表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/39

26話―主人公は恥ずかしいセリフを吐いてナンボ

「フンフフ~ン。たっだいま~」

「ど、どうされましたか。妙に嬉しそうですが」


 ルーンの上機嫌はまだ続いている。

 帰り道は俺にベッタリだった。喜んでくれるのはとても嬉しいのだが、ここまでくっつかれると恥ずかしい。

 副団長にことの顛末を簡潔に説明した。


「なるほど。それは良かったですね、ルーン殿。あいつの作った剣は王都の鍛冶師よりも良い。私が保障しましょう」

「そういや同い年とか言ってたけど、あれマジ?」

「はい。私がムルクスに住んでいた時の幼馴染みです。それが何か?」

「いや………副団長っていくつ?」

「26ですが?」


 マジで!?

 いや老け顔にも程があるだろ。パット見四十代だぞ。

 衝撃の事実に俺が少し引いていると、喜びから戻ってきたルーンが今日のことを話した。


「久しぶりに来たけど色々変わってて楽しかったよ。………あ、あと奴隷商に目をつけられてた」

「あいつらですか………。その様子だと、何事もなかったようですね。何よりです」

「やっぱり副団長も知ってたか」


 聞けばムルクスの奴隷商はたった一つらしい。それもこの国で最大規模の。

 人混みを利用して、良い人がいれば何も音沙汰なく連れ去るのが常套手段のようだ。最悪のナンパだな。いや、もう誘拐か。


「あいつらのせいで何人もの人々が、奴隷として売買されています。騎士団として不甲斐ないばかりです」

「それでさ、副団長。明日の夜あたりにお礼参りに行こうと思うんだけど、どう?」

「………私としてもそうしたいのですがね………」

「え、できないの?」


 犯罪組織だよ?むしろ検挙しない理由が分からない。


「………はい。私たち騎士団は、正式な命令がない限り動くことができません。王族は賛成しているのですが、他の貴族たちが反対していまして………」

「ああ、奴隷を買うのは他国だけじゃないってことか」

「残念ながら。全ての貴族がそうという訳ではないですが、我が国の貴族の多くは、王に仕えているという自覚を持っていません。自らの領地における王だと思っています。ですから、汚職も奴隷売買も日常茶飯事なのです」

「よくある典型的クソ貴族だな」


 ラノベに出てくる貴族って、どうしてこう揃いも揃ってクズなんだろう。

 全部がそうと言う気はさらさらないが、この世界も例外ではないらしい。

 にしても、それなら騎士団は動けないってことか。


「王族なら押しきれそうな気もするけど、どうなんだ?」

「我が国は数年前から議会制を導入しておりまして。近代的にするのも考えものですね」

「無駄に民主的にしやがって。いや、貴族しかいないから民主的ではないか」


 王命が下ることはない。ついでに、奴隷商を潰したら貴族から目をつけられるかもしれない。

 後者はどうでもいいが、前者がないと騎士団の協力を仰げない。

 別に俺一人で行ってもいいけど、その場合失敗したらどうしようもなくなる。最悪、奴隷として売り飛ばされる。

 どうにか大義名分を得てカチコミかけられないかな。

 俺が口をへの字にして唸っていると、今までどっかに行っていたルーンが戻ってきた。どうやら剣を置いてきたらしい。


「どうしたの二人とも?難しい顔してるけど」

「いや、どうにかして奴隷商ぶっ潰せないかな、と」

「物騒なこと考えてるね………。う~ん、結構色んな人から恨み買ってるだろうから、私も何かしたいけど………」


 恨み、か。

 多分家族や友人、知り合いを奴隷として連れていかれたのだろう。

 その人たちのためにも、早く動きたいんだが………。

 ん、恨み?色んな人から恨みを買ってる、と………。へえ、なるほど。

 俺の口元に笑みが浮かんだ。もう癖になってるな。


「よしルーン。明日冒険者ギルド行ってみよう。俺の予想では、面白いものがある」

「その顔、何か思い付いた?」

「ああ。成功するかは怪しいがな」

「何をするかは分かりませんが、動く場合は私に一声かけてからでお願いしますよ」

「分かってる分かってる」


 さて、俺が明日冒険者ギルドに行って何をするかは、明日のお楽しみということで。



 ♢



 翌日、冒険者ギルドに来た。

 今回はフル装備。ルーンは念のためフードで顔を隠している。勇者が来たと騒がれるのを避けるためだ。


「おお、やっぱりムルクスのギルドは人が多いな」

「前に来た時よりも増えてるな………」


 ざっと見た感じアクロアの倍、もしくはそれ以上。建物に至ってはアクロアのものとは比べものにならない。

 さすがは王都に次ぐ大都市。スケールが違う。


(ここまで多ければ、Sランクの1人や2人いると思ったんだが、いないみたいだな………)


 そういえばSランク冒険者って変人が多いって聞いたことがある。ルーンはマシな方だそうだ。かなりだな。

 というか、


「ルーン、お前別に来なくても良かったんだぞ?俺がやるのは個人的に気にくわないからだし」

「そんな軽い理由なのは今知ったけど………。うん、私も同じ理由だよ。奴隷とか良くないと思うから一緒に来た」

「………分かったよ。あと、理由なんてそんなので良いと思うぞ。無理に探すよりはな」

「うん!」


 なんか、ここ数日で俺に似てきた気がする。気のせいかな。


「それで、どうするの?まさか直接言いに行くつもり?」

「そんな馬鹿なマネはしないよ。なにせ、表だって行動すれば消される」


 消されるというのはあくまで予測。あの組織ならやりかねないということだ。

 割と派手にやってるはずなのに、世間ではそこまで危険視されていない。知ってる人も少ないほどだ。

 何らかの隠蔽工作をしてないと不可能。

 例えばそう、敵が行動する前に潰すとか。

 ………ほら、見つけた。


(ルーン。声出すなよ。あと目線も俺に向けるな)

(う、うん。でもどうしたの?)

(あの角のテーブルにいる奴、多分奴隷商の人間だ。そうじゃなくても明らかに危険だ)

(そうだね。雰囲気が違う)


 冒険者は基本線、気楽でフリーダムな職業。

 なのに、あいつはずっと眉間にしわ寄せて周囲を警戒している。

 隠そうとしていないのは未熟なのか、あるいは脅しか。


(ああやってギルドで冒険者を見張っている。だから、目立った行動をすれば即おしまいだ)

(難しいね。じゃあどうやって準備するの?)

(………当てはあるけど、確証はないんだよな………)


 そう言うと俺は、ルーンを引っ張って依頼状が貼ってあるボードに向かった。なるべく気配を出さずに。


(多分ここにある)

(ボードだよね?こんなところにあるの?)


 ここのボードには神社のおみくじのように依頼状がひしめき合っている。人が多ければ依頼も当然増える。

 しかし、ここまで多いと何かと不便だ。

 ───()()()()()()()()()()()()ほどに。


(奴隷商は色んな人から恨みを買ってる。そうだろ?)

(うん、何度かそれで泣いてる人も見たもん)

(当然、その人たち自身じゃどうにもならない。それなら奴隷商が消えて欲しいと祈る。だが勝手に潰れることはない。ならばどうするか?)


 答えは単純。


(それができる人に、つまり冒険者に頼めばいい話だ)

(あ、なるほど!………でも、素直に依頼しても奴隷商に依頼状を消されるだけじゃない?)

(そこが問題だ。だけど見てみろよ)


 ボードには無数の依頼状。重なってるのも、もちろんある。

 ここから一つの依頼を見つけ出すのは骨だ。


(誰かの依頼状の後ろに隠せばいい。仮に奴隷商が来ても、そんな目立つマネはできない。今も、この中に眠ってるお宝があるはずだ)


 みんながみんな、奴隷商が怖くて何も行動できないということもあるかもしれない。

 しかし、繰り返すがここはムルクス。この国最大の商業都市。

 人が多ければ、それだけ勇敢な者も現れよう。


(よーし探すぞ!でもできるだけ目立たず、かつ正確に探すんだ!)

(結局難易度高いんだね!分かった!)


 もともと冒険者は依頼状の裏をめくらない。めんどくさいから。

 それをいかに自然にやるかが問題だ。

光学迷彩(インビジブル)』は実体を消すわけではないから使えない。人が少なければいけたのに。

 ………それから数十分。なんとか慎重に探したけど、見つからなかった。


(ないね………。まさか取りに来たのかな?でもそんなことしたら気付くよね………)

(………最悪、ギルドも取り込まれてるか………。いや、受付さんの様子を見る限りそれはなさそうだな)


 もしギルドが奴隷商側だったら、何もかもおじゃんだ。そもそもクエストに行けない。

 だが、受付さんはごく普通。少なくとも末端まで奴隷商側ということはない。


(奴隷商が冒険者に扮して依頼状を取ってるのが一番濃厚か。どうしようもないな)

(でも、それで済ませられないよ!なんとか見つけないと)

(俺もそうしたいが、時間切れだ)


 テーブルの端にいる奴が、少し警戒を強めた。

 そりゃ、こんなことせずともボードの前に何十分もいたら不審がる。しかもいつもは見ない顔なんだから。

 これ以上は危ない。なんとかルーンを説き伏せて出口に向かった。


(じゃあどうしようもないじゃん………)

(最終手段だが、大義名分もクソもなく、個人の感情のみを理由にして正面から潰しにいくってのもある)

(もうそれでいいよ!行こう!)

(ヤケクソになってんな………)


 今のところその手段を取るつもりはない。

 下手したら俺が犯罪者にされる。ルーンは勇者だけど、俺は特別扱いされない。

 明日もあるが、あの様子では見込みは薄い。

 ため息をつきながら外に出ようとしたところ、すれ違った少女がいた。十歳近くの、顔つきが整った少女だ。


(冒険者じゃないな。依頼人か?にしては随分と小さいけど………)


 なぜか、すごく深刻な顔をしている。周囲をキョロキョロしてるし、落ち着きがない。

 少し気になったので、すれ違い様手に握っていた依頼状を覗き見た。

 ………それが目に入った瞬間、咄嗟に少女の肩を掴んだ。


「えっ?やっ、離して!」

「しっ。安心しろ。俺たちは敵じゃない」

「レイ?どうしたの?」

「お前は昨日の食堂に行っててくれ。すぐ行くから」

「う、うん。分かった」


 パタパタと駆けていくルーンを確認した後、怯えている少女に向き直った。


「君、その依頼状をギルドに持っていかない方がいい」

「あ、あなた、誰ですか?奴隷商の奴らじゃ………」

「それはないから安心してくれ。ひとまず俺と一緒に来てくれ。その依頼、受けてやるから」

「え?あ、ちょっ!」


 このままでは信じられそうにないので強行策に出ることにした。

 すなわち、困惑する少女の手を引いて、ルーンが待っている禍々しい食堂へ走った。

 ………なんか、奴隷商になった気分だ。



 ♢



 路地裏に入り、『光学迷彩』と『飛翔(フライト)』を使ってダッシュした。

 その途中でルーンを見つけたので回収していった。


「あなたたち、何ですか。奴隷商ですよね」

「だからそれはないって言ったろ。少なくとも敵じゃないから」

「強引に連れ去っておいて何を今さら!」

「そうだよレイ!女の子に乱暴しちゃダメだよ!」

「お前までそっちにつくな!」


 まあ若干強引だったのは否定しない。でもあの場ではこうするしかなかったし………。


「ルーンも気づいてただろ?あそこ、奴隷商の奴がウジャウジャいたぞ」

「「え!?」」

「ルーンまで驚かないでくれない?」

「き、気が緩んでたから………」

「じゃ、じゃあ私を助けてくれたと………?」

「そういうことだ。言ったろ?『その依頼状をギルドに持っていかない方がいい』って。あのまま持っていったら確実に捕まってたぞ。分かったらそんな警戒するな」


 そこまで言うとようやく少女の緊張が解けた。

 確証があるまで、いつでも逃げられる体勢だったのは評価していいと思う。

 そして、その勇敢な行動も。

 彼女の持っている依頼状を取り上げて嘆息した。


「あっ………」

「『奴隷商を潰してほしい』か………。よくその歳、その体でこんなこと依頼しようと思ったな。下手すれば取っ捕まるぞ」

「それでも………私はあいつらを絶対に許したくない………」


 少女は歳に似合わないほど、顔にシワを寄せた。

 それは、深い怒りや憎しみによるものだろう。


「大方、奴隷商に家族か友達を連れていかれたか、そんなとこだろ」

「………うん。お姉ちゃんは、先月あいつらに連れてかれた………」


 少女が経緯を話してくれた。

 ざっとまとめると、唯一の親類である姉を取り戻したい、ということだ。妹がこの顔だ。姉もキレイなんだろう。だからこそ、狙われた。

 そこで泣き寝入りするのではなく、ちゃんと行動に出たのだから誉めていい。


「奴隷商の根城やれ、そこまでの経路やれ、よくもまあ1人でここまで調べたな。連中がお前を見張ってたのはこれが理由か」

「すごい。ここスラム街だよ。1人でこんなところに………」

「………私はどうなってもいいの。お姉ちゃんさえ連れ戻せれば………」


 姉妹愛が深いことで。

 報酬も高い。おそらく全財産をつぎ込んだのだろう。とても1人で稼げる量じゃない。

 この頑張りに、俺も答えてやりたい。

 ………だが、これだけは言っておきたい。


「お前、名前なんて言うよ?」

「………テル」

「テル。いいか。自分はどうなってもいいとか、姉さえ無事ならいいとか、そんなこと言うな。絶対にお前は生きろ。それが姉の願いなんだから」

「………」

「お前は強いよ。ほとんどの人が何もしない中、お前はその小さい体で頑張って行動に移した。誇らしく思っていい」


 自分ではどうにもならないと判断し、誰かにお願いするために危険を侵して調べた。

 それはこいつの強さだ。


「こっからは俺らに任せろ。お前の望み通り、奴隷商ぶっ潰して姉ちゃん連れて帰ってきてやるから!」

「………」

「だから、お前は笑顔で姉の帰りを待ってろ。その方がお前の姉ちゃんも喜ぶからさ」


 そう言って、安心させるように頭を撫でると、涙を目に溜め、それを振り払うように年相応の笑顔を浮かべた。


「うん!」


 それを見て、俺も笑いもう一度頭を撫でてやった。

 ………今まで静かにしていたルーンはというと………


「レイってそこそこの頻度で恥ずかしいセリフ言うよね。まだ一週間も経ってないのに何回聞いたか分かんないよ?」

「う、うるせえ!そんな言ってないだろ!せいぜい二回くらいだ!」

「恥ずかしがってるレイの顔ってすごく赤いよ」

「うるさい!」


 やっぱりこいつは黙ってた方がいい。そう再認識した。

 そんな俺たちの様子を見て、テルがクスクスと笑っていた。

皆さんメタいのは好きですか?私は大好きです!

ああいうのは気分次第でやります。要望あれば定期的にやります。

ブクマと感想、夜露死苦尾値画威死魔巣。(よろしくお願いします)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ