3話―装備は直感で決めよう
武器の名前考えるの楽しい
中二フィールド展開っ!
「じゃぁ次は武器だな」
「それなんですがね。装備と一緒に選んだ方が良いですよ。揃えることで相乗効果を得られるのもありますから」
そんなのもあるのか。ゲームでよくある、装備一式揃えることで追加効果ってのが、転生特典にもあるのか。
「というわけで、ホイッ」
「おぉっ。すごいハイテクっぽいな」
俺の目の前にモニターが現れた。実態を伴っているわけではない、近未来なやつが。
「候補は多いですが、ちゃちゃっと選んじゃってください」
「ちなみにどれくらいあるんだ?」
「覚えてません」
「おい、女神が覚えてないってどういうこった」
そこまで多いならもう直感で決めるしかない。
俺は画面をスクロールして探していく。なんだか未来のショッピングをしてる気分だった。購入しようとしている物はすこぶる物騒だが。
(こんなに数あるのに、検索機能もないとは不親切な……そういうところは昔だな)
……それから3分ほどスクロールしてったが、「これだ!」というのはなかった。もう指も疲れてきたがまだまだ底が見えない。
「あの~そろそろ決めてくれませんか~?もう疲れてきたんですけど」
目の前の女神は何もしてないくせに悪態をついている。終いには頬杖をついてあくびまでしている。もはや興味はないらしい。
そんな駄女神を恨めしく思いつつ、頑張ってスクロールしていく。
……すると、なんとなく他とは違う雰囲気のやつがあった。
(ん?これは……)
書かれていた名前は《虹龍》。
虹と書いてあるのに、上は軍服チックな黒い服。下も同じく真っ黒の袴みたいなズボン。虹要素は欠片もなかった。
しかし、それよりも異彩を放っていたのは、セットの日本刀……なのだが、明らかにおかしかった。
──刀身がなかったのだ。
「へーそんなのあったんですか。《虹龍》……遥か昔に存在した虹色の鱗を持つ龍から神が作った刀……私こんなの作りましたっけ?」
いつの間にか女神が覗いていた。しかもこの装備はこいつが作ったらしい。自分で作ったなら忘れるなよ。
ややあって女神は思い出したように手を打った。
「あぁ!あれですか!昔会いに行った時記念にくれた鱗と爪から作ったやつですか!無くしたと思ってたらこんなところにあったんですね」
こいつとその龍と知り合いなのか。記念にもらったなら無くすなよ。そして貰い物で武器作るなよ。
「おい、この刀、刀身がないんだけどどうなってんだ?あとなんで黒いのに虹なんだ?」
「え?ちゃんとありますよ?見えないだけで。あ、そっか。持ち主にしか見えなかったんでした」
なるほど、だから俺には見えないのか。
実態はあるが他者には見えない……虹の逆だな。
「黒いのは……なんででしたっけ?たしか……えっと……忘れました!」
そう言ってテヘペロ顔して見せるニワトリ女神。駄目だもうこいつは。
まぁ仮にも神自身が作ったのなら、そんな変な物は使ってないだろう。……いや、こいつなら分からん。
そんなことを考えてると、女神がズイと体を寄せてきた。なんか期待してる目だった。
「ビビっときちゃいました?こいつが俺を呼んでいるって感じがしますか?ならこれにしましょう!直感大事ですよ!」
どうやら飽きてきたので早く終わらせたいらしい。
……確かに俺はビビっときていた。こいつが俺を呼んでいるという感じも若干した。性能など関係なく、理性ではなく本能が、こいつを選べと言っている。そんな感じがしたのだ。
もう俺は僅かな逡巡もなく──これの名前を口にした。
「こいつ……《虹龍》にする」
「はい!お買い上げ~お金はとりませんが。では、情報送りますね」
スキルの時と同じように情報が流れ込んでくる。
《虹龍》
『黒夜の軍服』・『漆黒の袴』
能力»
物理攻撃耐性・気温変化耐性・対魔法耐性・身体能力強化・魔法強化・精霊、悪魔系統攻撃無効
神器《虹龍》
能力»
身体能力強化・魔法強化・精霊、悪魔系統特攻
付与スキル《絶剣》
能力»
身体能力強化・動体視力強化・剣術習得・軌道予測
『切り札』
⬛⬛⬛⬛
おぉ、さっきよりも多い。
やっぱりなんとか耐性とかが多いのは防具だからか。虹龍からは作ってなさそうだったが、超ハイスペックだ。
刀の方には付与スキルなんてのもある。《絶剣》か……カッコいいな。内容もちゃんと強い。
剣術習得がありがたい。俺は剣なんて握ったことないので、どうしようかと思っていたのだ。剣は木刀しか持っていない。押し入れでホコリを被っているけど。
そして……切り札。これがなんかモザイクがかかっている。なぜだ?そんな過激な内容なのか?
俺が疑問に思ってると女神が言ってくれた。
「あー秘匿されちゃってますね。神器ともなると、非常に気難しくなるんですよ。神器に認めてもらわないと、この切り札は見れませんし使えません」
気難しいって、武器にも性格とかあるのか?神が作った物ならあり得なくもないか。
「要は認められれば良いんだろ?なら頑張るよ」
「気難しい人はとことん気難しいですから、どうなるかわかりませんが。頑張ってください!」
話せれば早いんだが、多分喋れないだろう。
焦らず手探りでやっていこう。
さぁ、最後。女神が言った「その他」だ。
「ではその他です。私のオススメは──」
「いや、いい。もう考えてある」
「お、そうですか。今回は早く終わりそう良かったです。で、何にするんですか?」
決まっている。それは俺が「異世界に行きたい」という夢の次に願っていた夢。
別に異世界に行くにあたって障害になってもかまわない。
その他なんだから、少しくらい欲望忠実でもいいだろう。
俺は満を持して言った。
「俺を──女にしてくれ」
辺りに静寂が満ちる。あれだけうるさかった女神が初めて黙った。笑顔のままフリーズしていた。
……いや、この反応は予想できていた。さすがの女神でも、俺がこんな特殊性癖を持っていたとは思ってなかったようだ。
にしても、ここまでフリーズするか?そんなにキモかったか?
一応息はしてるし、ほっとくか。
……その後、女神が再起動したのは10分後だった。
そんなにキモかったか?
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