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第16話 それぞれ

後れ馳せながら…あけましておめでとうございます!

どうにか年明け7日以内に投稿することができました(´∀`)フゥ 

今回は久しぶりにあの人たちが出てきます。楽しんでいただけたら幸いです。 


そして…今年もどうかどうか、よろしくお願いします!!

「こっち、風呂とトイレ。それからコウの部屋は…」

 帰宅後、京介は早速コウに部屋の位置や物の位置を教えていた。

 姉と京介が住んでいたアパートは手狭だがリビングとキッチンの他に完全に孤立している部屋が2つあって、京介が玄関に近い側、姉が奥の部屋に住んでいた。その配置になった理由としては「強盗とか来たときどうすんのよ、あたしよかあんたが先に犠牲になってよね。男なんだから立ち向かえ」というなんとも傍若無人な、しかし頷くしかない姉の発言によるものだった。

 一応先に部屋に入って中を覗くと、姉のものは綺麗さっぱりなくなっている。そういえば食器なんかもお気に入りだと豪語していたものについてはあらかた無くなっていたと思い返して、こんな時だけ行動が早い美歌に呆れて軽くため息が出た。

「どうしたの?」

 これからコウの部屋になるドアを開けたままでいきなりため息をついた京介を不審に思ったのだろう、コウが声をかけてきた。

「あー、いや。なんでもない。ここがコウの部屋になるところだから好きに使え。ていうかこの部屋だけじゃなくて全部好きに使ってくれていいからな」

 告げて振り返るとコウはこくんと頷く。

「…ありがとう」

 その姿がなんだかやたらちんまりして見えて、妙に可愛く思える。

 まだ外出着のままで部屋をうろちょろしていたためニット帽をかぶっている彼女の頭を、ぽんぽん叩く。だけれどそれじゃ足りなくて帽子をとって頭をわしゃわしゃかき回してやった。

「…………なに?」

 怪訝なコウの声で我に返る。ハッ、今俺は欲望に任せて何を!

「や、悪いなんでもない」

「…なんでもなくていきなり人の帽子とったうえに頭かきまぜんの?」

「そ、そういう気分の時もあるんだよ」

 苦しい!今の言い訳は苦しいぞ俺!!

「…ふ〜ん、あそ」

 あれ、通じた!?

 いつもの『口撃』が来ると思っていたので拍子抜けしたというのは黙っておくことにする。逆にそれが怪しく思えなくもないが、聞くのもまた怖いのでやめておくに限るだろう。

「ね、入ってもいい?」

 彼女の中では今の話はもう終わったらしく、部屋の中を指差す。まだ肩透かしを食らった気分であぁと答えると、じゃあおじゃましますと部屋に入っていった。追い抜きざまに京介から帽子をふんだくっていくのも忘れない。

「あとでバイト行く前に客用布団持ってくるからコウはそれ使えな」

「うん」

「あと…なんかすぐに欲しいものとかあるか?必要ならバイト行くついでにどっか寄って買うけど」

 京介の言葉にコウが考え込む。

「お金…」

「ん?」

「家賃、とか光熱費とか。…食費とか。どうすればいい」

 買ってきてもらうのも申し訳ないもん。それにタダで居座ろうなんて思ってないから。

 どこか弁解するように続けるコウの頭をポンと叩く。

「バイトする気は?」

「ある」

「じゃあ、コウのバイトが見つかってそれが落ち着くまでは気にするな。そのあとはそっからお互いの収入見て考えよう」

「…いいの?」

「年下の女の子から今すぐ金せびるほど困ってないからな」

 それにどうせそうなる時期には期限の1ヶ月が経っているだろう。今決めたルールは必要なくなるだろうし、コウはいっぱいいっぱいで気付いていないようだがそれでいい。

 はい、この話おしまいと最後にもう一度頭に手を置いて部屋を出る。

「荷物置いたらリビング来い。ちょっと遅いけど昼飯食おう」

「…うん」

 背後で蚊のなくような返事が聞こえた。

 その声が少し震えていたけれど、マイナスの感情からではないことはなんとなく分かったので気付かないふりをした。










 その日はバイトがある日で、小澤遼はバイトの前に本屋に寄ろうと少し早めに家を出ていた。

 今日は日曜日で、京介と二人でシフトを組む日ではあったが寄り道の時間を考慮してだいぶ早く家は出てきている。

 …今日深山バイト来るのかな。

 準常連客だった女の子とコンビニを飛び出していったのは記憶に新しい。けれどあの日以降京介から連絡は来ておらず、今日のバイトに出てくるかどうかの確証は得られていなかった。

 まぁ深山はバイト無断欠席なんてしないだろうから多分大丈夫だろ。

 そんなことを考えていればいつの間にか目的地である書店にたどり着いていて、自動ドアをくぐった。

 この書店は全国チェーンの大型書店で、今遼が訪れているこの店舗はその中でも大きい部類に入る店舗だった。いつも使う店なので配置は把握している。

 迷いのない足取りで3階建てのうちの2階に向かうと、目的の本は発売日通りに並べられていた。ほっとしてその本を手に取る。

 昨今人気が急上昇しているライトノベルだ。ある人物の影響で読むようになったのだが、現在では新刊が出れば交互に購入して読むという暗黙のルールができていて、今回は遼の順番だったのだ。

 それを手にとってレジに向かう。

 その時だ、雑誌売り場の一角で見知った顔を見つけて遼は思わず立ち止まった。

「新谷」

「おっ?小澤じゃーん」

 向こう―――バイトのもう一人の同期、新谷(にいや)だ―――もすぐに気づいてお気楽な声をあげる。相変わらず隣には女の子がいて遼も無意識に視線を走らせ、いつもの光景なのでそのまま流す。

 新谷はその彼女と二、三言話すと手を振り合ってこちらに向かってくる。

 うわ。まさかこっちに?

「よ、小澤」

「こっちに来られても僕太郎とデートする気ないんだけど」

「だれが好き好んでオマエみたいなのとデートするか!てか太郎呼びマジでヤメロっ」

 あいさつ代わりに一言言うと、予想通りの反応が返ってきて面白い。だからいじるのをやめられないのだということを新谷は分かっているのだろうか。

「冗談だよ。さっきの子はまた友達?」

 とりあえず噛み付いた新谷は放置プレイでレジに行って戻ってきたあと、店の外に出ながら質問してみた。答えが分かっている質問ほど無駄なものはないと思うが、それでも遼は聞かずにいられない。

「あー、うんそう」

「相変わらずタラシこんでるね」

「…遼くん、その言い方ヤメナサイ。俺はさぁ」

「分かってるよ。『本気で好きになれる子がいないだけ』でしょ。探してるんだよね?はい頑張って」

 いかにも適当な返事に新谷が小澤!と憤慨した。遼はいつものごとくそれを放置プレイしたが罪悪感は欠片もない。

 ―――いつだったか聞いたことがあるのだ。太郎はなんでそんなタラシなわけ?遼のその質問に答えた新谷の言葉を今でも鮮明に憶えているのは、その返事が自分にとってあまりにも規格外だったからなのか。



 ―――俺、ダメなんだよなぁ。今度こそって思うんだけど、毎回本気になれないんだ。その事実に自分で気づいたとき、それで付き合っちゃうのは相手に悪いよなぁって思って…それから一緒に遊んでる子たちには皆付き合い申し込まれた時点で断ってるんだ。

 俺きっと君のこと君が思ってるように大事にはできないよ。友達としてなら付き合っていけるけど、それ以上は多分ムリ。

 完全には拒否できないそのパターンが一番残酷だよなとは分かるんだけど、俺にはそれしか言えないんだ。それで去るのも想い続けてくれるのも、選択権はその子にあるんだと思っちゃうとなんかなぁ……。



 そう言って苦笑する新谷はなんだか痛そうだった。



 ―――だから俺、自分が本気になれる人探してるんだ。みんながこっちに向けてくれた気持ちを、今度はその子にいっぱいまとめて返せたらって思う。

 まぁ、まず相手見つけろって話なんだけど。



 それっきりハイ話は終わり!と切り上げた新谷に遼も何も言わなかった。新谷のその考えに自分が口を挟める余地はないと思っていたし、何よりガラじゃなく物思いに耽っている太郎が傍目から見て面白かったからというのが9割方の理由である。



「それで?運命の人は見つかりそうなの」

「…その言い方されるとなんか嫌だな」

「合ってるでしょ、運命の人」

 隣を歩く新谷に言うと当の本人は眉を寄せた。

「いや…うぅ〜ん、まぁ…そうなのか…?」

「まぁどっちにしろ太郎に選択権とかないし」

「おい!俺の今の葛藤は!!」

「ぎゃんぎゃん騒ぐ男は見苦しいよ新谷」

「………っ、」

 新谷が口喧嘩に弱いのは知っている。そして自分がこういう言い合いにおいては右に出るものはいないことも。

 黙りこくってしまった新谷は慣例どおり放置しておくことにして―――雪が風に混じる歩道を黙々と歩く。 その時初めて気づいたように新谷が声を上げた。

「あ」

「何」

「いや、そっかお前今からバイト行くトコなんか」

「やっぱりなんていうか太郎は頭の回転悪いよね」

 そんな今更なとばかりにため息をつくと間髪入れず反論が来た。

「俺は頭の回転は悪いけど成績は悪くない!」

「それさらに評価下げるだけだって気づかないところがまた、…痛いじゃんか」

 口では勝てないことを悟ってか今度は頭をはたかれた。仕方ない、背は新谷のほうが高いのだからと甘んじて受けることにする。

「オマエ仕方ない叩かれてやるかっていう心情が表情で透けてんだよ!」

「あぁだって成績は悪くないけど頭の回転は悪い太郎にもわかるようにと思って」

「おっまえ」

 また一つはたかれる。それがおかしくてふっと噴き出すと新谷もつられて笑った。

「あーあ、小澤に口で勝負挑むなんて馬鹿なことした…………なぁ、あれから深山から連絡あったのか」 ふと現実に引き戻されたかのように新谷が呟く。こいつもこいつで気になっていたのだろうと、いや、でも今日のバイトは来るでしょうだって深山だもんと答えると、新谷もまぁそうだろうなと笑った。

「あいつ時々ヘンに責任感強いからなぁ」

「まぁそこがいいところではあるんだけどね」

「だな。……けど、それ仇になって背負わなくていい他人の荷物まで背負っちゃってんじゃないかって時々思う」

 そんな心配は自分には全く縁がない部類の心配だが、深山ならありえそうだと新谷は思う。

 今この瞬間その『他人』が誰のことを指しているのか―――きっと自分たち二人は同じ少女を思い浮べているのだろう。

「あんなさ…明らかにワケありな女の子連れてどうすんだろな。まぁ可愛い子だからちょっとうらやましいけど!」

「最後の一言が君のアホっぽさを際立たせてるね。―――でも案外、そんな重い問題じゃないのかもしれないし。それに…」

 言葉を切ると新谷がそれに?と続きを促した。もう遼の毒舌に突っかかる気はないらしい。

「深山ならそうなってもそれで自分がつぶれる前に周りに頼るよ、きっと。若しくは、つぶれない。勝算なきゃ挑まないタイプなんじゃないのかな」

 それは今まで一緒に働いてきて感じた遼の京介に対する評価だ。当たっているかどうか定かではないが少なくとも遼自身はそう思っている。

「……オマエよく見てんのな」

「お褒めに預かりありがとう。なんなら新谷に対する評価も喋ってあげようか?」

「イヤうんそれはいいわなんとなく何言われるか分かるから」

 ハハハと乾いた笑いで手を振る新谷に視線を送る。残念だ。今なら素直に誉めてやってもいいと思っていたのに。

「さて、それじゃあ俺もどうせだからコンビニ行こうかな」

「は?何しに」

 今日は新谷はシフトではない。思わず怪訝な声が出た。

「何だよ冷たくね!?あの後だし深山がどんな顔してバイトくんのか見たいんだよ。聞きたいことも沢山あるし〜」

 語尾に音符でも付ける勢いで間延びした声を出す新谷に、あ、それは僕も賛成と同意を示す。

「なんだよやっぱり小澤も気になってんじゃん」

「あれ、僕気にしてないなんて一言でも言ったっけ」

「……………」

 律儀に考え始めた新谷を置いて遼はスタスタ歩く。

 太郎は手のひらで転がせるからおもしろい。京介は俊敏な突っ込みスキルを見せるからおもしろい。

 これで3人揃うともっとおもしろいからこのバイトをやめられない。

 そんなことを無意識に考えながら、背後から聞こえる小澤待てよ〜という声を聞き流しつつ、遼はバイトへ向かうのだった。

本編に全く関係のない後書きを書いてみる。目指せ時雨沢さんレベルの後書き。(←多分無理)


えー、私すごく目が悪いんです。普段はをね。かけてるんですけど。

この前、そのが盗まれたんですよ。うぉーい、見えないのなんのって。カラオケでも画面にへばりつき。せっかくのアニメキャラがぼやけてるじゃないかぁぁああぁぁ(泣)と魂の叫び。(安心してください、基本属性は三次元です。見た目は社会に完璧に溶け込んでます、…多分) 

そんなワケで赤セルフレームの盗られて悔しかったので黒セルにしてやりましたみたか!(←?)

まぁだからなんだって話なんですけど…赤セル買って1ヶ月も使ってなかったんですよ〜泣

そんなわけで後書き終わります(え)

そういえば京介たちが住んでいる場所は私の中で雪はふるけどあまり積もらない場所です(どこだそれ…)皆さま自由に想像を膨らましてください!笑

それでは今回は失礼いたします。次回またお会いいたしましょう(●´∀`●)/

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