ゲームセンター
会計を終えて荷物の類を筆記用具と教科書数冊程度しか入っていない鞄の中に入れていると、少し遅れて清花も店の中から出てきた。
その手にはレジ袋が握られていたので何か買ったのだろう。
袋のサイズ的に買ったものは多くても2、3個くらい。それくらいなら買ってやると言った気がするんだがなとまた思っていた。
「やっほー駿君。お待たせー。ごめんね、ちょっと列が長くてさ」
「いや、別にそんなに待っては無いから安心しろ。つか、何買ったんだお前」
「んー?秘密ー。」
にぱーっと、そんな擬音が付きそうな笑みではぐらかせれたのでもう一度問い掛けてみようと思ったがやめた。
有無を言わさぬ圧力がその笑みから感じられた上に、そこまで干渉するのも悪いと思ってしまったからである。
「…ま、良いか。んで、次はどこ行くんだ?」
「どこ行こっか。たくさんあるけどそれだから迷うよねー。まだ時間もあるし、ゲームセンターにでも行く?」
「分かった。じゃゲーセン行くか」
買い物していた雑貨店からゲームセンターはそれほど遠く無く、近くの階段を上った先に直ぐである。
駿介としてはゲームセンターの煩さに少し眉を顰めたが、逆に清花はテンションが上がっているのか楽しそうである。
別に駿介がゲームセンターが初めてという訳では無いがいつまで経っても慣れ?ことがなかった。
「じゃあ駿君。何する?」
「なんでもいいぞ。色々あるし、俺じゃ迷うからな。お前が決めてくれ。幸い時間にも余裕はあるしな」
「そっかー」
駿介の手を取った清花が向かったのは2人プレイの出来るシューティングゲームだった。
ゾンビとかの出るタイプの。
それも割とリアルっぽい感じの奴が。
「…お前ってこう言うの大丈夫だったんだな。なんか意外だわ」
「んー?いや苦手だよ?でもゲームなら倒せるじゃん。映画とかで見るのは倒せないからきらーい」
清花はどうやら随分と変わった感覚の持ち主らしい。
そんな判断の仕方をする人間を探しても他には見つからないだろうなあと思えるくらいに。
「…じゃあやるか。右と左、どっちが良い」
「右で。深い意味は無いよ!」
「さようで」
百円硬貨を入れてゲームが始まった。
説明にステージセレクトにと操作をこなしていくと、漸く始まる。
この手のゲームをやるたびに思うのだが反動の再現なのか震える。
駿介はどうにも慣れないなと思いながら少々外しつつ自分の側のゾンビを撃っていくが隣を見るとすごかった。
「きゃー!あー!ひっ!?…あ」
「お前五月蠅くね!?」
悲鳴なのか歓声なのかは知らないが叫びながらプレイしている清花である。
声がいくら澄んでいて綺麗な声であるとは言え、間近で叫ばれるのは耳が痛く、ゲームの音も合わさって思わず眉を顰めてしまう。
そんな光景であるにも関わらずゲーム画面から目を離すこと無く、そしてゲーム画面を覗けばエイムは割と完璧なのがまた驚くべき点でもあるのだろう。
ちなみに、最後の明らかな悲鳴は床を突き破ってデカいのが出てきたせいであり、それで手が止まりその間に殴られてゲームオーバーになっていた。
その後駿介もあまりの数に処理が追いつかず、そのままやられてしまい、筐体を出た。
「ねえ駿君。もっかいやんない?あんな初見殺し納得行かない!」
「諦めろ。アレはそう言うもんだ。つかお前、なんであんな上手いんだ?」
「え?どのくらい動かせばどのくらい狙いがズレるのかを覚えれば出来ると思うけど。そんなことよりもう一回だよ!もう一回!」
興奮した様子で詰め寄ってくる清花を宥めつつ清花の言っていることを理解しようとしたがダメだった。
少なくとも経験回数の少ない駿介には無理だろうと片付けることにした。
と言うのも顔を本当に近づけられており、吐息が掛かりそうな程に近い距離であるせいで、中々思考に集中出来ない。
この小嶋清花と言う女の子、顔は良い。
内面を見ると割とガッカリかも知れないが。
「近い、近いから一旦離れろ」
「あ、ごめん。…でももっかいやろ?」
てへ、とでも効果音のつきそうな感じで舌を出してくる清花には軽く睨んで無言の圧力を掛けておく。
だがどうしてももう一回やりたいと言う気持ちは伝わったので、駿介は筐体の中に再び入った。
「席はさっきと同じで良いな?」
「やた!ありがと駿君!」
入った瞬間はぼけっとしていた彼女だったが、駿介が声を掛ければそんな風に声を弾ませながら、筐体の中に入ってきた。




