緊迫の朝
朝、起きた駿介は眠気を覚ますために顔を洗った。
その後に、どうにも気が向かなさそうな、そんな顔をしてテーブルの上にある鍵を見た。
「…にしても、よく知り合って半月程度の男に自宅の鍵を渡すな。信頼してると言ったって、隠してるだけかもしれないってのに」
とは言うものの、駿介に何か変なことをする気は無く、ただ起こしに行くだけであるが。
テーブルの上の鍵を手に取って隣の部屋の玄関前に立てばチャイムを何回か鳴らす。
「予想通りと言えば予想通り、出ないか。
まあ電話されても起きたら寝ると言ってたし、騒音程度じゃ意味ないのか?」
鍵を開けて中に入れば随分と整った部屋が見えた。整った、と言うよりかは生活感が無いとも言えるような気がする。
彼女の生活は夜はこちらで過ごしているが他の時間帯はまちまちと、来て過ごしたりはしているがそれだけであり昼間や朝は居る筈なのだが。
「こっち…だよな。
間取りは同じなんだが配置とか、家具とかが違うとなるとこんなにも違うもんなのか」
家具の位置や雰囲気などが変わるだけでこんなにも違う部屋になるのかと思いつつ清花の部屋に足を踏み入れた。
女の子らしい部屋や家具ではあるのだが、やや散乱気味である。
そんなジロジロ部屋を見るのも悪いのですぐに彼女の寝ているであろうベットの方を見たが彼女の姿は見えない。
「…ん?あれ、居なくないか。あいつ」
思わずと言った様子でしゃべられた駿介の呟きに返ってきたのは寝惚けている感じの唸り声であった。
「…う〜…ん…?」
よく見れば毛布に微かな丸みがあるのが分かった。どうやら体全体を毛布に包んでいたらしい。シーツなんかも見れば酷くシワがよっており、枕が明らかな無駄でしか無い。
どうやら清花は寝相はかなり悪いらしい。
駿介は清花の被る布団に手を掛けた。
「…ふぅ…起きろ」
そんな掛け声と共に布団越しにゆすってみるが反応は無い。
余程眠りが深いのか、それとも寝覚めが悪すぎるのか。
何度揺らしても反応は無い。
先程唸り声がしていたので眠っているので間違い無いと思うのだが。
「起きろ。起きろって」
寝返りを打ったのか奥にゴロンと転がった清花。
仕方ないと、毛布に手を掛けてそのまま力任せに引っ張るが清花の力は強く、毛布から離れない。
流石に疲れたので布団から一度手を離した。
「…マジか。ここまでして起きないのか。
いやほんと、起きろって。清花?」
強くゆすってみるがやはり唸り声の反応しかなく、どうしたものかと悩んでいたら清花が起き上がった。
まだ随分と眠そうで伸びをしている。
「ようやく起きたか。何時だと思ってやがる。取り敢えず眠気覚めるだろうから顔洗って来い」
「…ん?あれ、駿君?…なんでいるの?」
「昨日のことを忘れたと言うのかお前。お前から頼んできたんだよな?」
「んー…あ、そう言えばそんなんだったような…?」
「起きたな?起きたなら顔洗ってこい。眠気覚めるぞ」
「んー…ねる」
そう言って再び彼女は布団を手に持ち、そのまま寝た。
実に安らかな寝顔であり、とても数秒前には起きていたなどとは思えない程である。
ここまで綺麗に二度寝されると駿介としてもどうしたものかと。
「寝るなよ、起きろって。そんなんだから遅刻するんだろお前!」
「んー…寝るったら寝る」
「マジで起きてくれ。このままだと俺はお前を放置して学校行くぞ」
「あ、それはやだ。また遅刻する」
にょきっと起きて来た。
先程のが演技だったかのように呆気なく、である。
「はぁ…本当に起きれないのか怪しい奴だなほんと。最初はともかく二度寝からがやけに早い。いやでもなぁ…うーん?」
悩む駿介を他所に清花はそそくさと立って自室を去った。
取り敢えず起きたようではあるので駿介もそれを見届けたのちに、清花の部屋から出ることにした。
「じゃ、俺は帰って準備するからな。一応出る時に様子見はしに来てやるから、間違っても三度寝とかは辞めろよ。絶対だからな」
「はー…い」
十数分後に駿介が様子を見に来たら、彼女も家を出るタイミングだったようで駿介と清花は二人揃って登校したようである。




