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体育祭当日


どん、どんとピストルの音が校庭によく響く。

今日は体育祭の当日であり、現在は徒競走である。


既に男子の部は終わり、女子の部だ。

現在は清花が走っているが普段のその足の速さを遺憾なく発揮しており堂々の一位だ。


ゴールテープを切ってゴールした時にはガッツポーズまで取って跳びはねていた。


思わずその様子を見て駿介は微笑ましそうに見つめている。


「お、なんだ駿介。普段からあまりに仲が良過ぎると思ってたがそんな風に見ているって事はやっぱそんなんなのか?」


そんな駿介に景が揶揄いたいと言った欲求が見え隠れするニヤニヤ顔で迫ってきた。

そう、景の言葉でも分かる様に清花は学校でも構わず家の様に喋ってくるし、一緒に帰っている事も大抵の奴が知っている。

そんな状況が揃えば勘違いを招いてもおかしく無いのだが、とは思っている駿介。


「馬鹿かお前。んなのじゃねぇよ。確かに話したりはするけど、それ止まりだ。気の良い友人くらいの感覚だよ」

「ほー。どこまでが本当かねぇ」


怪しいと言った様子で更なる追求をして来ようとする景をエルボーで沈めた駿介は席に戻ろうとしたが止められた。


「おい待て…駿介…お前次だろ…?」


そう言われプログラムを見てみると次の種目は借り物競走である。


「呼ばれてるぜ。行ってこいよ」


そんな間に回復していた友人に対し、教えてくれた感謝はあるが先程の揶揄いに対しての憤りと言う微妙な感情に顔を顰めつつ駿介は集合場所に走って行った。


集合場所に着けば他の選手が何人か既に着いており、ある程度の列を成していた。

駿介も係に従い並んでいれば、やがて人は増えて次のプログラムにと移った。


借り物競走、駿介の一つめの担当種目である。

紙の上には風で飛ぶことを防止する為に玉入れなどで使われる玉が置かれており、取るのには苦労しないが取った物に関しては場合によっては苦労する。


「変なものが来ないといいが…祈る他ないな」


神頼みに近いことこの上無いが、駿介が勝つにはそれしか無いのだ。

周りを見ればちらほらと運動部の奴が見えているし、駿介自身の運動能力も並程度。

変なものを引かないことを祈る他ない。


校庭にまた破裂音が響いた。

スタートの音であり、駿介含めた何人かが走り始めた。


駿介が手に取った紙は簡潔であった。

普段から仲の良い人、と。

咄嗟に思い付いた茶髪の小柄で活発そうな少女は却下し、景を探すことにした俊介はクラスの待機席に居るのを見つけて駆けて行った。

他にも紙を取った人達は様々な場所にと走って行っており、変わった奴だとまさかの校舎の中にと入って行く者も居た。


「おい景。ちょっと来い。お前を借りるぞ」

「お?まあ良いけど…どんなお題なんだ?」

「普段から仲の良い人、だがなんだ。時間が惜しいからとっとと行くぞ。いいな?」

「待て、それならお前は俺じゃない。俺以上に仲の良い子が居るだろ?お前。いつも根暗そうなお前に構ってくれてる良い子ちゃんが」

「…俺は嫌だぞ。周りの連中になんて言われるか。目に見えてるしな」

「そうか?それならもう遅い気も…まあいい。ほれ、小嶋さんの事を連れて行け。向こうで他の女子と話してるから」


と言って景が指さした方を見ると清花が居た。

だが指を指すこちらに気付いたのかすぐにこちらに向かって来ていた。


「やっほー。どしたの駿君。天津君とこっちを指指してたりなんかして」

「んー?いやこいつが小嶋さんの事を借りたいって言っててな?場所を教えてやってたんだよ」

「あ、おま」

「え!ほんと!?良いよ駿君行こう行こう!

ほら、早く連れてって!」


止める間も無く景に話され、訂正と言うか修正をしようとするが柵を超えてきた彼女に引っ張られ口を強制的に閉ざされてしまう。


彼女の足は速いので着いていくだけでも割と精一杯であり、その間に喋る余裕など駿介には無かった。


ゴール手前にきたところで清花が速度を落として聞いてきた。

「あれ…?そう言えば駿君の借り物ってなんなの?」

「…今更か。あと数歩歩けば知れるんだから今は進めって」


駿介は落ちた速度のおかげで多少の余裕が出来て喋る事が出来たが、先にゴールを優先した。

あと数歩なのでそんな変わらない、とは思うのだが彼女的には気に入らないのかムッとしている。

だがそれで足を止める訳にも行かず、彼女を引っ張り連れ立てる様にして走った。


「おっと、紅組の一走者がゴールです!さあ借り物はなんでしょうかっ!お題の紙をどうぞ!」

「これだ」

「お題は普段から仲の良い人。これは…判定の難しいタイプのお題ですっ!では同じクラスの実行委員の方にでも聞いてみましょう!」


にしても、借り物競走でこんな人によって基準が曖昧になるだろう物を入れていて良かったのだろうかと思っている間に判定が決まったらしい。

清花の方はお題を聞いて満足そうに、幸せそうに満面の笑みを浮かべていたが恥ずかしいのか耳が赤く染まっていた。

駿介は先程の思考で清花の様子に全く気づいている様子は無いが。


「判定は…クリアですっ!

普段から彼らは話すことが多いのは勿論、登下校などでは二人で行なっている事が同じクラスの方以外からも聞く事ができました!」


駿介の組から沸き立つ歓声は、この時ばかりは賑やかなのも良い物だ、と駿介も思えた様である。ほのかに微笑みを湛えていた。

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