34話―光の騎士
第二ラウンド、スタート。
「はぁっ!」
「ふっ!」
今回は当てるつもりでいった。が、それは団長も同じだ。
もう防御に徹する気は失せたようだ。
踏み込んでから、薙いだ剣がぶつかり合う。
そして……俺が吹っ飛んだ。
「うわっ!」
空中で体を捻って着地する。
手がジンジン痺れている。岩にぶつかったかのような衝撃だった。
(本人の固さ……いや硬さだな。魔法かスキルでも使ってるのか?)
魔力の反応はなかった。てことはスキルになるが、こちらも可能性は薄い。
完全な憶測だが、聖騎士と言われる人が、防御特化のスキルなのか?と、俺の勘が言っている。
多分今のは剣術の範疇。まだ団長は本気を出していない。
(じゃあ、そのスキル使わざるを得なくなるまで粘る!)
加速時間を限界まで抑えて、瞬間的なスピードを上げた斬撃。
立体機○装置のように跳び、刃を突き立てる。
「くっ……!」
身体強化により、もう吹き飛ぶことはない。
だが、衝撃は俺の背後で地面を抉っていた。俺はよくこんなエネルギー量を押さえ込めたものだ。
実際、かなり体は痛い。それに比べて、涼しい顔をしてる団長を見ると、改めて技量の差が分かる。
『飛翔』で地面を蹴り、空中で前転して団長の背後に回る。
体は逆さまだが、そのままバッドを振るようにして首を狙う。
当たり前のように背を向けたまま受けられるが、そんなこと想定内。
身をよじって姿勢を戻し、脇腹に渾身のソバットを放つ。
「ぐっ!?」
腕で防がれたが、団長の体は地面を擦りながら数歩分動いた。
剣だけの勝負とは最初から思っていない。使える物は何でも使う。それが冒険者流だ。
腫れた左腕の痺れを取りながら、団長は指摘を飛ばしてきた。
「どこまでも、冒険者らしいな。ベテランでもここまでしないぞ」
「そりゃどーも。Cランクでもやる奴はやるよ。俺の友達とかその過剰な例だな。何度反則ギリギリをしてきたことか」
「……Cランクでそれか。これからが末恐ろしいな」
「俺なんて、スキルと魔力量の暴力だ。自分の力は1割くらい。才能がないのがコンプレックスだよ」
「はあ……謙遜は過ぎると欠点となるぞ」
「スキルが強いのは分かってるから謙遜じゃないでーす」
「似てるな、ルーンに」
お喋りはここまで、と団長は剣を構え直す。
そんなに似てないと思うんだけどな。って、気を散らすな。
そろそろ集中がキツくなってきた。早めに決着をつけたい。
ルーンにやったのと同じ、爆発で相手の剣を吹き飛ばす。けど、正直見込みは薄い。ちょっとやそっとの爆発じゃ、団長が剣を離すには至らない。
──少し乱暴しないとな。
俺と団長が、同時に動いた。
もう何度も見た、この後は俺が吹き飛ぶか、つばぜり合いした後に俺が変な攻撃に出るか。
後者なのは言うまでもなし。変な攻撃とか、俺の得意分野筆頭だ。
ガキン!と刃が衝突し、さっきのように背後の地面が衝撃で割れる。
「踏ん張れよ」
「!」
「──『重力反転』」
途端、俺と団長がいる場所の地面が爆散した。
♢
──予想外だった。
一介の冒険者がここまで食らいついてくることも。
少し程度を見るつもりが、ここまで熱くなってしまったことも。
……今、自分の足が地に着いていないことも。
「くっ……!」
浮いている。というよりは、弾き飛ばされた。本来足を受け止めるためにある地面が。
レイが唱えた詠唱の意味はわからない。だが、今は早急に体勢を整えなければ。このままでは、ろくに受け身も取れない。
──だが、そこで異変は起こった。
(どういうことだ……!?)
…………何もできない。まるで体全てが鉛になったかのように。
0.1秒にも満たない瞬間が、決定的に遅れを取った。
眼前に、剣を振り上げたレイがいた。
(しまっ……!)
いつの間にか元に戻った腕で防御し、剣を握る右手に有らん限りの力を入れる。弾いてくることは目に見えていたから。
籠手にレイの片刃の剣がぶつかり、魔法を呟くと剣から火の粉とともに鈍い衝撃が腕を殴打した。
せめて真下には落ちまいと、爆発が当たる場所をズラす。
かろうじて受け身を取ったが、やはり多少のダメージは避けられんな。
籠手もひび割れている。初の取り替えか。
「一合ごとに話してたら試合もクソもないと思うんだが、よくここまで粘るなぁ、もう疲れたよ」
「そうだな。あと、その言葉遣いは少し直せ」
絶対に嫌、と断られた。その様子に何度とないため息をつく。
実際、私はもうこの少女をルーンの仲間として、これ以上ないほど認めている。こいつよりも良い人材はいないだろう。
なのに、なぜ試合を続けているのか。
それは本能だ。騎士として、いや剣士として、私はここに立っている。決着がつくまでやり合いたいというのは、押さえようもない衝動なのだ。
先程、レイはかなりの大魔法を見せてくれた。全力でぶつかりに来てくれた。
──なればこそ、私も全身全霊でそれを受け止めなくてはならない。
今までとは打って変わり、突きの構えを取る。
スキルなど、剣の試合では使うつもりはなかったが、これはもうただの試合ではなく真剣勝負だ。
全てを出すのが筋だ。
「──突き立て──《光輝之神》」
♢
いやー、途中まではうまくいったと思ったんだけどなー。
『重力反転』の発動はうまくいった。
前々から重力関係の魔法は試してた。その中でギリギリ制御できたのがこれ。重力を反転させるだけ。
物体には全て重力っていう下向きの力がかかっている。それを逆向きにする。以上、この2つの工程のみ。
なくしたり、大きくしたりするのは、残念ながらできなかった。知識不足が恨めしい。
これは浮かせる魔法ではない。弾き飛ばす魔法だ。地面そのものが、自分をぶっ飛ばしてくる。さっきは少し対象をミスったから、地面も少し吹き飛んだんだけど。
汎用性も優れているが、デメリットも結構大きい。
まず、魔力要求量が大きすぎて俺以外は多分使えないし、俺でも連続使用はきつい。物理法則をねじ曲げる魔法だから当然だが。
二つ目に、人間相手には長時間発動しすぎると、上に上がりすぎて落下時に最悪死ぬ。団長だから大丈夫でしょ、とは思ったが心配だったので0.3秒くらいにとどめた。
それでも、防御不可能なので団長もしっかりぶっ飛んだ。
俺はそこに並走して、体の自由が利かない内に地面に打ち落とした。それでも真下には落ちないあたり流石だ。
魔力切れで『飛翔』は発動できない。地面に降りて、とどめに入ろうとしたところ…………
──とんでもない悪寒が背筋を走り抜けた。
見たのは団長の突きの構え。王国正統派の剣術にはない構え。
それを見た瞬間、生存本能というか、何かが危機を感じた。このまま何もしなければヤバい、と。
そこで動いたのは俺ではなく、《絶剣》だった。突きを繰り出すほんの直前に、思いっきり真横に飛んだ。
……そして次の瞬間、俺がいた場所に一筋の強烈な光が貫いた。
(は!?)
見れば団長の大剣の先端が眩く輝いている。あそこから放っているらしい。
そこまで思考した時、一拍遅れて物凄い衝撃波が全身を襲った。
吹き飛んだが、地面に手を着いてスライディングで勢いを殺した。
十分すごいが、これは副産物だ。本命は光の方。実体のない光を放っただけなのに、この衝撃。恐らく集束しまくった光を対象にぶつけるスキルだ。魔法でこんなことできてたまるか。
さながら破壊光線だ。避けてなかったらマジで死んでたな。
(ああ、なるほど。だから聖騎士ね)
聖なる光を放つ騎士、そこからついた名が聖騎士か。安直な。
……あれ?そういや、団長どこ……!
背後に強い気配を感じ、反射で回転して剣を振り抜く。
が、確かにそこにあった気配は消え、剣は空を切った。
(移動した!?どんな速さだよ!)
姿が確認できない。もう素の剣術は捨ててきてる。
俺の動体視力で追えない速さとか、音速なんて軽く超えてるんじゃないか?
中段構えで何もできずにいると、突如真正面から剣が走った。
「! くっ……!」
光の矢と同じく、この斬撃も爆風が遅れてやって来て、紙くずのように俺を吹き飛ばした。
バウンドを繰り返したが、ダメージは少しだけ抑えた。全身がめっちゃ痛い。
だが、構えていなかったら今頃俺は輪切りにされていた。常人なら剣ごと輪切りにしてると思う。改めて神器に感謝だ。
まだいける。そう思って立ち上がった、が……
「──私の勝ち、だな」
「……はーーあぁ。くっそ……完敗」
大剣の先が、俺の首筋の手前で止まっていた。
いつ目の前に来たのかは分からない。同じ超速の攻撃なのに、これは衝撃波など微塵もない、歩くよりも静かに間合いの内側に入られた。
完膚なきまでの敗北。
「あ~~~悔し。ここまで良いようにされたのは初めてだよ」
「悔しいのなら、リベンジはいつでも受け付けるぞ?」
「もうちょい先だな。毎日こんなことしてたらこっちの身が持たない。ルーンともやんないといけないし」
「それはほどほどに、な」
生返事を返すと、戦闘のせいで大変なことになった地面に大の字になった。
気が一気に緩んで、疲れも一気にやって来た。体動かん。
「あ、合格で良いんだよな?」
「ああ。非の打ち所がないほどにな。……ルーンを、よろしく頼む」
「……任されたよ。正直、団長が何と言おうと、意地でも認めさせてやろうって思ってたからな。スムーズにいって何より」
「そうだな。それと、私のことは名前で呼んでいい。団長と呼ばれるのは実はあまり好かん」
「聖騎士さんがいいのかねぇ。ま、分かったよ。改めて、これからよろしくな、アズさん」
「さん、も本当は良いのだぞ?」
そう言って、笑いながら差しのべてくれた手に掴まって起き上がった。
ふらつきながら立ち上がると、ちょうどルーンが駆けてきた。
と思ったら、ジャンプしてそのまま抱きついてきた。
「良かった~!これでやっと公認だね!」
「まだ決まったわけではないのだぞ?優勝しなければまだ安心できない」
「そうだけど、レイに勝てる人なんていないと思うなー。もちろん油断はしてないけど、楽勝じゃない?」
「それを油断って言うんだよ。分かったらちょっと離れてくれ。絞めてるから、力強いから」
魔力がまだそんな回復してないから、体がミシミシいってる。
解放すると、ルーンは後ろに振り向いた。
「まあ、とりあえず二人が乗り越えるべきなのは……あっちかな?」
──そこには、怒り心頭の副団長が歩み寄ってきていた。
「「…………」」
「お二人とも」
その重低音ボイスに、反射的に正座する俺とアズさん。
そのくらい有無を言わさぬ声だった。怖い、何言われるか分かんないけどすごく怖い。
「ルーン殿の言う通り、途中までは良かったですよ?ですが団長、おっしゃっていましたよね?あくまで満足するかどうか、と」
「……そ、そうだったろうか……」
「そうでしたよ?何も本気を出したり、あまつさえスキルなんて使う必要ありませんでしたよね?」
さっきまでとは比べ物にならないほど、縮こまっている聖騎士さま。ルーンが忍び笑いを送っているから、それなりにレアなんだろう。
確かに、堂々としていたこの人が萎縮するのは面白……
「レイ殿」
「ハイッ!」
緩みかけてた気が、冷水に入ったかのように引き締められた。声も俺史上一番ハキハキしてた。
「団長が硬いのは私も承知しておりますし、怪我の心配はしておりません。ですが、魔法で轟音を出したり、訓練場の地形を破壊するのは、さすがにいただけませんよ?修繕費も国庫からなんですから」
「ち、地形破壊したのは、何も俺だけじゃ……」
「その説教は団長にもするのでご安心を」
「れ、レイ!」
……その後。
声を殺して大笑いするルーンと、気の毒というか「御愁傷様」って感じの騎士たちを横目に、小一時間説教を食らった。
そして俺は心に決めた。
──もう絶対に副団長は怒らせないようにしよう、と。
「さーさやっと投稿だ!後ろで作者が土下座してるぞー。
前の話結構伸びたんだよな。やっぱ俺パワーかな?それとも読者も戦闘シーン 好きなんかな?多分前者だな
実はな、話の構成ド下手なせいで、出したいキャラまだ全然出てないんだよ。 全員出たら、スライム倒して○00年くらいキャラ多くなると思う。そこまで続けられるか自信ないらしいけど。
作者も続き書きたいから、完結させたい!と思ってる心優しい君たちは、感想やれ評価やれを適当にぶちこんどいてくれ。作者単純だから」




