【序章 もしあの時うまく言えていたら 僕らはここにいなかったのだろうか】
『もしあの時うまく言えていたら 僕らはここにいなかったのだろうか』
2055年の日本
捜査が難航している"国被連続殺人事件"の捜査に駆り出されたのは3人の連続殺人犯だった。
殺人犯3人を纏めるように言い渡された
1人の女性刑事 野崎 多香子
彼女は手探りで捜査をするが、彼らと関わるうちに彼女は過去の事件の大きな渦に巻き込まれていく。
※性的描写をつけておりますがとても僅かです。種類が特殊なためデリケートな方はご注意下さい。
【序章 その言葉は誰が言うか】
2055年
日本社会は様々な問題を抱えていた。
少子化による人口減少が恐ろしいスピードで加速し、極端な少子高齢化社会に。
結果前代未聞の税収の悪化、様々な行政サービスは崩壊。
そのため行政による弱者救済は消滅していき、一掴みの人間だけが富を得て救いようのない不況が一般市民を襲う。
その不況による影響で凶悪犯罪の増加。
警察は数多くの犯罪捜査が限界に来ていた。
その結果政府が打ち出した新たな取り組み それは既に逮捕され収監されている犯罪者に捜査協力を仰ぐ事だった。
その取り組みの名前は「受刑者協力特殊捜査」略して「受特」と呼ばれるこの捜査は決して表には出さず、模範的な受刑者を刑務所内で内密に呼び出し捜査協力させる。
担当官を配属し事件解決までのしばらくの間担当官が直接面談を繰り返し受刑者の知識や経験から捜査のヒントを得る。
殺人犯であれば殺人犯の心理が、詐欺師なら詐欺師の手口が、その他にも逃亡犯の心理状況など各犯罪経験者は予測可能な範囲が広いことから受特は今まで停滞していた捜査を格段に早くさせた。
捜査に協力した受刑者は減刑や待遇の改善、一定の制限を守れば欲しいものを得られるなどそれ相応の報酬が渡される。
新しく受特の担当官となった女性が1人
彼女は野崎多香子
彼女が担当した「受特」は入り組んだ過去の凶悪事件を再び陽の光の元にさらけ出した。
触れるべきでは無かったかもしれない事件の蓋が再び開いた。
それは誰も知らないままでよかったのかもしれない。
まるでドミノ倒しのように一つ動き出せばそこからは誰にも止められなかった。
『因果』と言う言葉だけでは纏められない。
時として人は何の為に残酷になれるのか。
この出来事の中で『どうして?』そう叫びたかったのは誰なのだろう。
誰にもわからなった。
最後まで誰にもわからなかった。