないといけないなと思っているんだがなかなかチャンスがない。


「ほら。腕出して、腕」


 言われるがまま姉貴に向かって左手を差し出すと、何やらヌメッとした感触があった。びっくりして顔を向けると何やらベットリした液体まみれの手で、姉貴がオレの二の腕の筋肉を絶妙の力加減で揉みほぐしていく。


「アンタ、今日の部活で腕を酷使したでしょ。多分明日キツめの筋肉痛になるよ、こうやって揉んでおくと少しはマシになると思うから」


「……よく見てるね」


「ひなたがわかりやすいのよ。ほら、気持ちいいでしょ。こんな風に人肌ぐらいに温めて塗ると、肌の調子もよくなるのよ」


 『まぁ、アンタは肌がキレイだからあんまり変わらないだろうけど』と姉貴が小さく呟いた。姉貴が言った通りにだんだんと気持ちよくなってきて、なんか反応するのも億劫になってきた。


「オレが女になってから、姉貴はよく世話焼いてくれるよね。前はこんなことしてくれなかったのに」


 考えるより先に勝手に口からこぼれ出た言葉にオレ自身びっくりしていると、姉貴がオレの顔を呆れたように見た。


「バカね、デカくて筋骨隆々な弟の体を触って何が楽しいのよ。こういうのは、女の子特有の柔らかい体だから触りたくなるの。たまにならいいけど、硬くて筋張った腕触っても癒やされないでしょ」


「なるほど……」


 姉貴の言葉に、オレは思わず納得してしまった。確かにイチの体を触るよりは、まゆの方を触りたくなるよな。今日後ろから抱きしめられた時に感じた気持ちは、オレが元男だからじゃなくて人間の本能的なものだったのかもしれないな。だって生粋の女である姉貴だって、自分と同じ女子の柔らかさの方が癒やされるって言ってるんだから。


「それに私ね、こうやって女の子の世話をあれこれ焼くのが好きみたい」


「ふぅん、そうなんだ。じゃあ将来はエステティシャンとか、そういう仕事に就くの?」


「うーん、一生の仕事にするかどうかはわかんないけどね。今はひなたで十分そういう欲求を満たせてるし」


 確かにオレぐらいの年齢の女子がやるべきボディケアの方法とか教えてもらったり、たまに一緒に風呂に入って頭皮のケアやらマッサージやらしてもらっているけど。それが姉貴の欲求を満たしていたってことかね、まぁ姉貴の負担になってないならいいや。


「なんかこのオイル、いい匂いするね」


「リラックス効果がある成分も入ってるからね、眠かったら寝ててもいいわよ」


 左側の腕が終わったら反対側へ。それが終わったら背中から腰あたりを、ちょうどいい力加減でマッサージしてくれた。その頃にはぼんやりがウトウトとうたた寝になりつつ、姉貴に話しかけられても生返事しか返せてなかったと思う。


 それからどのくらい経ったのか『ピンポーン』と呼び鈴が鳴ったような気がして、眠っていた意識が現実へと浮上してくる。どうやら母が対応しに玄関に向かったみたいだけど、父はいつもならまだ帰ってこない時間だしな。それに父なら呼び鈴なんか鳴らさないだろうし、宅配便か何かかな?


 姉貴はマッサージが終わったのかお湯を含ませたタオルを適温まで冷ましてから、オレの体にべっとりとついているオイルを拭き取っていた。さっき風呂に入ったけど、もう1回入り直した方がいいのだろうか。でもそうなると多分、姉貴が塗り込んでくれたオイルの成分とか全部流れてしまうかもしれない。悩みどころだな、せっかくの好意を無駄にするみたいで後ろめたいし。


 ドタドタとこちらに近づいてくる足音に、ふと我に返る。母の足音だともっと軽いし、聞き慣れない足音だから父のものでもないだろう。だとしたらイチだろうか、いくら幼なじみの家とはいえもっと静かに歩けと一言文句を言ってやらないと。


 心の中でそう思っていると、オレの背中を拭いていた姉貴が急にタオルをテーブルの上に置いた。そして傍らに予備として置いていた大きなバスタオルを、バサっと広げるとオレの上に掛けた。ああ、確かにいくらオレの裸でも一応女の子のものだもんな。イチに見せるのもまずいか、と隠すようにバスタオルを掛けた姉貴の行動に頷く。


 ガチャリとリビングのドアが開いて、隙間から顔を見せたのは間違いなくイチだった。しかし、その顔に姉貴が突然思いっきり振りかぶって投げつけたティッシュボックスが見事に命中する。うちのティッシュカバー、母の手作りだから普通のより重たいんだよな。それが思いっきり鼻にぶつかったから、あれは痛いだろう。


 鼻を押さえてドアに挟まるようにしゃがみこんだイチの前に仁王立ちになって、姉貴はまるで見下ろすような体勢で腰に両手を当てた。


「イチ、アンタさぁ。うちが女所帯だって知ってんでしょ? だったらリビング入ってくる時に、ノックぐらいしてもいいんじゃないの? 気のきかない男ね、まったく」


「えぇ……? そんな気を遣う間柄じゃないでしょ、俺達」


 イチがそう言いながら部屋の中を見回すと、バスタオルで体を隠すオレと視線がぶつかる。こないだは無防備だってイチ本人に怒られたし、姉貴がティッシュ箱投げつけたあたりで体を起こして座り込んだ時にちゃんと見えないように隠した。まるでプールの時に着替える小学生かてるてる坊主みたいな感じで不格好だけど、仕方ないよな。いきなり入ってきたイチが悪い。


「ひなたは首元をちゃんと隠しなさい、緩んでるわよ」


 姉貴がこっちを見て鋭くそう指摘してきたので、もぞもぞと直した。膝とかもバスタオルの外に出て露出してるけど、それはいいのだろうか。別にイチも気にしてないだろうと思って視線を向けると、何故かイチの顔は少し離れたところに座っているオレでもわかるくらい赤くなっていた。


 前にベッドに押し倒した時は涼しい顔してたくせに、なんかそんな反応されるとこっちもなんか緊張してしまう。


「あ、えーと、その。こないだ話していた評判がいいってプロテイン、ちょうど売ってたから持ってきたんだよ。ここ、置いとくな。それじゃ、ま、またな」


 イチは慌てているのか若干噛みながら早口でそう言って、ビニール袋をリビングの床に置いた途端すぐにリビングのドアを閉めた。そのまま玄関の方に足音が遠ざかっていって、ガチャンと玄関ドアが閉まる音がした。


 突然のイチの行動にオレが首をひねっていると、姉貴が『もしかしたらもしかするかもだから、アイツ出入り禁止にしておいた方が……』とぶつぶつと呟いていた。姉貴の言っている意味がわからずに首をかしげていると、今度はオレに矛先が向いて無防備過ぎると叱られる。だってイチなのに、と反論したらさらに説教が伸びてしんどい時間を過ごす羽目になってしまった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 少なくともお姉さんがいる時点で TS関係なしに無断であがって勝手に部屋を開けるのは駄目なんじゃないか? 出禁で問題ない気がする。 少なくとも勝手にあがるの禁止で。
[一言] お姉さんのマッサージを受けられるひなたちゃんに羨ましいと言うべきか、ひなたちゃんをマッサージしまくるお姉さんの羨ましいと言うべきか・・・
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