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放課後

歓迎会は学校の案内に部活や委員会の紹介、あとは二年と三年の一部有志の出し物で終わった。


何かあった、という事も無く普通だった。

駿介が興味を持つ様な部活も委員会も無く、滞り無く終わった。


「それじゃ、今日はこれで解散だ。

来週からは校内の案内をしたり、所属する委員会や部活に係りを決めたりとまあ、事務的な事が多くなるから、そこら辺しっかり考えておく様に。では解散」


「部活とか委員会か…興味のそそられる物は無かったし、無所属でいいか」

先生の話を思い出しつつ、独り言を呟いていた駿介は鞄を持って帰路に着こうとしたところで、他の生徒達のざわめきに紛れて、ドタバタと駆けてくる足音が聞こえてくることに気付いた。

振り返って様子を見てみれば走る少女、小嶋が見え、その足は割と早かったのですぐにこちらに着くだろうと思えた。


「あ、居たーっ!駿君、一緒に帰ろ!」

「…お断りだ。俺は一人で帰るのが好きなんだよ」

「えー!いいじゃんほら。どうせ道同じなんだからさぁ。それなら一緒に帰った方がいいでしょ?と言うか断られても同じ道だから結局ね。てことで決定!」


反論を挟む間も無く決められてしまった駿介はもはや諦めのため息をつくほか無く、力なく頷いた。

二人で揃って校門を出た辺りで小嶋に尋ねた。

「なあ、なんで俺なんだ。適当に友達でも作れば良かっただろ。お前なら簡単に作れそうだが」

「…む、簡単だなんて、そんなすぐに作れる物じゃ無いよ。友達なんてさ。そんなすぐに作れた友達なんて、所詮上辺だけだもん」

「…そうか」


そう言えば小嶋は友達関係について何かトラブルを抱えていたなと、駿介は今更ながらに思い出し、己の失態を呪った。

いつもの元気さは隠れて姿が見えず、淡々とした答えが帰ってくるだけである。


「…まあなんだ、そう言うのはゆっくり作っていくべきだったな。すまん」

「んーん、これに関しては私が悪いだけだからさ。弱い私がさ、行けないの」

「いやそんなことは…」


駿介はそう言いかけた所で止めた。

この手の手合いに変に安い慰めを掛けたところで無駄となるどころかマイナスになりかねないと思ったからだ。


「…私には言うけどそう言う駿君の方は友達…作らないの?」

「まあ、少なくともそんなに大人数でワイワイしてて賑やかなのは好きじゃないからな。

ある程度したら作るが今すぐには作る気はない」

「そっか。じゃあ暫く放課後は暇な感じ?」

「…ああ、おう。暇だがそれがどうした」


彼女を見るとにへらと笑ってその次の言葉が飛んで来た。


「いやさ、料理教えて欲しいなーって。

おにぎり見た感じ?食べた感じは上手っぽかったからさ」

「…料理?いや、俺も人に教えられるほど上手くはないぞ。母さんに一ヶ月教わったくらいだしな」

「それでも良いからさー。多分私の微妙な料理よりマシでしょ?絶対」

「いやそれは食ったこと無いから知らねえよ」


まあまあ、取り敢えず教えてよ、そんな言葉と共に結局は押し切られ、あまつさえ夜は彼女の料理にありつくことになった。

流石に昼飯のお礼となると頷くほか無く、それ以外にも食べれば微妙なのが分かると半ば強引である。


「女の子の、それも同級生で可愛い方の子の、となれば良い経験と言うか美味しい思いだと思うが、いかんせん理由がなあ」


そんな愚痴にも似たことを1人でごねていれば携帯から軽快なメロディが響いた。

慌てて取ると母親からの電話であることが分かり、出ることにした。


「もしもし、どうした母さん」

「いや、確か高校の始まりは今日でしょ?

どうだったのかなーって、気になっちょってね。で、どうだったの?」

「どうって…別にどうも無いよ。何も無いし。あ、でも部活とか委員会には多分入らない。興味がそそられる物は無かったし」

「そう…まあ、今度は頑張って頂戴ね。

…あ、そうそう」


母親との電話の最中になったチャイム、そして次に聞こえて来たのは小嶋の声だった。

少しくらい待てないのかと思ったが、小嶋の性格を考えると待っていられないのだろう。


「駿くーん!そう言えば夜何が食べたいと思って聞きに来たんだけどー!」


「ん?ねぇなに?今の、駿介。女の子の声がして夜がどうこうって…まさかもう彼女が!?」

「違うから!ただのお隣さんだし、そもそも…ああっ、もう良いや。また明日掛け直すから勘違いしないでくれよ」


まだ何か言いたそうな母親との通話は切って玄関の扉を開けた。


「あ、漸く出て来た。で、何が食べたい?」

「たく小嶋…お前って奴は…」

「え?なに?何か私悪いことした?ねぇ?

ならごめんなさいっ」


素直に謝られては駿介怒る気も失せてしまいため息にと変わる。

駿介が甘いのか、それとも小嶋の小柄さゆえの子供っぽさのせいか。

それは知らないが毒気が抜かれたのは間違い無い。


「もういい。どうにもならんしな。

で、用件は何が食いたいか、だったか。

なんでも良い、は困るだろうしな…ちょうど旬だし、鰆とかどうだ?」

「お、良いね!鰆、魚料理だね。それじゃあ早速買いに行って来る!」


鰆と聞いた彼女は颯爽と走り始めエレベーターの隣に設置された階段を使って降りて行った。


「…速いな。帰りの時も思ったが、小嶋の奴の足って結構速いのか…?それに新入生代表の担当もしたってことを考えると頭の方も…いや、考えるのは辞めとくか。どうせ関わるのも今日これっきり…だとは言えないか」


先のことを考えるとどうにも、少なくとも席替えはまではしつこく構って来る小嶋の姿が想像出来る。

退屈はしなさそうだが平穏も来ることが無さそうで、思わず駿介はため息をついた。

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