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38話―幽霊にもちゃんとご挨拶

 バタンッ!


「「!!」」


 扉が閉まった音。

 強く力任せに閉めたような感じの。

 ということは……


「……レイ、持ってかれた?」

「何がだ!?何が持ってかれたのだ!?」

「ゴ、ゴゴゴ幽霊(ゴースト)って、ほら。霊体をヒョーイってやっちゃうんじゃないの……?」

「それは知らないが……待て。仮にそうだとするのなら……レイは……」


 ……


「「レイー!!」」


 もはや恐怖など忘れて階段を駆け上がる私たち。

 さっきまでガクガク震えていたのが嘘のように、軽やかに上がることができた。ドタドタと登ったせいで埃が舞ったが、今はそんなこと気にならない。


「レイー!いるー?」


 明かりはアズ姉に任せ、どこかの部屋にいるかもしれないレイにも聞こえるように大声を出す。

 しかし、返事を戻ってくることはなかった。


「……ルーン、一瞬目を閉じていろ。『外界照射アラウンド・フラッシュ』!」


 閉じた瞼の向こうが輝いた。

 アズ姉のスキルで強化された光魔法。他の人がするのより強力だし、使い勝手が良いものが多い。

 これのおかげで2階全体が昼間の外のように明るくなった。最初から使って欲しかったけど、アズ姉は戦闘以外じゃ魔法を使いたがらないから仕方ない。

 なんにせよ、もうそこまで怖くない。

 まだドア開けたら何か出そうなのは怖いけど!


「ルーンは右を、私は左を行く。聞こえなかっただけかもしれないが、光は部屋にもいったはずだ。もう怖がる必要はない」

「うん、分かった!」


 雰囲気が変わっただけでこうも気持ちが変わるとは思わなかった。

 右の通路に走り、角を曲がったところで足跡を見つけた。

 ここから埃がうっすら被っている。階段のはもっときれいに払えていた。


(魔法を途中で緩めた?歩幅も小さいし、何か身構えてたのかな……?)


 足跡は、手前のドアを通り越して奥のドアに続いていた。

 そこまで急いで走ると、そのドアののぶに手形が着いていた。

 間違いない。レイはこの中にいる。

 いつもなら少しは躊躇するが、私は怖いなんて考えずにドアを開けた。

 すると中は……


「──え?」


 ──中は、人が二人ほどしか入れないような、書斎で……。

 そこに、レイの姿はなかった。



 ♢



 バタンッ!


「チッ!」


 激しく舌打ちする。

 あのまま行っていれば、手をドアに挟んだかもしれないが掴めたのに!


「誰だ邪魔しやがったのは!」


 体が落ちていく浮遊感などいざ知らず、足を掴みやがッた不届き者の方を振り返る。

 すると視界に映ったのは──青白いもやのような体で、顔の形が歪に変形した、人のようなナニカだった。


「───!」


 顔からサーッと血の気が引くのが分かる。口からは声にならない悲鳴がこぼれ、思考が吹き飛ぶ。溺れる時のような本能的な恐怖。

 心臓がうるさい。そのせいで思考がまとまらない。

 そんな恐怖の渦にもみくちゃにされている最中、そのナニカが俺の足を握っている手の力を強めた気がした。


「アグッ……!?」


 その瞬間、恐怖とは別に、本当に血の気が抜けた。捕まれた右足から、一方的に血を抜かれたような不快感。

 一瞬全身の力が抜けるが、おかげで恐怖から抜け出せた。


(こいつ、魔物……じゃあないな。パッと見幽霊(ゴースト)っぽいけど、実体があるからな)


 確かに足を冷たい手で握られる感覚があった。

 つまり、こいつは幽霊ゴーストではないのか、俺のイメージする幽霊とは違うのか。

 どっちにしても、この幽霊が俺を襲ってるのに変わりはない。

 ……って、


「うっわ!?そうだ落ちてんじゃん!よく気付かなかったな!つーか何でお前は貼り付いて重力に従ってんだ!」


 言葉は通じない幽霊にツッコむが、返事は『aaaaa、aaa……』という変なうめき声だけだった。

 とにかく、一旦体勢立て直してこいつをひっぺがすしかない。


「『飛翔(フライト)』!んで、こうっ!」


『飛翔』で生まれた推進力を利用して、一回転してから遠心力で幽霊を吹っ飛ばす。……と思ったが、特に意味はなかった。接着でも着けたのか。


「ちっ、重力に従ってるんじゃなくて俺に張り付いてるのか。美少女の足にしがみつくとか、良い趣味してんなっ!『炎弾(ファイア・バレット)』!」


 体勢が安定したおかげで、魔法が撃てる。

 生み出した炎の弾丸を10発、ゴースト擬きの脳天に当てるが、霧に拳を入れたように突き抜ける。


「うーん、物理利かない、魔法効かない。無理じゃん」


 ある程度いつもの思考が戻ってきたが、そのせいで無理という結論に至った。

 そもそもゴーストってどうやったら撃退(バスター)できたんだっけ?映画見たことないから分からんが、掃除機とか持ってなかった?


「緑帽子のマンションゲーか、それは。……ぐっ、あ……またか」


 再び襲った不快感。さっきから何されてるんだ。

 本当に血を抜かれている訳ではない。なのに異常に足が冷たい。

 ……あれ?


「なんか、濃くなってね?」


 さっきまで普通の霧くらいだった幽霊(仮)が、高原の朝に出る濃いめの霧くらいまで濃くなっている。

 物理攻撃がきかない、血を抜かれたような感覚、その後に濃くなった……。

 もしかして──そういうことか?

 そんな安直な……ことはあるな。この世界だもんな。

 いや、問題はそこじゃない。仮にそうなら俺には逆に難しいことになる。


「やってみるしかないな。もうあの感じはこりごりだし。……ああ、ダメダメ。イメージは最小限で……『爆発(エクスプロージョン)』」


 岩を破壊したような威力はない、爆竹1.5倍ほどの小爆発。

 わざとこうした。こうしなくてはいけない、はず。

 さあ、どうなる……。


『a,aaaaaaaaaa!aaaa!』


 小爆発が直撃した左目にあたる部分を手で包み、のたうち回る幽霊。

 今まではなかった、確実にダメージを与えた。


「よっし、大成功!」


 こいつはおそらく、()()()()()()()()()()()()()。……多分。

 まだこいつがこの世界の幽霊(ゴースト)と決まった訳ではない。けど、これより幽霊っぽい奴もいないと思う。

 話を戻すと、こいつには当たり前だが肉体がない。なのになぜこうして存在しているのか。この世界で説明できる物は魔力くらいしかない。

 血を抜かれたような感覚は、魔力を吸いとッたものだと思う。俺だって譲渡はできるんだし。


 そしてそれなら、物理攻撃がきかないのも納得がいく。『炎弾(ファイア・バレット)』がきかなかったのは、俺の発動方法の問題だろう。

 魔法はイメージと魔力、両方を必要とするが、どちらかをどちらかで補えば通常通り発動できる。

 例えば、イメージがきちんとしてれば、魔力の消費量が少なくて済む。その代わり、イメージを固める時間がかかる。

 逆に、イメージを最低限にしても、その分を魔力で補填してやれば、問題なく発動ができる。一長一短というわけだ。

 そして俺は前者。イメージを最大まで固めて魔力を最低限にしている。その場の状況にもよるが、対魔物ならこれだ。

 そのせいで、弾丸そのものに魔力がろくに籠っていないから、この幽霊(ゴースト)にはダメージがなかったのだ。


 さっきの『爆発(エクスプロージョン)』には、イメージを適当にして魔力をたくさん使った。だから自らの魔力を他の魔力で壊されてダメージを与えられたんだと思う。ダメージを受ける原理はまだ定かじゃない。

 長ッたらしく説明したが、要は純粋な魔力のみで叩けば倒せる。


「ハハハハハ!初手からさんざんビックリさせてくれやがって!さっさと成仏しろ!『魔弾(マナ・バレット)』!!」


 今度は魔力のみで錬成した弾丸。イメージをなくすより手っ取り早い。

 ……それと、少し細工もしておいた。

 弾丸は幽霊(ゴースト)の胸辺りに着弾。そして、


「aaa!!!!」


 勢い良く弾けとんだ。

 濃い魔力に触れると、弾丸の魔力を発散するイメージを付けておいた。

 点ではなく内側から面で攻撃できる。


「よし。やっと幽霊(ゴースト)撃退(バスター)完了!これで今の状況が確認でき……」


 倒せて気が抜けていたのか。

 周囲の景色を視界に入れた瞬間──絶句した。

 しかし、それは恐怖ではない。

 ──驚き、と感激だ。


 そこに広がっていたのは、本だった。

 全部本。視界全てを埋め尽くす本、本、本。

 どこを向いても、360度、本が敷き詰められている。

 だめ押しとばかりに、上にも、下にも広がっている。

 ……うん?上下?


「円柱状になってんのか、半径は……だいたい20メートルってとこか」


 ドア開けた時に10メートルくらい先に見えたけど、気のせいか?

 それとも、結構落ちたから円錐形なのかな。

 というか、よく気づかなかったものだ。皮膚の感覚だけで感じ取れそうな気もする。本の気配を。


「1,2,3,4……10段ごとにランプあるけど、下も上も続き過ぎてて全長が分からんな……」


 そう、それだ。

 上下って、何だよ。

 いやそもそも、ここは屋敷の中だったはずだ。こんな広大な空間あるはずないし、なんならどこの家にもあるわけない。

 しかも上下となるとまずない。感覚的に2分ほど落ちたが、それでも底が見える気がしない。

 となると……


「異世界に転生したあと、異世界に転移、か。1人の人生に1回ずつ来ることなんてないと思ってたけど、やっぱ試してみないと分かんないな……」


 もう感慨にふけるしかないよな。

 どちらかと言うと、俺は転移より転生の方が好きだったし、したかったので、転移しても転生時(あのとき)ほどの喜びはない。

 ぶっちゃけ、転移よりも本だらけのこの空間に対する喜びの方が大きい。

 スイーと本棚に近づいていき、至近距離で本を観察する。


「かーなり古いな。本も棚も。持ったら崩れんじゃないの?」


 ムルクスのギルドの書庫も古かったけど、こっちはもっと古い。

「200年前のものやで」って言われても驚かない。いや驚くわ。

 でも持つの怖いな……。あ、そうだ。


「むむむむ……『観念動力(サイコキネシス)』!」


 某見えざる手的な感じで本を取り出す。生身より力加減がしやすい。

 そうして取り出された本は……うん。


「題名は擦りきれてて、中身も……ダメっぽいな。そりゃあこんだけボロけりゃムリだよなぁ」


 残念ながら見れるほど良い状態で保存されてないようだった。

 ここが下ら辺だからか?下にいくほど年代物になってくみたいな……。

 謎だらけだ。ひとまず、上に行って入ったドアを探そう。

 そう思った矢先のことだった。


「!!! 何だ!?」


 背後から蝕まれるような悪寒を感じ、咄嗟に振り向く。

 これはあれだ。入る時にドアから漏れ出ていた魔力と同じ。

 そこにいたのは……


『A,aaaaaa,aaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!』


 無数の幽霊(ゴースト)

 全身の毛穴から冷や汗が吹き出す。

 だが、今度は動けなくなることもなく、全速力で上に逃げた。


「ヤバいヤバいヤバいヤバい!!あれはマジでヤバい!怖さもだし、あんなのに魔力吸われたら一瞬で干からびる!」


 とは言っても、『飛翔(フライト)』の全速力だ。軽く新幹線くらいの速さはある。

 どう頑張っても、あの幽霊軍団が追い付ける速さじゃない。

 そう余裕をこいて、チラリと下を見ると、


『AAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!』

「うわああああああああ!!!」


 全然追い付いてた。更には段々と近づいてる気がする。

 待て。こっちはこれが全速力だぞ?もう上げる余地ないんだぞ!?

 いや、こっちが上げられないなら、あっちを落とせばいい。

 そういう判断に至り、速度をキープしながら幽霊軍団の方を向く。


「……『魔弾・散弾マナ・バレット・ガドリング』!!」


 数十発用意した『魔弾(マナ・バレット)』。

 先ほどのように細工はなく、ただ大きくした。

 これでかなりの足止めになってくれるはずだ。


『aaaa!!』

「なっ!?嘘だろ!?」


 弾が当たる直前、真ん中のデッカイのが吠えた。

 それを合図に、襲ってくる弾丸の前に幽霊(ゴースト)が数十体集結し、デカイのを守った。


(統率の取れてる幽霊(ゴースト)とか聞いてない!そんなの無敵じゃん!幽霊って1人で襲ってくるもんだろ!?こいつらセオリーってのを知らんのか!)


 そう心の中で愚痴を溢すが、もちろん聞いてくれるはずもない。

 だけど、もうそろそろドアが見えるはずなんだ。そこに入れさえすればおさらばできる。

 それまでに逃げ切ればいい!


(まだか、まだか……!本だらけでゲシュタルト崩壊でも起こったのか……!?)


 いや、ホントにおかしい。

 もう絶対たどり着いてるはずだ。なのに一向に見える兆しがない。

 ……閉じ込められたのか?


「ああっ、クッソ!もうどうにでもなれ!『魔弾(マナ・バレット)』!!」


 やけくそになり、幽霊軍団に弾丸を連射する。


『aaaaaaaaaa!!!』


 だが、分厚く幽霊を重ねられ、デカイのに届かない。

 あれを倒せば統率者がいなくなり、勝手に散らばってくれると思うが……。

 そうこうしているうちに、あちらが俺の射撃に慣れてきた。

 弾丸をかわし、徐々に距離を詰めてくる。


(くっ、『飛翔(フライト)』の維持が……)


 集中力が切れてきた。いよいよマズイ状況だ。

 一匹の幽霊(ゴースト)が、俺に向かって手を伸ばしてくる。


「このっ!」


 それを撃ち落としたところ、その後ろ……ちょうど死角になっていたところから、もう一匹出てきた。

 1秒以内に『魔弾(マナ・バレット)』は撃てない。

 文字通り打つ手がない。


(あがっ……!?)


 触れられた場所から魔力を吸われる。

 全身から力が抜け、魔法も維持できなくなる。

 そのまま俺の体は、幽霊の元へ落ちていく。


(これ……死……)


 死を覚悟した。

 が、



「───ふむ、レギオンか。珍しいね」



 そんなのは、その声で掻き消された。


「へ……?」


 足を釣竿で釣られたように、体を持ち上げられ、宙に放り出される。

 そこに一瞬映ったのは……


「ここまで上がってくるなんてね。よほどこの子にご執心か」


 短い髪、だけど両サイドの髪だけが長い不思議な髪型。

 その色は若葉色で、地球でもこの世界ですら見ない珍しい色。


「ボクも暇じゃない。さっさと終わらせてもらうよ」


 左目は青色だが、右目には片眼鏡があり、こちらはランプの光が反射してよく見えない。


『aa,aaaaa,aaaaaaaaaaaaaa!!!!!』

「ハハハッ!活きが良いねえ。そうこなくっちゃ、ボクもやる気が出ない」


 何より特徴的なのはその格好だ。


「じゃあね。……『魔道砲(ソーサリー・カノン)』」

『aa……』


 彼女の手のひらから放たれた青い奔流が、幽霊の軍団を悲鳴すらあげさせずに消し飛ばした。

 つまり、今の攻撃が全て彼女の魔力ということ。


「ケホッ……まったく、埃が多い。白衣が汚れてしまうじゃないか」


 そう、白衣だ。

 彼女は地球の研究者が身に纏う、裾が膝裏まで着くような白衣を着ていた。

 その中は、タイトスカートにワイシャツという。

 絶対に、この世界では着ることも見ることもないであろ佇まい。

 その本人は、いつの間にか『飛翔(フライト)』で浮いていた俺に向き直り、その美貌でニッコリと笑って悠然と名を告げた。



「やあ、迷子ちゃん。ボクはフェルモーネ・ストレザ・ダ・ヴィンチ。

  ようこそ。ボクの大図書館へ」


『は~~蜘蛛子可愛い~、つか悠木碧さん可愛ええ~

え、んだよ、また後書き?ペース早くない作者。勉強しろよ勉強。

はーい見てる~?みんなの美少女レイだよ~。……何?本編とキャラ合わせろ?

本編もだいたいこんな感じだろ。

あーハイハイ告知ね。えーと、次の話の後、ちょーっとだけ本編休んで、キャラ紹 介を入れるらしいぞ。1号はこの俺。ムフフン。……あーあとロウゼンも。

まあこの作者だし、本当にやるかはまだ分かんないけどネ。

そんなわけだから、次の話をお楽しみに!』




「……ねえ、ボクは?」

「次で目立てるから、ね?」

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