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夕食後

小嶋は晩飯を食べた後もウチに居た。

どうにもさっきのゲームにハマった様である。


「駿君駿君。さっき時間が無かったからできなかったし、パーティーモードやっていい!?つかやろう!駿君も!」


食後にそんな事を言ったのに駿介は驚いたし、良いともやるとも言わなかったのだがコントローラーを投げ渡され、やる他無くなった。

仕方ないと諦めて参加したものの、最長の設定にしたせいで長く、一時間ほど経つがまだ終わらない。


「お前、いつまでウチに居るつもりだ?

もう良い時間だぞ。つか帰れ。勉強の邪魔だ」


駿介の地頭はそこそこ良い程度であるのは中学時代でよく分かっているのでだからこそ予習で授業内での定着を少しでも楽にしたいのだ。無論授業内だけじゃ無く復習もするのだが、やはりこの予習の有無は大きい。


「え?駿君勉強するの?結構出来そうな感じなのに」

「見た目でできるか出来ないかが決まるとすれば間違いなくお前は勉強出来ないタイプだろ。お前は間違いなく運動方面だ」

「む、それ私の事馬鹿っぽいって言ってるよね!失礼しちゃうっ」

「事実だろ。実際お前の見た目は活発な感じしかしないぞ。活発で可憐的な」

「うえっ…あのー…そのー…それはずるい」

「なんだよ。人のことズル呼ばわりって」

「ななっ、なんでもない。うん、なんでもない」

 

にしても褒められ慣れてないのか?そんな風に駿介は彼女が恥ずかしがったり、照れたりした反応の解釈をしつつ、画面に視線を戻した。

だからだろう。彼女の真っ赤に染まった耳やほのかに赤みを帯びた頬に気が付かなかったのは。彼女のプレイングはその後数ラウンド経つまでどこか上の空だった。


パーティーモードを終えたのはそれから30分経った頃だった。

勝者はNPCで駿介と小嶋は僅差で駿介の方が勝っていた。


「…流石にそろそろ帰れよ?もう9時だしな。

料理を教えるってのはおいおいやるから」

「え、やだ!もっかいやる!」

「ガキじゃないんだから、つかゲームくらい貸してやるから帰れ。俺はそろそろ予習に取り組みたい」

「むぅ…あ、それじゃあ私が教えてあげるよ!勉強は出来るからね。

頭の良い人が居た方がやりやすいでしょ」


何を馬鹿な事を、駿介はそう思ったのと同時に、小嶋が勉強出来ている事を思い出した。

新入生代表ということは少なくとも現時点では彼女がこの学年の一番である、と。

確かに頭の良い奴と一緒にやれば捗りそうだが目の前の小嶋の見た感じを考えるとどうにも、と言った感じである。


「…そうか。そういやお前出来るんだっけか。普段のテンションと生活能力の無さのせいで忘れてたわ。今日始めて知った事だが」

「む、ひどく無い駿君!?いや事実だけどさー。そんな言う事無いじゃん。

と言うかそうだ!料理教えてもらうお礼に勉強教えるよ!それくらいのお返しはさせてよね!」

「いや待て。俺は教えてくれと一言も」

「決定!じゃあ勉強道具持ってくるね!」


彼女は立ち上がれば止める間も無く玄関から出ていってしまった。


「アイツ…話を聞かねえ…」

思わずと言った様子で額を抑えため息をつく駿介は諦めて二人分の茶を用意して、机に並べ、勉強道具を持って一人先に始めていた。


お茶も冷め、駿介もある程度勉強に集中し始めた頃にチャイムが鳴った。


「駿くーん!来たよ!」

扉を開ける前、そこに向かう途中から聞こえてくる言葉に思わずため息をつくしか無い。

扉を開ければ小嶋が居た。

ただ髪の毛の毛先がほんのり湿り気を帯びているように見えたり、先程までそこまで強く感じていなかった良い香りまで漂ってきた。


「…お前、風呂にでも入ってきたのか?」

「…?そだけど、それがどっかしたの?」

「…や、なんでもない」


熱がまだ抜けきっていない彼女はどこか色っぽく、よく見れば服も先程と違って薄い。

あったかい気候なので当然なのだろうが、とても目のやり場に困るのでやめて欲しいと駿介は思う。


「…まあなんだ、取り敢えず上がれ。茶は冷めてるが良いな?」

「え、駿君乗り気じゃなかったのにお茶とか淹れてくれたの?やっさしー!

大丈夫だよ。私はあんまり気にしないし」

「そうか、ならとっとと座れ。カップだけが置いてある席があるから。俺は適当につまめる菓子を持ってから行く」

「はーい!」


彼女がリビングに行くのを見届けて戸棚から菓子を取り出し、小皿に出してから盆に乗せて運ぶ。

すると丁度彼女は席に着いたところなのか姿勢を正してるところだった。


「ほれ、菓子だ」

「ありがとー。駿君」


盆をテーブルの上に置いてから席に着けば各自自分で進めて行くが、わかりずらい所があれば小嶋に聞いて行く。

「なあ、此処なんだがどう変形すればいい」

「あ、ここ?ここはねー」


そんな風にして時間は過ぎて、日付を跨ぐ頃には二人とも初めての環境に身を置いたからか、疲労が溜まりテーブルに伏せて健やかな寝息を立てていた。

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