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試験終了


「…よし、今日は俺が一人で何か作ってやろう。

打ち上げ程度、とは言わんがそれっぽくなる物を作ってやる。…ま、いつも通りでもあるけどな」


帰り道の最中、駿介はそう清花に声を掛けた。

今日は平日、いつもは駿介がメインとなって作る日だが今日はそれらとは一味違う物を作る気らしく、そんなことを言う駿介に対して清花は驚いた顔で見つめていた。


「え…?それじゃあ私の手伝い要らないの…?」

「おう。要らん。ゆっくりしててくれ。勉強で疲れてるだろ」

「…でも、それ言うなら駿君もじゃ無い?私と同じくらい勉強してたし。と言うか殆ど一緒にしてたもん」

「…ま、そうだな。だけど、こう言う時こそが男の見せ所だろ。特に、体力あるってな」

「駄目だよ駿君。頑張った分はしっかり休まないと!という事で今日の料理はお休み!出前でもとろーね!」

「ちょ、勝手に決め」「ピザで良い?それともお寿司?いや天丼とかも良いしなぁ。

駿君はどれが良い?」

「…話を聞けよ」


いくら止めようとしても一人で走り出した清花は止められず、次々と出前を取れそうな食品の名前を挙げている。

カロリーなど考えてもいない様で割となんでも挙げている。

微妙な目で見つめ続けるとこちらに気付いたのかその声が少しずつ小さくなって行き、最後には消えて若干顔を赤くして恥じらいを見せていた。


「駿くーん…?ちょっとそんな見つめられる恥ずかしい…かなぁ、って」

「アホか。好きなの頼んでいいからとっとと帰るぞ。時間が遅くなりすぎれば頼むにも頼めんしな。…ま、まだ13時だ。余裕はあるけどな。それとも、どっか寄り道してくか?」


ぺし、と軽く頭を小突いてやれば先程の顔を赤くした顔から、むっとした表情にと変わったがすぐに霧散した。


「!寄り道?そっかぁ。なら行きたいかな。

どこ行こうか?

ショッピングモールとか映画館とか、色々あるけど」

「別にどこでもいいぞ。幸い金はあまり使わないから貯まってるしな。まあ、食費で大半が消えてたりするがそれでも残ってはいる」

「じゃショッピングモール行こう!服とか買いたいしね。あ、駿君のも買おうね」

「へいへい」


そう言った駿介は清花に手を取られ、走り出していた。

活発過ぎると言うか、元気過ぎるのも困り物である。

テンションについて行くのも難しければ、気疲れするような気もする。

だが一緒に居て楽しくはあるし、心地良かったりするのだから、突き放すつもりにもなれない。

うまくいかない物である。


「ほら駿君、はーやーく!」

「まっ、待て!俺はお前みたいに速くはっ…うおっ」


清花の速さについて行けなく、転びかけたがこればかりは勘弁してほしい。

そもそもの地力が清花と駿介では違い過ぎるのだから。

一応、どちらも部活に入っている、ということは無くどちらも帰宅部なのだが普段から元気に動いている清花とあまり積極的に動かない駿介では全然違うのだ。


「まったく…だらしないなぁ。女の子よりひ弱ってのはちょっとなぁ。あ、でもそこも駿君の魅力だよね!」

「そんな情け無い事を本人に聞かないでくれ。と言うかひ弱ってお前なぁ、荷解きの時に力仕事を担当したの誰だっか忘れてないよな?」

「え?…あー…まぁ、うん。

…あ。ほら、止まってないで速く行こ駿君。今度は歩くから。ほら!」

「はいはい。今度はほんと、歩いてくれよ」


これ以上の追求は本人の機嫌を損ねるだろうし、手を握られている以上引っ張られればなんと言っても連れて行かれるだろうし、そんな状況で喋れば舌を噛みかねない。

だが配慮はしてくれているのか、その速さは歩く程度の速さであり、ついて行きやすかった。


歩いて少し経ったころに、彼女が口を開いた。


「そう言えば駿君ってなんで私のところに来たの?ほら、出会った初日」

「ん?その時言わなかったか?空室と聞いてたはずの部屋から何か物音がしたんだ。

そりゃ気になるだろ?」

「あー、そう言えばそんな事言ってたかも。

忘れてたなぁ。その後からが色々楽しくてさ」


懐かしいなぁ、と言った呟きを聞きつつ駿介もまた同じ事を思った。

と、その次の瞬間にはまだそんなに経っていなかったな、と思い直しているが。


「確かに、色々濃かったな。どうにもまだそんな経ってないはずなんだが、もう懐かしく思えるな。…ま、なんだ。お前と過ごすのもあんまり悪くないぞ」

「え、駿君がデレた…?珍しいなぁ。

と言うか顔赤くしてるのも可愛いね駿君」


若干照れている駿介の顔はほのかに赤くなっており、そこを指摘され駿介の顔はさらに赤く染まった。

そこから清花は止まる事無く、手を解いてからやや前に出てから振り向き、駿介の頬をにやにやしながら突いて来た。


あまりの恥ずかしさに駿介が顔を逸らしたのは当然だろう。

この位置関係では清花の小柄さから必然的に若干上目遣いとなっており、なんとも、見ていられない。


改めて見るが、清花の見目はどうにも可愛いらしい。綺麗と言うよりも可愛らしさが目立つ容姿であり、それも相まって活発さが目立つ。

普段動く様もちょこちょこと言った小動物然としている様であり、好奇心旺盛であったり、駿介に対して懐く様はフェネックなど、そこら辺によく似ている。


「にしても…ってうわぁ!」

「っ!ちょ、おい」


調子に乗っていた清花が後ろ向きで歩いていたので、段差に気づくこと無く躓いた。

咄嗟に駿介が手を出すが掴み取れたのはこちらに伸ばしていた手のみ。

力任せに引き寄せ、引き寄せた体の腰を空いている手で抑えるが清花の反応がどうにも無い。

鈍いどころで無く、無い。


と、此処で駿介は気づいた。

引き寄せて、腰を抑える、そんな体勢となれば、二人の距離は近く、女子としては不快だろうと。


「あ、すまん清花。今離れる」


一声かけてから一歩引いてやった駿介は気まずそうに横目を逸らしつつ頭を掻いた。

清花の顔は俯いてその表情は駿介からは伺えない。


「あ、いやその…あー!もう行こ!駿君!」

「え、ちょ、待てっておまっ」


清花が顔を俯かせたまま、駿介の手を取って走り出した。

静止を呼びかける駿介の声を無視して。

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