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30話―魔力供給って要は○○○

「というわけで、これからテルの特訓を始めまーす!イエーイ!」

「イエーイ!」

「い、いえーい」


 現在、俺たちはムルクス郊外の、この前の火山の麓に来ている。

 ここらに人は滅多に来ないし、無駄に広い。人に見られてマズイ物などないが、念のためだ。

 さっきからテルがそわそわしている。緊張してるのか。


「それでレイ。まず何からするの?素振りから教える?」

「いや、それは結構後になるぞ」

「じゃあ、何を教えてくれるの?」

「まずは………魔力の運用だ」

「えっ?」


 テルが首をかしげる。

 それはそうだ。テルは自分に魔力がないと()()()()()()()

 なのにどうすれば魔力を使えるようになるのか。


「でも、レイ。私魔力なんて………」

「それが勘違いだ。お前はちゃーんと魔力を持ってる。ほんの少しな」


 限界まで目に魔力を流してみる。

 ちょっと魔力量が多くて、ちょっと魔力操作が上手ければ、人が持っている魔力を見ることができる。

 見れば、テルの中にろうそくの火のような小さな光が見える。これが魔力だ。

 ちなみにこの『ちょっと』というのは俺基準だ。あんまり参考にしない方がいいと思う。

 テルのように、魔力を持っているのに自覚していない人は多い。

 これは中で燻っているだけで、実用には程遠いからだ。

 なら、それを実用できるまで増やせばいい。幸いそれをできる術はある………と思う。


「ルーン、ちょっと手握ってくれないか?」

「いいよー」


 握られた手に、ちょっと俺の魔力を細工して流し込む。


「ほい」

「ファぁっ!」


 ルーンが変な声をあげて咄嗟に手を離した。思わず吹き出してしまった。


「な、何したの!?なんかブアアってきたけど!」

「特に異常はないか?」

「な、ないけど………」


 よし。なら成功だ。予想は的中したらしい。

 まあ色々王道なこの世界だしな。


「さっきのは、ルーンに俺の魔力を渡したんだ。ちょっと魔力量増えてるだろ?」

「あ、ホントだ!すごい!でも、よくそんなことできたね」

「ちょっとした工夫だ。と言っても、確証なかったけど」


 よく、魔力の波長を合わせて魔力を譲渡する、ということがラノベでされる。

 割とそういうのは王道なこの世界なので、「ワンチャンあるんじゃないか」と思って実験してみたのだ。

 結果は成功。少し難しいけど、苦にならない程度だ。魔力操作が俺並なら普通にできる。

 ちなみに、ルーンにやったのは失敗しても頑丈なので耐えられるからだ。ここで言う『失敗』とは魔力を譲渡しすぎて大変なことになるやつのことな。

 ………あと、効率の良い『粘膜接触』というのがセットでよく出てくる。

 間違いないのが残念だ。確かに粘膜………具体的にどことは言わないがそこを起点にした方がロスが少ない。

 別にしたくないわけじゃない。全然役得だ。しかし、そうするとおかしな方向に(特にあのクソ女神が喜びそうな)関係にシフトするので絶対しない。

 何はともあれ、できることは分かった。じゃあ実践しようか。


「テル。お前に俺の魔力を渡す。だけどキツくなったらすぐに言ってくれ。いいな?」

「う、うん。分かった」

「いくぞ」

「うっ………」


 握られた手から魔力を流し込む。

 ルーンの時より慎重にやる。体の構造そのものが違うから。

 ろうそくの火くらいだった魔力が、焚き火程になった所で止めた。

 これ以上は今のところ危険だ。


「も、もう終わった?」

「ああ。どこも悪くないか?」

「うん。でもまだまだいけたのに」

「『まだ行ける、がもう危ない』っていう言葉があってだな。油断はしちゃいけない」


 これは薬と同じだ。

 適切な量を得れば益になる。しかし、少しでも多くなれば害になってしまう。

 幸い、魔力の譲渡は少ない分には問題ないので危険じゃない程度で止めておいた。

 それに、十分実用できるまで増やせた。


「テル、自分の中になんかあるのに気付けるか?」

「うん。真ん中で熱いのがぐるぐるしてる」

「それが魔力だ。じゃあ、それを体全体に行き渡らせるよう、イメージしてみてくれ」

「こ、こう?」


 む~っと体を少し力ませて、魔力で身体能力を上げる。

 今まで魔力を使ったことがないと、こういう作業が必要なのだ。

 厳密に言えば力ませなくてもいいのだが、初めてだしイメージしやすいのならそれで良い。

 中心にあった魔力が、ゆっくりではあるが全身に流れていく。

 無駄なく流れ終わった。だいたい一分くらいか。


「良い方じゃないか。前例ないから分からんが。んじゃ、これをすぐにできるよう練習だ。まずは半分ってところだな」

「うん!頑張る!」


 目をキラキラさせて張り切っている。

 この感じならさほど時間はかからないかもしれない。

 この反復練習の順番は、一回魔力を戻す→全身に渡らせるという工程のみ。

 簡単だけど、魔力操作の上達には丁度良い。俺も何度もやった。

 熱心に練習しているテルを微笑ましく見ていると、ルーンが呼んできた。


「ねえレイ。ちょっと聞きたいというか、確認なんだけど」

「どうした?」

「アズ姉の手紙来てたでしょ?あの中にさ………レイのこと書いてあったっけ?」

「………」


 硬直した。

 そういえば、俺に関しては何も書かれてなかったな。どうしてだろ。

 副団長はちゃんと書いとくって言ってたよな。じゃあ何で返事に何も書いてない?


「副団長はちゃんと出してたよね?なら………」

「た、ただのミスだって!副団長だってミスすることくらいあるって!人間なんだし!」

「それとも別に出してたから、到着が遅れてるのかな?王様宛てじゃなかったし、優先されてないのかも」

「き、きっとそうだよ!とにかく、心配する事ないって!」

「そだね。もしかしたら、宿に帰ったら届いてるかもね」


 そうだよ。心配なんかする事ないよ。

 団長は良い人っぽいし、文面から人の良さ伝わってきたし、字もキレイだった。


(心配なんかない。断じて仲間として認められてないとか、不審者扱いされてないかとか、そんなことはない。だって団長様だもの。心広いもの。何も心配ないよあの人なら。だよな?頼んだぞ!)


 突然降って沸いた問題に冷や汗をダラダラかきながら、その後の特訓を続けた。

 全然集合できなかった。



 ♢



「そろそろ終わりにするか。時間も時間だし」

「う、うん………明日も………?」


 へとへとになったテルが肩で呼吸しながら聞いてくる。

 まあ初日ですっ飛ばしたから無理もないか。


「明日は休め。回復しないと身が持たないからな」

「そういうレイは、今まで休んでるとこ一回しか見たことないよ?」

「俺は特別だからいーの」

「………ずるい」


 帰り道はテルをおんぶして帰った。その間も、俺は団長のことについて考えていた。


(遅れて手紙来る説が今のところ一番濃厚だ。帰ったらもう一回副団長に確認しよう。もしかしたら炙り出しかもしれないから、念のために………)

「レイレイ、明日暇になったんだよね?」


 俺が意味のあるようなないような考え事をしていると、ルーンに呼ばれた。


「そうだけど、明日どこか行くのか?悪いけど俺は行けないぞ」

「え~、どうして?」

「ムルクスの本屋に行こうと思ってな。アクロアより絶対蔵書数多いし」

「レイってホント本好きだよね。こないだも一日中読もうとしてなかった?」

「ああ、この世界の本ならそれもできるな」


 魔法関連の本は元より、神話、歴史、その他諸々のジャンルの本を読んでいる。

 時代が時代なので物語系は少ないが、それ以外でも全然面白い。地球のより数倍興味をそそられる。


「話反れたけど、それならテルちゃん、一緒に行かない?」

「いいけど、どこ行くの?」

「フフー、それはねー………」


 ゴニョゴニョと耳元で話した後、テルが「なるほどね、楽しそう」と呟いてから、二人揃ってニマニマと笑顔を向けてきた。


「な、なんだよ気持ち悪いな。俺の顔になんか付いてるのか?」

「別に~」

「?」


 妙に楽しそうな顔が少し気にかかりながら、宿に帰った。


「たっだいまー!」

「ただいま。副団長、ちゃんと休んでた?」

「ええ、もちろん。久しぶりでしたよ。しかし、これが後6日もあるとなると、少し厳しいですね」

「休日を厳しいって言うの多分副団長くらいだよ」


 仕事魔な副団長に呆れていると、テルがしきりにキョロキョロしてるのに気づいた。


「どうしたんだ?テル」

「………お姉ちゃん、どこ?」

「セルさんであれば、2階に。一月も牢にいたので、何か異常がないか部下で医術に心得のある者に診てもらいました。その結果、少し安静にしてもらっています」

「大丈夫なの?」

「心配する事はありません。目立って悪い場所はありませんから」

「じゃ、行こっか。そう言われても心配でしょ?」

「うん」


 ルーンがテルの手を握りながら、2階にパタパタと去っていった。

 お姉さん感を出したいのだろうが、精神年齢ではテルと良い勝負な気がする。本人には拗ねるから言わないけど。

 そこで、一番気にかかっていたことを副団長に聞いた。


「なあ、手紙ってもう一枚来てたりしない?」

「? いえ、王都からの手紙はあれ以外には」

「そ、そうか。じゃあ、団長個人に送った手紙はさ、到着が遅れたりとかする?」

「途中で事故がない限りは遅れることはありません。二枚とも、同時に出しましたので」

「じゃ、じゃあ!何かの間違いで団長に送った手紙だけ抹消されたりとかは!?」

「ございませんよ。何をそんなに必死になっているのですか」

「いいから!じゃあこれは───」


 それから、ありとあらゆる屁理屈を言って、あり得そうな物もあったが、結局『団長からの手紙に俺のことが書いてない問題』は解決しなかった。

 一応副団長にも事情を説明しておいた。


「なるほど、そういうことでしたか」

「俺、団長に嫌われてるのかな………」

「そこまで気に病むことはありませんよ。寛大なお方ですから」

「そっか………。そうだ、団長の名前って何ていうんだ?ルーンが『アズ姉』って読んでたんだけど」


 ふと気になったので聞いてみた。


「お名前は、アズリール・バーレンス。王国直属騎士団団長にして、聖騎士と謳われる方です」


 聖騎士とは、また中二病チックな二つ名だな。

 だがアリだ。俺の感性的には。

 聖なる騎士か。またあの女神が絡んでそうだな。


「ありがとさん。もう心配してないけど、万が一手紙が来たら絶対見せてくれ」

「もちろん」


 ひとまず、完全にではないにしろ懸念は一つ消えた。

 あとはあの二人のことだが………まあ、そんな気にすることもないか。

 さっきと比べて軽くなった足を、セルがいる部屋に向けた。

 むしろこっちの方が心配だった。

すみません(超土下座)

風邪ひいちゃいました。テヘペロ

……すんません。反省してます。風邪1日で直ったし。もっと早く投稿できたし。

今後も不定期なので、生暖かい目で見守ってください。

感想くれたら投稿頻度にブースとがかかります。

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