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体育祭前

「よお駿介。お前、体育祭何出るよ」


朝、登校した駿介が席に座れば影がさした。

影の正体は天津景、駿介の高校が始まってから半月ほど経った中でできた友人である。


「そういやそろそろ体育祭か。なんの競技があったんだ?」

「選択種目はリレーと玉入れ、大玉転がしに綱引き、障害物競走、そして借り物競争だったな。こうして見るとうちの高校競争好きだな」

「その中だと借り物競争と障害物競争の二種目だな。その二つなら運と工夫次第で上位を狙える」

「成程、確かに駿介って運動は並、下手すりゃそれ以下だしな」

「ああ、だからこの二つ…無理なら玉入れとか大玉転がしで妥協だな」

「ほー…まあ安心しろ。体育祭の実行委員の俺が良い感じにお前がそこに入れるよう調整してやる」

「職権濫用は辞めとけ。クビにされるぞ」

「そうか?バレないバレない。まあ、冗談だけどな」


呆れの意味を込めて駿介はため息をついた。

見てわかる通り景の奴はいいやつだが気が良過ぎると言うか、調子に乗りやすいと言うか、そんな面が目立つのだ。

これでもクラスの中で一定の信頼は得ている事から景の良い奴さがよく分かる。


「そろそろチャイムなるから座れよ、景。それでこの前話してた俺まで巻き添えくらったんだから、勘弁してくれ」

「はいよ。じゃ、また後でな。駿介」


景が席を離れた後にチャイムが鳴る。

そしてそのタイミングで担任が入って来て、そこから数分後に慌てて彼女が来る。


教室の扉が勢いよく開き、息を切らして清花が入って来た。


「ぜぇ…ぜぇ…遅れ、ましたぁ…」

「小嶋か。先週に引き続き三日連続の遅刻、そして遅刻しなかった日も結局遅刻スレスレ。流石にそろそろ指導を入れなきゃいけないぞ。次一回で指導を入れる。覚えておけ」

「うへぇ…そんなぁ」

「まあ、取り敢えず座れ」


とぼとぼとした様子で席に着いた清花を横目で見つつ担任の話に耳を傾けた。


「今日のホームルームは体育祭の種目決めだ。決めると言っても希望を取るだけだけどな。それじゃ、配る紙に希望の種目書いて後で適当に実行委員の誰かに渡しておけ」



「駿君は何にしたの?希望種目」


学校が終わり、下校している頃、清花がそんな風に聞いて来た。

校庭や体育館を見れば多くの生徒は部活動に励んでいるが駿介と清花は帰宅部なので関係無いのだ。


だからと言って一緒に帰るのはどうかと思うが、夕食の時の買い物を考えると二人で帰るついでに行った方が色々と都合が良いのである。

単純に物を多く買えたり一人一品の物を二つ買えたりなどなど。


それのせいでお互いこの高校に入ってから出来た友人と一緒に帰ったりなんかは出来ていない。

交友関係が少ない駿介はともかく、割と交友関係が広い清花は致命的だと言った事はあるが、本人曰く「あー、あの子達とは話すけどあんまり仲良くは無いかな?」とのこと。


まあ確かに聞こえる話などを聞いていれば清花は他の友達らと一歩引いていると言うか、壁を作っているような感じはするのだが。


ちなみにこの半月で清花の料理は多少マシになっているとは思う。

下地はあったので教えればどんどん吸収して行くのだが何故か調味料の類の量を何度言っても適当に入れるので味が濃過ぎたり薄過ぎたりと、その差が偉い事になったりしているがそこは時間を掛けて感覚で覚えていくしか無い。


駿介の場合そこら辺は母から「取り敢えずこんな風に入れれば小匙いっぱい分だから」と言う風に教わったので正確かは計ってないから分からないが、大体はあっているはずである。


「あれ、駿君?どしたのー?黙っちゃって」

「…ああ、すまん。考え事してたわ。希望種目だったか?」

「そそ。何選んだのかなって。ちなみに私はリレーと障害物競走」


ぴすぴす、そんな擬音とかが付きそうな感じにピースしながら言ってきた清花に対して若干の苛つきを覚える駿介である。


「なんだ。お前も障害物競走を希望したのか?俺もそれと借り物競走を希望した」

「あれ、駿君体育とかだとあんまり走りたくなさそうって感じらしいのにどっちも走るやつじゃん。どったの」

「走りが速いだけで決まる物じゃ無いだろその二つなら。つか男女別でやってる体育の様子を何故お前が知ってるんだ」

「んー?私一応便利そうだからアドレスの交換はしてるからそれで聞いた。駿君と仲の良い子居るでしょ?その子に」


俺の友人は知らぬ間に俺のことを他人にベラベラ話しているらしい。

後日恨み言の一つくらい言っておくことにしよう。


「景の奴か。まあ、それは良しとして何故聞いたんだそれ」

「ん?なんでって、みんなどれくらい運動してるのかなぁ、って気になったからだけど。

「じゃあ全員分聞いたのか?」

「いや、駿君のだけ。だって他の人は部活とかである程度分かるし」

「…ああそう」

「うちのクラスの帰宅部って駿君と私だけでしょ?」


思い返してみれば確かに皆なんらかの部活に入っていたような気もする。

みんな下校時間には大体が下駄箱には居ない。

外部活の奴らがいるくらいである。


「そういやまあ、そうだな」

「だから駿君だけ聞いた」

「…そうか。で、今日は野菜炒めとかでいいな?」

「お、いいね。さんせー!」


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