始まりの一日(午前)
えー、見切り発車で書き始めたので投稿がよく止まると思います。
ストックが持つ限りは毎日投稿します。
「…流石に最初は何にも無い…か」
張り出されたクラス分けの紙を見て風見駿介が辿り着いたのは、今日から三年間通う事になる天城高校の1ー1の教室。
駿介は今日からこの高校に入る新入生だ。
クラス分けの紙に何か気になることがあった気がするが気にしない事にする。
周りを見渡してクラスを見て、駿介は何処かうんざりしたような息を吐き、席に着いた。
机の上でぼんやりと、頬杖をつきながら三月の最後を思い出していた。
今年、高校一年となる駿介は中学の時の顔見知りの居ない、遠くの高校を選んだ。
その結果親にあれよこれよと進められ一人暮らしにされたのは驚いたが、地元から完全に離れられるので良いかと納得して出て来たのだ。
軽めの荷物、を部屋に運び込み、段ボールにの積まれた自分の新しい部屋を眺めた。
大きな家具などは既に買っており部屋に運び込まれていたのでその数はある程度覚悟していたが、想像以上である。
「…これを全部開くのか。苦労しそうだな」
誰に言うでも無く、思わずと言った様子で呟いてから行動を始める。
一人黙々と箱の解体と家具の移動を行う。
すると隣の部屋からやけに大きな音が聞こえて来た。
隣の部屋は空室と不動産には言われていた筈なのだがと不審に思っているとまた聞こえた。
「なんだ?と言うか隣は空室だったよな…確か」
駿介は周りを見渡し、ひと段落ついたと思えば時計を見る。
ちょうどお昼時だし、何か買いに行くついでに隣の部屋をのぞいて行くかとひとり呟けば先程出した衣類の中から適当に着替え、玄関を出た。
すると自分の部屋の中では聞こえなかったが、扉の前に来ると中から何やら慌ただしい声が聞こえる。
やはり誰かいるのかと思い、チャイムを鳴らすとドタバタと足音がすると共に、扉が開いた。
「はーい…すみません。うるさかったですかね…?」
扉を開けたのは茶髪の如何にもテンション高めの活発そうな少女だった。
「あー…まあ、はい。先日引越して来た隣の者なんですが…何があったんですかね?」
「え?隣の…あ、先日引越して来たのか。なら納得。あえっと、うるさかったですよねすみません」
一瞬考え込むようにしていたが、どうやら彼女も隣を空室だと思っていたらしい。
とすると彼女もついこの間引っ越して来たのだろうかと考えれば辻褄が合う。そんな風に考えれば彼女がジッとこちらを見ている事に気が付いた。
「えーっと…俺に何か?」
「いや、随分と若く見えるなー…って。
もしかして私とタメ?と言うか同じ高校だったり?」
「いや先ず貴方の歳を知らないので何とも…と言いたいですけど高校って事は天城高校の新入生…ですかね?」
興奮した様子でグイグイと開けた扉から身を乗り出して聞いてくる彼女に気圧されながらも答えれば彼女は更にその身を乗り出して来た。だが小柄なようで目の前に来たとして彼女の顔は駿介の胸辺りで止まっているが。
「あ!やっぱりそうなんだ!私、小嶋清花って言うんだ。宜しくね、君は?」
「あ、ああ。俺は風見駿介。まあ、よろしく頼む」
「いやー、でもそっかー。同じ高校で同じ学年だったんだぁ。なら同じ時期に引っ越して来てるのも納得かな。あ、君も一人暮らし?私はそうなんだけどさ」
「ああ、俺も一人暮らしだが…そういやさっき2回くらい凄い音がしてたが、大丈夫だったのか?というか何があった」
元々ここに来た用事を果たさなきゃならない事を思い出して問い掛けた。
「ああ…ええっとねー…その、何と言いますか」
そんな風に先程の勢いも失せてしょんぼりし、どこか都合の悪そうにしている彼女。
観念したのかバツの悪そうに扉を開けて中を見せて来た。
「…こりゃまあ…何というか…酷いな。
ここに来たのは最近じゃなかったのか?」
「そりゃ最近だよ!と言うか荷物解いてる最中だし…でも途中で取り敢えず置いておいた服に足が持ってかれちゃって…更にそこから積んでおいたダンボールに倒れ込んじゃってさ。それでああなっちゃって…ね?」
当然なるでしょ?と言った風に下から覗き込んでくるのにどこか小動物染みた何かを感じたがそれについて考える間も無く扉の向こうの惨状を見ればそれも吹き飛んでしまう。
「取り敢えず、だ。片付けはまあ、頑張れ。
今度は服を置いたりとかしないなり足元に気をつけるなりで…」
「あはは…気をつけまーす…」
「まぁ、それじゃ。また機会があれば」
「うん。じゃあねぇ」
そう言って扉の向こうへと帰った彼女を見て駿介も自分の部屋の取手に手を掛けて、すぐ様手を離した。
昼飯を買いに行く事を忘れていたのだった。
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