5話―初イベントは割と早い
投稿遅くなったので長めです
……来た。
ついに……来たのだ。
何度も夢に見た、日々妄想ばかりしていた、絶対に来れないないと思っていた異世界に……
感動で涙が出そうだ。どうせ周りに誰もいないしいいと思う。もうそのくらい感動していた。
女神に会った時も興奮したが、今のはそれ以上だ。興奮で鼻血が出そうなくらいだ。
現在俺がいるのは街の外。堅牢な壁で囲まれた街の周辺にある森にいる。さほど遠くないだろう。いきなり上空とか海とかに転送されなくてよかった。
街に行く前に、俺の格好を確認しておく。転生特典の装備がちゃんとあるか、顔はどうなっているのか、気になるのだ。
側に水溜まりがあった。あれで見よう。
駆け寄ってワクワクと見てみる。水面に移ったのは……
「おおっ!美少女!」
まごうことなき黒髪の美少女であった。
髪は墨を流したように真っ黒く、腰までは届くロングヘアー。
目は黒曜石をそのまま嵌めたような輝くような漆黒。
そして顔は、あの女神ともタメを張れるほどの、これでもか!と整った顔立ち。身長は160ほどでちょい高め。
俺が見た女性の中で、最上位に可愛かった。ありがとう女神!俺お前に初めて感謝したよ!
ちょっと眺めていよう。自分の顔なんだからどんなに眺めてもいいとか最高だ。
3分ほど色んなポーズを決めて終わりにした。また今度やろう。
次は服だ。上着は軍服っぽい黒いフード付きのコートだ。所々白いラインが入っている。中はピシッとしたシャツ。コートを羽織っている感じだ。うんうん、カッコいい。
なんか海外版新撰組みたいだ。結構柔らかい素材だが、防御力は期待していいと思う。
そして……ちょっと期待していた胸だが……あるにはあった。
だが、その……なんか非常に残念だった。
シャツの上からギリギリ分かる程度だ。目測だが、BかCあたりだろう。巨乳好きとしてはちょっぴり残念だ。
(い、いやいや!スレンダーだし!隠しやすいから良しとしよう!これならさらしを巻く必要もないだろうし…………なんかすごく虚しい)
おっぱい問題は忘れて下半身を見てみる。
上着と同じく漆黒の袴。実際に着てみると、袴寄りのガウチョパンツみたいだ。
若干女性っぽい。誤魔化せるだろうか。
靴はやはり黒いブーツ。ここまで黒で統一していると逆にオシャレだ。黒の組織と勘違いされないだろうか。
(そして……分かっていたが……やっぱ寂しいな)
この世界に来てから、感覚で分かっていた。
やはり……息子は消滅したようだ。
自分で女にしてくれと言ったので、理解はしていたが寂しいものは寂しいのだ。ある意味では人生を共に歩んできた相棒なのだから。
(ありがとう息子よ……お前のことは忘れない……代わりにこいつが相棒になるから……)
そう思って見たのは、腰。股に下がっていた息子という名の聖剣ではなく、腰に下がっている、マジの剣。《虹龍》だ。
ドキドキしながら、刀を鞘から抜く。
現れたのは──真っ白い刀身。俺の服とは対極的な、雪のごとき純白の刀身。
「おぉ……」
思わず感嘆の声が出る。それほどまでに流麗だった。
鍔と柄は淡い虹色。こちらも超がつくほどキレイだ。そして《虹龍》の数少ない虹要素だ。
刀を鞘にしまう。鞘も刀身と同じ混じりけのない白。そこに淡い虹のラインが入っている。もう全部キレイだ。俺が持ってるのが勿体無いほど。
(ん?俺、今少しも無駄な動きなく鞘に入れたな。なんでだ?……あ、そうか。《絶剣》のお陰か)
《虹龍》の付与スキルだったはずだ。すっかり忘れていた。
剣術習得ってこんなとこまで習得するのか。すごいな。
だが、このスキルは無意識でも発動するので、頭と体が独立したみたいになる。この剣術に慣れるために、ちゃんと修練しなくては。
(問題は、誰に教わればいいのかだが……地道に《絶剣》の動きをトレースしていくしかないか)
どんな強力なスキルがあっても、使いこなせなければ意味ないのだ。
強くなるには、努力する他ない……世のチート主人公共に聞かせてやりたい言葉だ。
これで、見た目の確認は終了。スキルの確認もしたいが、後でいいだろう。
「よし!じゃぁ今度は町だ!」
そう言って俺は、すぐそこに見える街に方向転換した。
♢
さて、門まで来たのはいいが、この後どうしよう。
こういう計画性の無さは直した方がいいな。今思うことでもないが。
門の前には当然と言うべきか、兵士がいる。それも数人。
どうやって突破すべきか……。ここで武力行使はタブーだ。危険人物として指名手配されてしまう。
少し経って良い設定を思い付いたので、あくまで自然に木の陰から出る。フードを被って。
「少しいいか?この門を通りたいんだが」
「ん?通行証は持っているか?」
いつも通りの口調でいく。女であることはバレたくない。自分から女になっといてなんだが。
通行証がいるのか。関所みたいだな。
当然だが通行証なんて持っていない。だから考えた設定を言う。
「いや、持っていない」
「そうか。なら、残念だが通れない」
「どうしても駄目か?村から出稼ぎに来ているんだ。皆俺が頼りなんだ」
そう、これが俺が考えた設定。『村から出稼ぎに来てるから通してくれない?作戦』。
どうだ。これなら通してくれるだろう。同情を買ってくれるだろう。
俺が心の中で自画自賛していると、兵士が口を開いた。
「なるほどな…。ちょっと待っていてくれ。隊長に許可をもらってくる」
ん?隊長?そんな人来てるの?ま、まぁ大丈夫だろう。その隊長も分かってくれるはずだ。
「…………通行証のない通行人はお前か」
「え?あ、そうだ」
しまった。油断していた。そして計算ミスがあった。
……隊長さん、超怖い。
まんまヤクザだよ。絶対関わっちゃいけない雰囲気醸し出してるよ。
(ど、どどどどうする?この人分かってくれるか?こんな強面が慈悲を見せてくれるのか?)
俺が内心動揺していると、隊長さんが低い声で言った。
「お前、この街でなんの仕事するつもりだ?」
「えっと……冒険者を」
「そうか……」
冒険者の存在は、俺も情報で知っている。魔物狩りなどのクエスト、薬草採集などのボランティア活動みたいなこともしている仕事だ。
この職業が、一番魔物を狩りやすい。それに気風も自由で、俺に合っている。
装備もそれっぽいし、問題ないはずだ。
隊長の答えを待っていると、また低音ボイスで言った。
「……無理だな。諦めろ」
「え、えぇっ!?どうしてだよ!?」
な、なぜだ!?この隊長、やっぱ人の心がないのか?やっぱヤクザなのか?
俺の質問に隊長は答えてくれた。
「どうしてって……お前、女だろうが」
あーなるほどー。そういうことか。女ってバレちゃってたか。
いや、まだ挽回できる。その理由だけなら。
「俺、男なんだけど」
「む?そうか?だとしても、そんな細っこい腕じゃ冒険者なんてできそうにないからな。分かったら別のとこに行け。この街は冒険者の街だからな」
そ、そうなのか……。い、いやいや!諦めてなるものか!
異世界に来て初めてのイベントなんだ。負け戦で終わるものか!
「じゃぁ、どうやったら通してくれるんだ?」
「まだごねるか……そうだな。あの木、切ってみせろ」
そう言って指さしたのは、俺がさっきまで隠れていた木。そこそこ大きめの、斧で斬り倒すには数週間かかりそうな大木だ。
周りの兵士の皆さんも口々に「無理があるだろ……」「やっぱ隊長怖ぇ……」「出稼ぎ人にも容赦ねぇ……」とか言っていた。俺も同じ気持ちだ。
そんな兵士たちを一睨みで黙らせて、隊長は確認してきた。
「で、やんのか?やらんなら村に帰れ」
「……いや、やってやるよ」
そう言って俺は大木に歩いていく。堂々と。
……しかし、内心焦っていた。
(どうしよう……見栄はって頷いてしまった……これ、切れるだろうか)
近くまで来てみるとやっぱりデカイ。これは斧なら1ヶ月以上はかかる。
刀も魔法も使ったことのない俺が斬れるもんじゃない。
(いや!弱気になるな!剣は《絶剣》があるし、魔法も簡単だったじゃないか!大丈夫だ。いける)
覚悟を決め、《虹龍》を抜き、構える。すごく様になっていた。
そして、くる前にもらった情報を思い出す。
……魔法とは、火の玉を生み出したり、氷の槍を作ることもできる。しかし、本質はそこではない。
魔法は「己のイメージを魔力を使って現実に持ってくること」。つまり、魔力とイメージさえあれば使える。
俺はこれを見たとき「なんて大雑把なんだ」と呆れたが、今はその大雑把さに感謝だ。それなら魔法初心者の俺でも使える。
自分の筋力、脚力、腕力、あらゆる身体能力を強くする。
……実際こんなことせずとも、魔力を持っている人間は、常時身体能力が向上している。全身に魔力を行き渡らせれば良いのだから。
《癒しの神》によって大幅に魔力が増大している俺なら、わざわざ魔法をかける必要もなかった。
だが、そんなこと俺は知っている訳もなく、全力で魔法をかけてしまった。それが唯一の過ちだ。
「『身体強化』!」
自然に頭に浮かんだ魔法を叫ぶ。自分の力が飛躍的に上がっていくのが実感できた。
俺はそのまま、溜めに溜めた横薙ぎの一閃を放つ。
「はあぁぁっ!!」
──直後、あたりに旋風が起こった。
「何っ!?」
「オワッ!」
「何が起きた!?」
隊長さんも兵士さんたちも驚き声をあげる。俺が被っていたフードも脱げた。
爆風はすぐに消え、静寂が満ちる。
大木は──切れていなかった。
「……ふん。あれだけやっといて斬れてねぇか……んじゃ、約束通り、とっとと帰って……」
隊長の言葉は途中で切れた。
大木が、ミシミシと音をたてながら後ろに倒れていったのだ。
やがてズズンと大きな揺れが起き、大木のキレイな年輪が姿を見せた。
ついでに後ろの木も軒並み倒れていた。ドミノのように。
「ふぅ……できたか……どうだ、これでいいか?」
「っ…………、しゃぁねぇ。良いぜ。通らせてやる。冒険者でも何でも好きにしろ」
隊長がそう言うと、兵士さんたちが大きな歓声をあげ、俺に詰め寄ってきた。
「お前すっげぇな!どこにそんな力あるんだよ!」
「その年でこれって……将来が楽しみだなぁ!おい!」
「その剣なんだ?刀身がないぞ?」
「え?ちょっ、落ち着いて!つーか態度変わりすぎじゃないか⁉️」
いきなりフレンドリーに話されたので戸惑ってしまった。でも、すごいものを見て興奮するのも男の性か。
「うるせぇぞ、お前ら。早く持ち場に戻れ」
隊長がそう言うと、兵士さんたちは去っていってくれた。「今度酒飲もうぜ!」と最後に誘われた。
「ったく……おい、どうした。早く入れ」
「ああ、どーも」
「つかお前、やっぱ女じゃねぇか。さっきのは嘘か?」
しまった。フード脱げてたのすっかり忘れてた。顔見せてしまった。
慌ててフードを被り、訂正しておく。
「男だよ!」
「そ、そうか……」
納得してくれたようで良かった。この人結構物分かりが良いかもしれない。通してくれなかったのも、俺の身を心配してくれてたみたいだし。
人間、見た目で判断しちゃ駄目だな。
「ありがとな」
「これが仕事だ」
無愛想な隊長にお礼を言って、俺はやっと初めてのイベントは終わった。
やはり異世界に来れて良かった……今すごく充実している。来て一時間も経ってないけど。
……なんて感傷に浸っていたら呼び止められた。割と暇な隊長だな。
「お前、名前は?」
「ん?えーと……」
別にひねる必要もないか。元々外国人っぽい名前だし。
「レイだよ」
「そうか……じゃぁな」
「あぁ、じゃ」
最後に手を振って、俺はその場を後にした。
感想、とても励みになります!
ブクマ登録もね!どっちもありがとうございます‼️
……あと、すんません。結構修正しました。タイトルも。




