14/14
水と羽(別稿)
天国を垣間見せる白き翼は我が手に
雨の降る頃に私は行った
ああ、その門をくぐれば都なり
水の都のヴェネツィアよ
今はこの涙も忘れまい
今はこの呪いも憎みまい
私の乗るゴンドラは洋洋と漕ぎ出した
月も見えぬ真昼間に
「ああ。あの太陽は傾いている」
どうすることもない
私のゴンドラは雨に打たれた
「君よ、次はどこへ行く」
船頭がそう聞くので云ってやった
「地獄の一番深いところへ、行ってしまえ!」
ああ、滝壺から落ちていく私のゴンドラ
「水の流れる音すなり」
詩人の投げた石が、音楽者の楽器に当たり
「いにしへの花が咲いた」
「ああ、紅い!」
どうしましょう
「もう着いた。ここは岸だ」
なんだか映画「君たちはどう生きるか」のようになってきましたね。