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苦手な方はご注意ください。

精霊剣王の誕生

初めて短編小説をかきます。

なんか違ったらすみません。

 オーラン歴1542年

 大昔、まだ魔王が人類を支配していた。そんな中。人類を救った剣聖オーランを称えてつけられた暦で統一国家建国記念日としての暦だ。

 オーランの伝説は数えきれないほどある英雄の中の英雄だ。


「ジンこっち来てー」

「はーい」

「やっぱりここの料理は美味しいんだよなー」

「ありがとうございます。父さんに言っときますね。」


 俺はいつも通り実家の宿屋を手伝っていた。ここの宿は冒険者なんかがたくさんいる。普通のなんなら男臭い宿屋だ。

 あれ?見ない顔だな珍しい女の人が来るなんて。ていうかめっちゃ美人。なんというか今まで見た中で一番の美人だ。なんでこんなところにこんな人が?


「やっと見つけた。」

は?何言ってんだ?明らかに俺に話しかけてきた。

「えっと?どこかで会いましたか?」

会ったら忘れるわけがない。こんな美人は。

「いや君とは初めて会うよ。」

何言ってんだこの人は。

「ここの宿ですか?ここってそんな有名じゃないと思うんですけど。」

「いや君で合ってる。名前は?」

「ジンですけど。ちょっと今仕事中なんで用があるようでしたら後ほど。」

「ジンね。わかった。じゃー後でね。」


 なんなんだ。あの人はていうか怖かった。冒険者であんな可愛い人初めてみた。冒険者っぽかったけど冒険者なのかな?


 父さんに頼んで早めに終わらせてもらった。

「すみません。待たせてしまって。」

「いいや大丈夫だよ。私達が貴方に用事があるからね。」

「達って?」

「ああーごめんね。私精霊なんだよ。精霊女王のフィローネ。」

「……」

何言ってるんだ?精霊女王って伝説上の人物だよな?

「あはは。この反応も何回目かなー」

もうどこから突っ込んでいいか分からん。

「私の事についてどのくらい知ってる?」

「精霊女王のことですか?えーっと、神様が世界を作った時に精霊女王を世界の管理者として生み出した。

ってことと、精霊女王が魔王ディルドネに捕まった時に剣聖オーランが助け出したってことくらいですね。」

 ちょっと調べれば大量に出てくるとは思うけど一番有名なのはこの二つだ。

「そっか。ちょっと残念。」

「本物なんですか?まずいること自体驚きなんですけど。」

「本物だよ。君には私達の所に来て欲しいんだけど。いいかな?」

本物って説明そんだけそんなんで信じてもらえると思っているのか。

「まだ本物って事も証明してもらってないですし。そんないきなり言われても無理です。」

「えー。本当っていってるのに?」

何なんだ。駄々っ子みたいになった。何千年も生きてるのにこんなんなのか。でも可愛かった。


「じゃー証拠を見せよう。」

そういうと身体透けた。なんていうか神々しい。なんて考えていると

「えっ?」

瞬間移動していた。

「どう?信じた?ここが私達の国だよ。人間たちでいうところの精霊界ってとこかな。」


 こんなに精霊っているんだ。人間のいるところとかだとほとんどいない。下位の精霊ですらほとんどいない。上位精霊ともなると尚更。でもここには上位精霊が山ほどいる。


なんか懐かしく感じる。


「上位精霊ばかりですね。驚きました。」

「懐かしく感じた?」

「なぜですか?」

「みんなそう言うからさ。君をここに連れてくると。」

「僕と会ったの初めてのはずでは?」

「そうだけどそうじゃない。君は剣聖オーランの生まれ変わりだからね。」

「……」

話の進展早すぎてもう頭が。

「この反応も懐かしいな。」



「フィローネ様ー。帰って来たんですね。よかったです。オーラン様の生まれ変わりを見つけれて。」

「そうだね。よかったよ。今回も見つけれて。」

「で?あの人がそうですか?なんかすごいぼーっとしてますけど。」

「いま、ちょっといろいろ一気に教えすぎたかな。」

「なるほど。剣は身につけてないんですね。この年なら大体冒険者か騎士団とか剣の仕事してるはずですけどね。」

「そうだね。宿屋で働いてたからね。多分剣も握った事無さそうだ。」

「なるほど見つかりにくいわけですね。」


ふーどうやら僕は剣聖オーランの生まれ変わりらしい。何なんだ。でもなー精霊女王ってのは本当っぽいし。この30分くらいでいろいろ起きすぎて頭が追いつかない。


「本当なんですか?僕が剣聖だって話。」

「本当だよ。記憶はなくても魂の色も形も同じだからね。」

魂に色や形なんてあるのか。

「その人は?」

「ああ、彼はフートンだね。私のお世話をしてくれる精霊だね。」

「フートンです。ようこそおいでくださいました。えーっと。」

「ジンです。」

「そうですか。ジン様。」

「様付けなんてそんな。精霊様に様をつけていただくわけには。」

「いえ。オーラン様に様をつけないなんてことはできませんので。」

「いや、オーランじゃないですけど。」

「しかし我々にとってはオーラン様なのです。これだけはお許しください。」

「そこまで言うなら別に。わかりました。」

「ありがとうございます。」



「フィローネ様?帰してくださいませんか?」

「えっ?ここにいないんですか?」

「今日は帰りますけど。また後日連れてきてください。父さんにもいろいろ言わないといけないので。」

「うーん。わかりました。送っていきましょう。」


 とりあえず帰って来た。すごい疲れた。この家に剣なんてない。やっぱり才能はあったのだろうか?俺がオーランか。一応成人はしてたからその日は飲んで寝た。



「おはよー。」

朝一だ。二日酔いでめっちゃ気持ち悪い。

「二日酔い?治してあげよう。」

「ありがとうございます。どうしてここに?」

「お父さんと話してうちに来ることにしたんだよ。」

まじか。もう決まってるらしい。

ものすごくしれっと十何年間過ごした家と別れた。



 昨日は本当に突然帰って来たようでお出迎えなんてなかったが今回は違った。

「お帰りなさいませ!」

「ただいまー。みんな久しぶりだね」

「はい。フィローネ様も元気そうで何よりです。」

「うん。こちらはオーランの生まれ変わりのジンです。」

「ジンです。よろしくお願いします。」

「ジン様こちらこそよろしくお願いします。」

「じゃー、フートン案内よろしく。ちょっと私は用事があるから。」

「わかりました。お任せください。ジン様こちらへ。」


 フートン様に精霊界を案内してもらった。案外人間の街と変わらなかった。服屋あって、雑貨屋があって。違う所は料理屋がない所か。フートンさんが言うにはご飯は食べないらしい。最後に自分の家に連れてこられた。俺は普通の家に生まれた。裕福でも貧困することもない。けどこの家は精霊界の中でもかなり大きな家だった。貴族のお屋敷みたいな家だ。

「これって俺のいえなんですか?」

「そうです。オーラン様が建てられた家です。」

「俺みたいなのが使っていいんですか?記憶もないし。」

「構いません。むしろ使って頂かないと私達が困ります。」

「そうですか。オーランは何をした人なんですか?精霊たちにとってどう言う人ですか?」

「それはフィローネ様に聞いてください。」

「そのフィローネ様はどこに?」

「おそらくオーラン様のお墓かと。」

「そうですか。案外を頼めますか?」

「わかりました。案外は頼まれた仕事ですから。」

「ありがとうございます。」


 ここか。綺麗なところだった。森の中にあった。目の前には湖が広がっていた。その風景は物語に出て来そうなほど綺麗だった。お墓は綺麗に掃除がされてあった。その前にフィローネ様が立っていた。

「なにを話しているのですか?」

「いえ。なにも。フートンはどうしました?」

「森の外にいます。」

「そう。ここには今までの転生したオーランがいるのです。みんなここに来てよかったと言ってくれました。」

「僕も言えるでしょうか?」

「さぁーわからない。」

「オーランは精霊達にとってどんな存在なんですか?」

「なぜ?」

「精霊たちが異常にもてなしてくれるので。恩人だとしても記憶も人格も違うのにここまで普通はしないと思うので。」

「そうだね。魔王に捕まったってのは知ってたよね?

精霊たちが捕まったのはあれは半分私が悪るかったんだよ。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今代の魔王ディルドネは流石に見過ごせません。ほとんど人族は奴隷扱いです。彼は殺すべきです。」

「そうね。世界を乱しすぎてはいるわね。でもまずは話し合いをす」

「しかし……フィローネ様に従います。」

「フートン、私達はそう簡単にやられはしないわ。それに私が死ねばこの世界に狂いが生じることくらいは魔王も知っているから大丈夫よ。」

「はい。わかりました。」

「じゃー上位精霊たちを集めてちょうだい。」


 すぐに集まった精霊は五十程度話し合いとはいえ脅しは必要だと思った。私達、精霊を敵に回すなんて事は有り得ないと思っていた。魔王ディルドネ昔も今も史上最強最悪の魔王と呼ばれていたのに。



「精霊女王様が魔族軍になんのようですか?」

「少しやりすぎては?これ以上は見過ごせません。戦争はそこそこにしていただきたいのです。」

「人族に加担するってことですか?それは管理者にしてはいささか干渉し過ぎては?」

「別に今の人族の状況が魔族でもそうします。」

「そうですか。では……」


周りから悲鳴が聞こえた。誰も死んではいないと思う。生きている気配はある。

「なにを。」

「貴方たちは世界の管理者ですからね。流石に殺すとまずい。少しばかり捕らえさせてもらいますね。」

そこで意識が途絶えた。ただただいやらしく笑ったディルドネの顔を見ながら。



「おお。フィローネ様目を覚まされましたか。申し訳ございません。私達がついていたにも関わらず。」

「君たちが謝る事じゃない。私のミスです。私の方こそすまないね。」


「やぁー精霊女王様。いつかはくると思ってたからね。対精霊用の兵器を作らせてもらったよ。でもさすがは上位精霊だ。女王以外は殺すつもりで作ったのになー。」

「魔王ディルドネ覚悟はできているのですか?」

「なんのだ?」

「貴方の行いで魔族全てが消える覚悟です。」

「なぜだい?女王様はここにいて何もできない。この世に君より強いのなんていないだろう?神様だって君を作ってどこかに行ってしまったんだろう?今更だれが僕を殺せると?」

確かに我が母は最近みたいない。今すぐは流石に無理だろう。でも。

「ディルドネ。貴方が死んだ後の話です。」

「僕が死んだ後のことなんて知らないよ。でも流石に子孫が滅ぼされるのは惜しいな。精霊対策でもしておこうかな?」


強がってももう出る事はできないかもしれない。


「フートン、謝っても謝りきれません。ごめんなさいね。貴方の言う通り始めから殺すべきだった。」

「いえ、私達は貴方様について来たのです。謝る事はありません。むしろ私達の方です。代表して私が言いますが全員が思っております。」

「そうか。ごめんね。」


 何日だったかわからない。半年はたったかもしれない。精霊は食べ物や飲み物がなくても生きられるから別に今から死ぬ要素はなかったがこれ以上ここにいると人族が滅びる。世界のバランスが崩壊してからでは遅い。

 もう無理かここまでよく守って来たと思う。何度か守った。今回たまたまミスをしただけ。このバランスが崩れてもいつか新たなバランスができるのかな?

 なら世界は無事か。そうならいいな。諦めかな。もう死ぬ事はない。じゃー一生ここで暮らすのかな。


 ガチャ

      ギ、ギー


 ドアが開いた。

「どなたです?なぜ開けるのですか?」

「戦争に勝ったからだけど?あれ?上位精霊じゃん。何でこんなとこにいるの?」

「ちょっとミスをしてしまいまして。」

「そうなんだ。じゃー帰った方がいいんじゃない?上位精霊って精霊女王の腹心みたいなもんってどっかで聞いたし。」

「いえ。私が女王です。貴方がこの戦争を終わらせたんですか?貴方の名前を聞かせていただいても?」

「えっ!女王様?すみません失礼なこと言って。一応俺が終わらせた。いや、ました?」

「いえそんなことありません。それに敬語は結構です。貴方は私達の恩人ですから。」

「そうか?ならオーランだ。よろしく。」

「ええ。フィローネです。よろしくお願いします。お礼をしなくてはいけませんね。少しついて来てもらっても?」

「えっ。うん。わかった。」

「フィローネ様精霊でない者を精霊界に招いてよろしいのですか?」

「恩人ですからね。」

「フィローネ様の言う通りに。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 伝説とほぼ一緒だ。

「そこで好きになったんですか?」

「いいや、まだだね。」

やっぱり好きだったのか。そりゃただの恩人にここまでしないよな。

「まぁー昔話も疲れるからまた今度にしよう。君はオーランと言葉遣いも性格も違うけど。君はよく似てる。そりゃ魂が同じなんだから全員そうだったけどね。」

「オーランだけなんですか?魂がそのままってのは。」

「そうだね。神様からオーランへのお礼だからね。」

「魂がそのままってお礼ですか?記憶も性格も違うのにそれは意味があるんですか?」

「意味はあるけどね……」


 フィローネ様は話した後から寂しそうだけど懐かしいそうでもあった。似てるとは言っても性格も違う。記憶もないじゃ、やっぱりオーラン本人と転生者ニセモノでは違うのだと思った。



 精霊界の朝は人が住む場所より早く日が昇る。

「フートンさん剣が少し振ってみたいんですけど。いいですか?」

「ええ。もちろんです。」


「どうですか?」

「なんだかしっくりきますね。剣なんてまともに持った事ないのに。」

剣を持ったのは宿屋でお客さんのを少し運んだ程度で振ったこともない。

「皆さんそう言うんですよ。それはオーラン様の剣ですからね。剣も本来の持ち主に持っていただいた方が嬉しいでしょう。」

「そうですか。少し練習しようかな。」

「では剣が扱えるものを呼びましょう。」


「ユーフォンです。ジン様少しですが剣を教えさせていただきます。オーラン様には遠く及びませんが頑張ります。」

「そこまでなりたいとは思っていません。ただ、なんとなくやった方がいいのかなって思っただけです。」

「そうですか。では早速やりましょう。」


 魔物がいるところに連れてかれて彼の剣術を見た。めっちゃ強かった。瞬殺だ。それほど魔物について詳しくは知らないけど。多分強かったと思う。

「強いですね。」

「私の剣はオーラン様にもらったものなんです。彼はどこでも英雄ですから憧れなのは当然なんですけど。オーラン様のようにならなたいですね。」

剣聖オーランか。本当にどこでも英雄だ。


 ユーフォンさんの剣術はオーラン流らしい。一番有名な剣術だ。聞いたことはあるし見た事はある。剣術なんて見ただけでわかるほど詳しくない。


 一週間くらいたった。正直に言ってきつすぎる。普段動いてない人にやらせるメニューじゃない。もう動けない。

「さすがですね。もうここまでできるようになるとは。」

「そうですか。でもユーフォンさんには敵いませんね。」

「それは一週間ちょっとで抜かされるわけありません。」

「そうですね。」



 ここにも慣れて来た。様付けで呼ばれることにも記憶にないことを恩人だと言ってくれることにも。

「フィローネ様久しぶりです。」

「ジン久しぶりだね。ていっても一週間ぶりくらいだけどね。」

「そうだ今からお墓参りにいくんだ。一緒行かない?」

「行きます。ちょうど暇だったので。」


「ユーフォンからの指導はどう?」

「きついです。でもなんか向いてるきがするんですよね。」

「そりゃそうだよ。オーランの魂なんだから。でもまだカリウスを使いこなすには時間がかかりそうだね。」

「カリウスってなんですか?」

「ジンが持ってる剣だよ?知らなかったんだー。」

「魂ってやっぱり関係あるんですね。」

「オーランの場合は全く同じだからね。しかも何十回と繰り返してるし、なんだかんだで毎回剣振ってるからね。魂が覚えてるんじゃないかな。」

「そうですか。オーランのこと聞かせてくれませんか?」

魂ってのはそういうものなのか。

「いいよ。でもこの話で最後にしよう。他はもう面白くないからね。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 オーランが精霊界に来てからだいぶ経った。結局敬語で話されているし。

 私達精霊は魔族を滅ぼすべきではないと考えていたが、人族は違う。今までその脅威に晒され続けてきたのだ。滅ぼすべきというのは分からなくなかった。

「フィローネさんどうして魔族を滅ぼしてはいけないのですか?」

「それは人族が滅んではいけない理由と同じです。何か一つ欠ければ世界のバランスが崩れてしまうと。母に教えられましたから。」

「では神の教えだと?」

「そういうことになるんですかね。」

「わかりました。僕がなんとかして見せます。」

「ありがとうございます。あなたには頭があがりませんね。」


 オーランは約束通り滅ぼさない方向に話を持っていってくれた。

 

 オーランは約束通り魔族を解放した。魔王ディルドネは死に魔族もかなり弱体化した。人類は完全な勝利を手にした。人類統一国家を作り、目まぐるしい発展をしていった。


 魔族は私達精霊に助けてもらったとはいえ感謝などする訳がなかった。精霊達には勝ったと思ってる魔族達はオーランではなく私達に憎しみを向けた。魔王ですら勝てなかったオーランに勝てるわけもないのだからその怒りは当然と言えば当然だ。


 魔族達は対精霊用兵器を作っていた。上位精霊ですらまともにくらえば死ぬほどの。下位の精霊はもういないかもしれない。戦線も崩壊したとの報告をさっききた。じきにここにも魔族が来るだろう。


「フィローネ様だけでもお逃げください。世界のためにも。」

「いいえフートン。私達を殺すということは世界を滅ぼすのが目的でしょう。私を殺すことが目的なようなものです。逃げても意味はありません。それに私が逃げれば確実に精霊界がなくなります。」

「貴方が死ななければなんとかなります。致命的にはなりません。どうかオーラン様の所に行けばかくまってもらえるはずです。どうか。」

「私はここに残ります。オーランは人間です。寿命も短く永遠に守ってもらう訳にはいきません。私達だけでなんとかする時です。」

「フィローネ様がそこまで仰るのならば。」



「精霊女王フィローネだな。魔王様と魔族の敵取らせてもらっ…」


  ドーン

 突然だった。目の前の精霊用兵器がに壊れた。

「オーラン様……?」

「どうしてここに?」

「フィローネの危機って聞いてね。この子に」

「ユーフォン。ありがとう。」

「間に合ってよかった。」


 そこからはあっという間だった。魔王戦は見ていなかったからわからなかったけどこんなに強かったんだ。強い魔族は前の戦争でだいぶいなくなったのもあるかもしれないけど。人が一人来ただけなのに戦況が変わってしまった。


「オーラン様なんてお礼を申し上げていいか。」

「もう神様にお礼はもらったからいいよ。」

「なんをです?」

「まぁー、それは内緒かな。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「だから精霊達はオーランに感謝しても仕切れない。二度も助けてもらったからね。それに私達は寿命がないからね忘れるなんて事もない。それが君たちオーランの魂を持つ人をもてなす理由かな。」

「神様からのお礼というのはなんだったのですか?」

「それは魂をそのままの形で生まれる事だと思うよ。」

「そんなのなんですかね。」

「多分ね。詳しくは教えてくれなかったから。」

毎回オーランの話をした後の顔は気分が良さそうだ。


 お墓参りをして帰っている途中にフートンさんと会った。

「ジン様、フィローネ様に聞きましたか?」

「ええ。でももう話さないと言われましたけど。」

「そうですか。いつもですから。」

「そのあとのことって知ってますか?」

「……何度かいってますし大丈夫でしょう。お咎めもなかった事ですしね。簡単にですが少し。」

「ありがとうございます。」



「魔族との騒動が終わってからでしたね。




 あれ以降のフィローネ様はだいぶお熱でした。それをいうのが恥ずかしいのでしょう。あんなフィローネ様は前にも後にも見たことがありません。オーラン様も迷惑だったでしょうね。それでも結局はオーラン様が折れてくださって結婚をしたのです。


 幸せそうでしたね。フィローネ様もオーラン様も。今まで微笑むことはあれど、笑った顔などそう見たことありませんでしたからね。それが毎日のように笑う姿を見ました。二人とも。今思い出してもそれが精霊の全ての者たちの一番いい思い出であり、幸せな時だったように思います。


 しかしオーラン様は人間の寿命など、永遠の時を生きる私達には短すぎました。どんどん年を取っていきました。若い頃の姿は見る影もなく弱っていきました。遂に寝たきりなってしまった。

 フィローネ様の不安そうな姿をみてでしょうかね。


『僕があの時神様からもらったお礼はね魂がそのまま転生するものだよ。フィローネ、君たちがもし僕がいなくなって寂しいなら探してくれ。な?だからそんな顔をしないでおくれよ。笑顔で看取ってくれ。』

『う、うん。ごめんね。私ねこんなの初めてだったんだよ。初めてこの世界に生まれた時はさ誰もいないし何もない世界で。後から他の精霊達も生まれて来たけど。私と対等な人なんていなかった。だから嬉しかったんだ。オーランとこんなに幸せな時間を過ごしてしまった。もう君がいないなんて考えられないんだよ。死なないで!しなないでよ。』

『それはできないね。僕は精霊じゃないからね。またいつか会おうよ。記憶も性格も違うかもしれないけど魂は僕と同じだからさ。』


 今でもその時を忘れる事はありません。オーラン様が息を引き取ってからはフィローネ様も当然、精霊界の全員で、オーラン様の生まれ変わりを必死になって探しました。始めはもしかしたら記憶があるのではとかも思っていました。


 しかしそんなことはなかった。記憶はなく言葉遣いも好きな食べ物も違いました。それを見たフィローネ様の顔は複雑そうでしたね。転生者(ガバル様)からして見れば勝手にガッカリされた形になりますからそれは始めはうまくいきませんでした。でも面影はありました。フィローネ様が困っていたら手を差し出し二人で歩けばあの時を見ているようでした。……」


 フートンさんの話はずーーーと続いた。ガバルという初めてな転生者から始まり先代の転生者まで好きなの嫌いなこと特徴。時には王族であったり騎士団長であったり。いろんな人がいたそうだ。僕は73人目らしい。

「オーランを復活させたりはしなかったのですか?」

「それは世界の法則に反します上手くいくはずありませんし私達がやってはならないことです。」

「そうですよね。すみません。」

少し強い口調で言われてしまった。


「フートン。」

「あっ。すみませんフィローネ様。」

「それは言っちゃダメだって言ったでしょ?」

「ジン、別にオーランのことを引きずってない訳じゃないけど。君たちとの生活は楽しいんだよ。いろんな人がいるけどみんないい人でオーランと重ねても違和感がないから。

みんなには迷惑かけてる事もわかってる。でももう……

ごめんね。」

「ではこれで失礼します。」


 二人共行っていまった。確かにフィローネ様が笑う時はオーランの話をしている時のような気がする。だから僕は聞いたのだろうか。笑顔が見たいから?


 どうしてオーランは神様にそんなお願いをしたのだろうか。もう一度始めからやり直したいとか?そんなことをしても意味がない。神様に記憶を残すのは却下されたからとか?考えてもわかるわけがないけど。俺はオーランではないのだから。



 フィローネ様とオーランの過去を聞いてからかなりたった。一年くらいかな。精霊界はあんまり時間とか日にちとかがよくわからない。精霊達にはそんなに重要じゃないのかもしれない。


 剣の腕もかなり上がった。ユーフォンさんとも打ち合えるくらいに。あまり落ち込んでなかった。なんでも毎回そうらしい。始めから教えても2年もすれば追い越されるといっていた。そうなると精霊界の中でもかなり強い部類に入ってしまった。嫌じゃないみんなの役にも立てるしね。



ドーン



 急にでかい音が鳴った。

「ジン様魔族軍です。フィローネ様のところに急いでください。」

「う、うん。」

魔族軍ってオーランが全部倒したんじゃないの?


「魔族か。どうして今頃になって。」

「わかりません。それでもオーラン様のいない今、かなり厳しい戦いになります。」

「そうね。あの対精霊用兵器をどうにかしないと。」

「俺がいきます。いや、行かせてください。」

「ジン様それは危険です。死ぬことになるかもしれません。」

「皆さんにはお世話になりました。それに俺もオーランの魂を持っているのですよね。でしたらお任せください。もちろん成功しないかもしれませんからその対策は任せます。」

「わかった。行ってきてジン。」

「ありがとうございます。フィローネ様。」



 対精霊用兵器の数は?っと。なんか初めての戦闘で気持ちが高揚している。

五十はあった。それに千はいる魔族軍。俺の役割は兵器を壊すことだ。無理する必要はない。一つでも多く壊そう。


 一つは奇襲で壊しておいた。そこから魔族軍の抵抗でかなり難しい。弱くはない。今の俺ってこんなに強かったんだと思える。でも兵器所にたどり着けるかと言われれば無理だ。


 こんな時オーランだったら簡単に壊せたんだろうか。

「なぜ人間がいる?」

「すみません魔王様。」

「かなり強いらしいな。俺が相手をしてやろう。」

魔王か。多分ディルドネよりは強くないはずた。あれは史上最強って話だからな。


 とはいえ強すぎだろなんとか受け流せてはいるが。明らかに劣勢だ。

「なんだ。大したことはないな。」

「なぜ今更になって精霊界を攻める。」

「たかだか1500年でこの恨みがなくなるか。魔族の中でも長命な種族たちは忘れもしない。魔王ディルドネ様の敵うちだ。まずはお前を殺してやる!」

「お前たちの完全な八つ当たりじゃないか!」

「もういい。死ね!」


 くっそ。本気で死ぬ。結構長く剣を交えてわかった。勝てない。飛び道具やらなんやら試しても勝てる気がしない。



、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、


『厳しそうだね。』

あれ?魔王と戦ってたはずなんだけど?

『ここは神域ってやつかな。僕は創造神ってやつだ。フィローネの母?父?ってやつでもある。』

心読めるのか?

「なぜここに?」

『僕が呼び出したからだよ。約束を果たしにきた。』


約束?なんの?


『ジン君に聞く。このままだと精霊界は滅ぶ。君が死ぬ代わりに精霊界を助けることができると言ったらどうする?』

「それはもちろん頼みます。」

『そうか。やっぱりそういうと思ったよ。じゃー剣聖オーランとの約束を守ろうではないか。ジン、君の意識は消滅するその代わりオーランの意識をそこに復活させる。それがオーランとの約束さ。始めは記憶を残せって言われたんたけどそれは流石にできないから条件を付けさせてもらったんだ。』

「どうして今だったのですか?」

『精霊界とフィローネが危険で自分じゃどうなもならない時にっていう条件だったから。君たちを気に入ったからサービスをしておこう。ジン、サヨナラ。』


意識が消えていく。精霊界は任せますオーラン。


『久しぶりだね。オーラン。』

「ああ、そうだね。神様も元気そうで何よりだ。」

『サービスで君も精霊にしておいた。フィローネと一緒にいてやってくれ。これは僕からの頼みだ。今まで寂しい思いをしていたからね。神が死んでからより一層ね。』

「わかった。でも約束通りにしたならピンチなんだろ?」

『そうだね。でもこれは聞いておいたほうがいい。君は精霊剣王オーランだ。世界の法則を変えておいた。世界の役割を果たしてくれよ?』

『わかった。約束するよ。』

満足そうな神様の顔を見ながら意識がぼやけていった。


、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、


「はははっどうした。死ね。」

また魔族か。やはりあの時滅ぼしておくべきだった。フィローネの意見を押し通してでも。しかも対精霊用のやつじゃないか。カリウスも久しぶりな気がするな。死んでたからそんなに経ったと思わないはずなのにな。まぁーいいか。

「お久しぶりです主。」

?剣が喋った?訳がわからん。

「精霊剣カリウスです。オーラン様早く倒しましょう。」

「お、おう。」

魔王ディルドネに比べると大したことはなかった。あれは化け物だったからな。あれと戦った時は死にかけた。


とりあえず兵器をっと。本気で剣を振った。なんか出た。なにこれ目の前にいたはずの魔族達が死んだ。


とりあえず戻るか。今、体を見るとまんま僕だな。ジンってやつの見た目かと思ってたけど。


「……オーラン様?」

「どうして?いやおかしい。」

「フートン、ユーフォン久しぶりだね。フィローネも。」

「どうして生きておられるのですか?」

「神様との約束でね。あれ?フィローネは?」

「今は神様から世界の法則改変の知らせを受けておられます。」

「そっか。魔族軍は全滅させておいたから。」

「ジン様はどこに?」

「僕とジンってやつが入れ替わった。ごめんね。ジンともいろいろあったでしょ?」

「いえ、オーラン様貴方に会うことより嬉しい事はありません。フィローネ様も私達精霊はそう思っております。」

「そう?よかった。あっ!フィローネー久しぶり!」

「お、オーラン。本当にまた会えた。」

「泣かないで?ね?」

「うん。そうだ世界についてみんなに言わないと。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 この日世界の法則が変わった。精霊剣王が振ることで精霊剣というのができるという法則。今までのオーランの転生者でも同じだった。よって世界中でできた。その剣は喋ったり特別な力を持った剣。


そして新たな精霊の王。精霊剣王オーランが誕生した。

読んでいただきありがとうございました。

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