25話―人が多いとその分変人も多くなる
さっきの路地裏からかなり離れた場所に着地した。
というか、ここも十分路地裏である。
「こんな場所に店かまえて赤字になんないのかね」
地図では大体この辺なのだが、いかんせん建物が多くて見分けが付かない。
店名は分かるのだが、そもそも看板があるかさえ怪しい。
「ねえレイ。本当にここにあるの?」
「合ってるはずなんだが………お、あったあった。あの店だ」
俺が指さしたのは、『ルンド鍛冶屋』と書かれた店だ。
もう一回地図を見て確認する。ここで間違いないようだ。
「レイ、剣欲しいの?あんなすごい剣持ってるのに?」
「ん~、俺が使う訳じゃないんだけどな」
「?」
実際に使うのはお前だ、とはまだ言わない。少しでもサプライズさせたい。
(そういや、副団長に注意されたっけ。『かなり客を選ぶからお気をつけを』って。どのくらい選ぶんだろうか)
こういう店は腕が良いほど簡単には作らない、というのが定番だ。この店も例外ではないらしい。
物は試しということで、思い切って扉を開けた。
………入った瞬間、いきなりジロジロと見られた。思ったより若い、目付きの悪い青年だった。
「………」
「………」
「レイは何でいきなり睨んでるの?」
なめられないようにするためだ。
ここで怯えるようじゃ、剣を作ってはくれない。こちらに強い意志があることを証明しないといけない。
身長差があるせいで、俺が見上げる形になるのが癪だが仕方ない。
しばらくメンチを切り続けた。ちょっと疲れた。
「………用件は?」
「こんな店に来たんだから用件もクソもないだろ。剣を作ってほしい」
「………」
また黙りこくった。表情から考えてることがちっとも分からない。
そろそろちゃんと喋ってくんないかな。疲れたんだけど。
チラリとルーンを一瞥してから、ようやくちゃんと話した。
「………良いだろう。打ってやるよ。ただし、そっちの嬢ちゃんだけな」
………ほう。
いや、別に良いんだけどね。元々ルーンに振ってもらう剣だし。
だけど、俺には作らないと。ほー。
「ちなみに理由を聞いても?」
「赤毛の嬢ちゃんには才能がある。お前にはない。それだけだ」
へー、そこまでズバッと言うか。
確かにおれ自身に才能はねえよ。剣術も魔法も全部貰い物の才能だよ。
だがもう少しオブラートに包めよ。ちょっと傷つくだろうが。
俺がひきつった笑みを浮かべていると、先にルーンが口を出した。
「レイの悪口を言わないで」
「………悪口じゃねえ。事実を言っただけだ」
「それを取り消してって言ってる。レイは私と同じかそれ以上に才能がある。ないなんて言わせない」
これほど怒っているルーンを見るのは初めてだな。
怒ってくれることに感謝しながらも、俺はルーンの言葉を否定した。
「いや、ルーン。こいつの言ってることは事実だよ」
「でも………」
「俺の力は貰い物だ。何一つ自分で手にいれてない。でもさ───それがどうしたよ」
「え?」
「才能がない=弱いって訳じゃない。才能なんてなくたって勝てば相手の言葉なんてねじ伏せられる。だから、俺は別にいい。怒ってくれてありがとな」
「………分かったよ。レイは強いもんね」
誰しも平等に才能があるなんて綺麗事を言うつもりはない。才能なんてそもそもなくたっていいんだから。
ないのが問題なら世界にいる人々の大半は問題があることになる。
だけど………これだけは言っておきたい。
(貰い物の才能だけもらって、あとは何もせずそれに甘えているチート主人公はラージスラッグに囲まれて死ねばいいと思う)
この少々過激な発言は俺の胸のうちにしまっておこう。
「取り消せとは言わないよ。お前がなんと言おうと俺は強い。それだけは自信を持って言える」
「………わあったよ。お前の剣も打ってやら………」
「あ、それはいい。俺《虹龍》以外を普段使いする気ないし」
「………は?」
しまった。また店主の目付きが睨むものになった。
まあ事実だし。仕返しってことで。
カウンターへ行き、注文を始める。
「それで、どんな剣がいい。短剣か、長剣か」
「長剣でこいつに合うものを頼む」
「分かった。グリップは革でいいな」
この店主。ちゃんと話すと以外としっかりしている。この若さで店主になるほどなのだから、腕は確かだろう。
ちなみにルーンはさっきから置いてある武器を眺めてる。こういう話はあまり興味がないらしい。
「素材は何だ?鉄でいいか」
「ああ、素材は持ってきてる」
そう言うと俺は、バッグから一つ荷物を取り出した。
もう2日経っているにも関わらず、未だ燃えるように熱い、最高ランクの魔物の素材。
即ち───炎黒狼の爪だ。
「何だこれ?魔物の爪か?それにしては随分でかいが」
「ちょっ、レイ!?それ良いの?剣にしちゃって」
「良い良い。これのために取ってきたんだし。これ以外使い道ないし」
「炎黒狼の爪なんて、売ればいくらになるか分からないのに………」
「ん?炎黒狼?今、炎黒狼と言ったか。これは炎黒狼の爪なのか!?」
いきなり店主が声を張り上げてきた。
いきなり大声出すからびっくりしたぞ。そんなに驚くか?
「そうだけど………無理そうか?」
魔物といっても爪だからな。やはり剣にするのは難しいか。
少し不安になったが、それを店主の声が吹き飛ばした。
「無理な訳あるか!どんな硬い鉄だろうが魔物の爪だろうが、このルンド鍛冶屋に打てない剣なんてない!しかも炎黒狼だぞ!こんなチャンス二度とねえよ!ぜひ打たせてくれ!」
「お、おう。頼んだ………」
早口でまくし立ててきた店主に少し引いた。
そして代金を伝えることなく、熱々の爪を素手で持って作業場に行ってしまった。火傷するぞ。俺も魔法で包んで運んでたんだから。
一瞬顔だけ見せて、「夕方には完成する!」と言い残してまた引っ込んだ。よほど嬉しいらしい。
「………とりあえず、夕方もう一回来るか」
「………そだね」
時折聞こえる奇声に再度引きながら、俺たちはそっと店の戸を閉じた。
♢
道に少し迷いながらも、さっきの大通りの前に戻ってきた。
お昼時なのに人は減ってない。これでは飲食店に入れそうにないな。
「どうしようか。この感じじゃどこの店も埋まってそうだぞ?」
「屋台のあたりはまだ危ないしね。あ、なら私の一押しのお店行こう!あそこなら人も少ないし美味しいよ!」
「なら案内お願いな」
案内されて歩いた方向は大通りとは反対側。高級店街に行くのかと思ったが、やたら道をグネグネ曲がっていく。
さっきの鍛冶屋もそうだが、奥深くに店かまえても売り上げは上がらないぞ。
五分ほど歩き続け、ようやく到着した………のだが。
「ここだよ!」
「ルーン。ここホントに飲食店?怪しい実験室とかじゃなくて?」
目の前にあるのは、草のつる、葉っぱ、茎で覆われた建物だ。なぜかランプの色が紫。真っ昼間なのに暗くみえた。
到底飲食店とは思えないが、看板には『ピウヌ食堂』とある。残念ながらマジで食堂みたいだ。
「こんな見た目だけど、中は意外とキレイだよ。変なものも出てこないし」
「そ、そうか。なら、信じるぞ?頼むからな?」
「ども~」
「無視するな!」
………そこで、言葉を失った。
身の危険を感じたとかではなく、驚愕した。
(ええ………)
普通にキレイだった。
よくある飲食店だ。強いて言えばガ○トに似ている。いやガス○を侮辱しているわけではないが。
外装からは絶対想像できないキレイさだ。何でもっと外をキレイにしない。
「ね?キレイでしょ?」
「お前、どうやってこの店知ったの?」
「道に迷って適当に入ったお店がここだった」
「運良いな………」
勇者は運が良いのかもしれない。神の加護的な何かで。
店員さんも少ないがちゃんとしてる。つくづく外観が残念だ。
もちろんだが、客は俺らしかいない。隠れ家すぎるからな、見た目が。
「レイ何にする?私はこのミートドリアかな」
「やったらバリエーション豊富だな。何種類あるんだこれ?」
「迷っちゃうよね。そういうときは私みたいに直感が良いと思うよ!」
「う~ん。じゃあ野菜のカレーで」
「かしこまりました」
そうだ。店員さんに聞いてみようかな。失礼かもしれないが、気になるから。
「あの、このお店、外見どうにかなりませんかね。そうすればもっと客が来ると思うんですけど」
「あ~………実はですね。あれ、店長の趣味なんですよ。やめた方が良いと言ったのですが、聞いてくれなくて………」
「………大変ですね」
悪趣味すぎるだろここの店長。売り上げより自分の趣味を優先するな。
ムルクスのような大きな街だと、変な人も多いのかな。
♢
昼食で腹が膨れた。誠に遺憾だがとても美味しかった。ベルフさんの料理と良い勝負だと思う。
それから適当に時間を潰し、夕方となったのでもう一度鍛冶屋に来た。
「来たぞー。できたかー?」
返事は返ってこない。どうやらまだ作業中らしい。
しばらく待っていると、ゆっくりと作業場のドアが開けられた。
そして………中から尋常じゃない汗をかいた店主が這い出てきた。
「うわっ!?どうしたんだよ!死にそうだぞ!」
「………心配いらねえ。いつもこんなだからな………」
「よく死なないなお前………」
ふらつく店主に回復魔法をかけてやると、すぐ元気になった。タフだな。
あと気づかなかったが、右手に赤い鞘に入った長剣が握られている。
「完成した。今までで一番質も切れ味も持ち心地も良い剣だ。俺史上最高のデキだ」
そう言って俺に渡してきた。
俺はそれを持ってルーンへと向き直り、剣を差し出した。
「はいルーン。プレゼント」
「え、ええ!?いいの?これ。ホントに………」
「ああ。お前にあげるためのものだからな」
ルーンが使ってるのは普通の長剣だ。
安くて頑丈だから買ったものらしいが、もっと良いやつを使ってほしかった。
そこで、この炎黒狼の爪から作った剣をプレゼントしようと思ったわけだ。
「………ありがとね。一生大切にするよ」
「お、おい泣くなよ?ここで泣かれると色々と困るから………」
「う、うん!泣かない!だけど、これくらいは許してね!」
そう言ってルーンは俺に抱きついてきた。
このくらいならいつまでもしてて良い。俺もこうしてるのは幸せになる。
少しして離れると、ルーンは鞘から剣を引き抜いた。
刀身は珍しく赤っぽい黒。気のせいか仄かに炎を纏っている気がする。
「すごいキレイだね」
「嬢ちゃん、ちょっと魔力を流してみな」
「分かったけど………うわっ!」
「魔剣か。すごいな」
ルーンが剣に魔力を流した途端、刀身から炎が吹き出た。
魔剣とは魔力を宿した剣であり、所持者の魔力を流すことで能力が発揮される。魔物から作ると稀にできるらしいが、ここまでのは珍しい。
この剣の場合は、炎黒狼の能力をそのまま受け継いだらしい。セルフ『纏炎』だ。羨ましい。
ちなみに俺の《虹龍》は魔剣ではない。神器は魔剣にカウントされない、と本で呼んだ。
「剣の銘は自分で決めろ。俺は向いてない」
「うん。どうしようかな」
「じっくり考えた方がいいぞ。………ところで」
唯一の懸念点がある。とても大事なことだ。
「………おいくら?」
「あっ、私も出すよ!私のために贈ってもらった剣だし!」
「んっと………ざっとこんくらいだな」
伝票に書かれた数字を見て目眩がした。
0が何個あるか分からない。数える気にもならない。
しかし、ぼったくりではない。適正価格だ。これほどの剣だから当たり前と言える。
「………ローン組めないかな………」
「いつもなら即払いって言うが、今回は特別だ。タダにしてやる」
「………………え?」
マジで?
タダでいいの?ホントに?
ありがたいんだけど、少し申し訳ないというか………。
「俺も久しぶりに良い剣を打てた。気分も良いし、特別価格だ。感謝しろよ?」
「ああ、本当に感謝する。今度ムルクスに来たら、また素材持ってくるよ」
「私からも、こんな良い剣をありがとうございます。絶対毎日手入れします」
「おうよ。ジャンジャン持ってきてくれ。できれば店に置かしてくれ」
それは約束したい。もう剣を持つ気はないし、店の利益になってもらおう。
ルーンが剣を大事に抱えながら店を出た。
「じゃな。良いのが買えたよ。さすが副団長のお墨付きだ」
「副団長?ああオルバスか。知り合いなのか?」
「まあそんなとこだな。あの副団長を呼び捨てとか結構度胸あるな、お前」
「同い年だぞ、俺とあいつ。相変わらず老け顔なのかね」
え、同い年?こいつと副団長が?
一体副団長は何歳なんだろうか………。
疑問を抱きながら店を出ようとすると、呼び止められた。
「あーちょっと待て。………昼は悪かったな。確かにお前はつえぇよ」
「当たり前だろ。お前の目が節穴だったんだよ」
「うるせえ。また来いよ」
「約束するよ」
愛想は悪いが腕と気前は良い店から出て、ルーンと一緒に帰った。
帰り道、ルーンが超ご機嫌だった。
ここは、ブクマ100を祝う謎空間。そこに、レイとルーンがいる。
「ここから先!メタ注意だよ!」
「そう言ってる時点で既にメタいけどな」
♢
「ブクマ100おめでとー!イエーイ!」
「これが早いのか遅いのか分からないな」
「それもこれも私たちの可愛さのおかげだね!」
「顔の想像は読者にお任せしてるけどな」
「いつか絵を描いてくれる素晴らしい読者に会えるかもしれないじゃん!それまでガンバロ!」
「そうだな。それまで続くといいな」
「大丈夫だよ!作者は見切り発車でこの作品書き始めて、このあとの展開考えるので忙しいけど、きっと続くよ!」
「不安しかない」
「ところでさ。100ごとにこんなことしてたら本編にまで影響及ぼさないかな?ジャンルに『メタ』が入ることにならないかな」
「これだけでも十分ジャンル『メタ』なのに本編にまで出てきたら、作者が収集つかなくなる。その可能性は低いだろ」
「メタって結構リスクのあるジャンルだもんね。そもそもギャグラノベの『こ○すば』もメタには手出ししてないよね。そう考えると『ポプ○ピ』とか『○魂』って勇気のある作品だよね」
「異世界人のお前が地球の作品の話するなよ。世界観壊れるだろ。あと他作品の名前を出すな」
「世界観なんて気にしてたらメタはできないよ。あと作品名にはモザイク入れてるから問題なし!」
「………消されないかな」
「と、いうわけでブクマ100いきました!ありがとうございます!」
「これからも『憧れの異世界はテンプレですか?』をよろしく頼むな!」
「「じゃあ、また次回で!」」
「………こういうの疲れるね」
「そうだな」




