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24話―商業都市 ムルクス

 早朝、目が覚めるとルーンがいる。

 いつもなら跳ね起きて戦闘態勢に入るが、今回は驚くことはない。横にいるのは知っている。

 しかし………美少女という生き物はなぜ寝てるだけで絵になるんだろうか。

 性欲とか性欲とか性欲とかは自分が女の体なので湧いてこないが、男のままだったら確実に襲っている。

 ルーンは寝顔だけは、いつもの元気さは見えず、儚ささえ感じられる。寝相は悪いのになぜか体勢は普通だ。これを襲わなかったら男じゃない、もしくはホモだ。

 とはいえ、いかに性欲が湧かないといえど、変な気持ちにはなる。性欲とは別のものだ。ずっと見ていられるが、そろそろ起こすか。


「ルーン。起きろ。朝だぞ」

「ん~まだねしゃせぇて~」


 呂律が回ってない声で拒否してきた。

 次いで俺の腕に抱きついてきた。薄手のパジャマしか着てないから、おっぱいの感触がもろに感じられる。

 おのれルーン。こうすれば時間が稼げると踏んだか………全くもってその通りだ!3分間待ってやる!

 ………3分たった。宣言通り起こそう。


「はい。もう起きろ。あと腕をどかせ」

「む~………分かった」


 不満そうな声だが、むくりと起き上がった。今日もアホ毛が立派だった。

 しかし、まだ腕をほどいてない。それどころかさっきより力が入っている。


「ルーンさん?早く腕をほどいてほしいんですが………」

「………昨日の仕返し………」

「いや、あれは俺悪くないだろ?」

「………私が勝手に仕返ししてるだけ」


 この様子じゃ解いてくれるのは少し後になりそうだな。

 今日は炎黒狼(ヘルハウンド)を討伐した日の二日後だ。それからムルクスの高級宿に泊まった。今いる部屋もそこの一部屋だ。

 昨日は何もしていない。何もする気が起きなかった。

 たくさん魔法を使ったのが原因だが、魔力がなかった訳じゃない。魔力ならその日のうちに回復していた。

 なのだが、気持ちは別だ。精神力と集中力をすり減らしたので1日だらだらしていたかったのだ。誰しもあるだろ?そういう日。

 ちょうど昨日は、報告やれムルクスの貴族に呼ばれ、とかで自由時間なんてなかったし、もともと俺は留守番だった。

 一応ルーンもその貴族のとこに行ったらしいが、「つまんなかった」としか言わなかった。あの感じは本当につまらなかったようだ。勇者という職業柄、断るのも難しいらしい。

 討伐の話をさせられ、パーティーもしたらしい。ルーンのおしゃれが見れなかったのは残念だ。

 なのだが………帰ってきたらひどく甘えてきた。早々抱きついてきたし、頬擦りまでしてきた。冗談抜きでつまらなかったようだ。

 そこで発生したルーンがいう「昨日の仕返し」とは………


「風呂くらいでそんなに拗ねるなよ」

「それ言うなら、一緒に入るくらい別に良いじゃん」


 そう。風呂に一緒に入ろうと言い出したのだ。

 女の子同士ならそこまで問題ないだろうが、生憎と俺は真性の女の子じゃない。

 何度も言うが、俺は性欲はそんな湧かない。

 だが、心は男子高校生だ。俺からすれば同年代の女の子と風呂に入るに等しい。俺基準では完全にアウトだ。

 それに拗ねて機嫌を損ねたので、妥協策として一緒に寝ることにしたのに、まだちょっと不機嫌だ。


「今度プレゼントしてやる物があるから、それでチャラになりませんかね」

「プレゼント!?やったー!なら許す!絶対だよ!」


 ようやく機嫌が直ってくれた。

 ちなみに、プレゼントというのは今突発的に言った訳じゃない。ちゃんと前から考えていたものだ。

 一階の食堂に降りると、副団長がいた。何もない日なのに騎士用のスーツだった。真面目な副団長らしい。


「おはようございます。ルーン殿、レイ殿」

「おはよう!」

「おはよう。他の騎士たちは?」

「それぞれの仕事についております。私も、先に王都に送る報告書を書いております」


 何もできなくて申し訳ないと思うが、俺らはそういう仕事は向いてないので任せるしかない。

 というか、俺はデスクワークなんて無理だし、ルーンにできるはずもない。適任はやはり騎士団なのだ。


「そうだ。その報告書って、俺のこと書いてるの?」

「いいえ。王城に送るものには。団長に送るものには書いておりますが」

「それ、大丈夫なのか?勝手に仲間になってましたーって言っても、怒られたりとか」

「心配ないよ。アズ姉……じゃなくて、団長すごく優しいから」


 アズ姉………確か団長って、ルーンのお姉さんみたいな人とか言っていたな。姉呼びするほど親しいらしい。

 団長と言い直したのは副団長の前だからか。

 どんな人なのか気になるな。


「迎えが来るのは三日後になります。それまでお二人はゆっくりしていてください」

「わーい!久しぶりの休みだー!もうめんどくさい会食とかはないよね?」

「今のところは」

「よし。じゃあレイ。街に出てみよう!ムルクス久しぶりだから、案内できるよ!」

「そうか。ならお願いしようかな」


 そう言うとルーンは一目散に部屋に戻っていった。よほど楽しみらしい。

 ………ルーンがいないし、今のうちに聞いておくか。


「なあ副団長。ムルクスで一番腕の良い鍛冶屋とか知らない?」

「私が知っている中で良いのなら。どうしてですか?」

「それはだな………ゴニョゴニョ」

「ふむ、なるほど………きっとお喜びになるでしょうな」

「だろ?」


 副団長から簡易地図をもらって、俺も部屋に戻った。

 気難しい店主じゃないといいな。



 ♢



 あの火山はムルクスの郊外だ。

 街の風景は山から少し見える程度だったが、スーリア王国一の商業都市とおうのは過言じゃない。

 この街は港町だ。他の国、他の大陸から様々なジャンルの商品が流れ込んでくる。

 それと同じように人もたくさん流れ込んでくる。渋谷のスクランブル交差点とも遜色ない人の数だ。どこぞの東京都知事が見たら「密です!」と言うだろう。

 ただ、東京のように歩きスマホなど見られるはずもなく、皆が話したり、商売をしたり、時には喧嘩もしている。全てひっくるめて、この街は活気に満ちており、発展していると思う。

 パッと見てこれだけ分かるんだ。隠れているものもたくさんあるだろう。楽しみだ。


「………一回目って、お前一人で歩いたのか?」

「うん、そうだよ。騎士団連れていったら変でしょ?あとあんまり動かないでよ。ぶれるから」

「そろそろ終わんない?」

「もうちょっと待って。力作になるから」


 ………俺らはまだ宿を出ていない。さっきの分析も窓から見たものだ。

 着替え終えたらドアを開けたルーンがいきなり、俺の髪をセットしたいと言い出したのだ。

 別にいいと言ったのだが、どうしても髪を結んだ俺を見たいそうだ。

 というわけで俺は今、ルーンに髪をポニーテールに結われている。ツインテールはさすがに拒否した。

 ポニーテールはアニメとかではよく見るが、割と難易度の高い結び方だ。それゆえ結構時間がかかる。

 ところで、俺はこの2ヶ月髪を切っていない。だからポニーテールも難なくできる。

 本当は戦闘時かなり邪魔くさいので切ろうと思い、フィナさんに相談したのだが、


『フィナさん。良い床屋知らない?髪切ろうと思うんだけど』

『ええ!?そのきれいな髪を切るなんて勿体ないですよ!今のままがいいです!レイさんにはそれが一番似合います!』

『お、おう………』


 すごい剣幕で言われたのでこのロングヘアーを維持している。

 ただ、結び方は知らないので今までずっと結んでこなかった。たまには良いかもしれない。


「よしできた!」


 ややあって完成したらしい。

 鏡を見ると、アニメでよく見る完璧なポニーテールだった。ルーンうまいな。

 顔を横に振っても耳に被さらない。いつもなら顔に被さるだけに、少し感動的だった。

 いつもの数倍ウザったくない。………今度結び方教えてもらおう。


「じゃあ行くか。もう9時だし」

「スカートも穿かない?」

「それだけは断る」


 それを穿いてしまったら、男としてのアイデンティティーが分からなくなる。スカートはタブーなのだ。

 と言っても黒いパンツルックにタートルネック、そんでもってポニーテールなので明らかに女の子なんだけどな。

 ルーンはピンク色のノースリーブの上に薄い上着を着ている。確かにノースリーブのみはちと寒い。

 バッグに財布と冒険者カードと、あとプレゼントの一部を入れた。

 これで準備は整ったのだが、少し懸念点がある。


「お前、金持ってるの?」

「問題ないよ!勇者の給料高いからね!」

「勇者って、給料制なんだ。ちなみにどのくらい持ってる?」

「このくらい」


 そう言って財布を見せてきた。

 覗いてみると………なんだこれ。

 俺の所持金の倍以上あるぞ。こいつにこんな金額扱えるのか?いや無理だろ。絶対散財するだろ。


「王都には家あるしね!」


 こいつ今なんつった。家があるとか言ったか?

 何でそんなリッチなんだ。やっぱ勇者だからか。

 王都はムルクスほど商業が発展していないが、王が住む街だけあって土地代は馬鹿にならない。そんな場所で自分の家とは………。

 若干の敗北感を抱きながら、宿を出た。


「やっぱり人が多いな」

「いつ見てもこんな感じだよ。はぐれないように気をつけなきゃね」


 万が一はぐれてもルーンの魔力なら探し出せる。それを起こす気はないが。

 ここら辺は高級店が多い。やたらと看板が黒塗りになっている。俺ら一般庶民には縁がないのでもっと安い店に行こう。

 少し歩いたら大通りに出た。商店街のような道に屋台が立ち並んでいる。日本のお祭りみたいだ。こういう雰囲気の方が合う。


「あ!あの串焼き美味しそう!行こうレイ!」

「お、おい。走ると危ないぞ」


 ルーンに手を引かれて苦笑しながら屋台に向かう。

 なんというか、デートみたいになったな。端から見れば同性なのでデートではないけど。

 買ったのは山羊肉の串焼きだ。こんがり焼かれている。とても美味しそうだ。

 ルーンはおまけにチーズまで乗せていた。太るぞ。


「んー!美味しいね!」

「そうだな。肉が柔らかくて食べやすい」


 値段も良心的だ。そんな店がまだまだある。これは退屈しなさそうだ。

 ………別の意味でも退屈しなさそうだな。


(視線がな………)


 さっきから男たちの視線が熱い。

 いや気持ちは分かるよ?自分で言うのもなんだが、美少女二人が仲睦まじく歩いてたらそりゃ見るよな。

 それを咎めるつもりはない。美少女がいれば見る、これは生理現象のようなものだ。

 だが、頼むからナンパはやめてくれ。楽しさが半減するから。

 ………俺のそんな願いも空しく、一組のバカがこちらに歩いてきた。


「ルーン。あそこの店行こうぜ」

「ん?分かった!」


 話しかけられる前にルーンを連れて離脱した。

 なのにしつこく着いてきた。ルーンの赤い髪は目立つからな………。


「ねえレイ。あの人たちどうする?ぶっ飛ばす?」

「気付いてたのかよ。ぶっ飛ばすのは最終手段だ。なるべく穏便に済ませたい」

「でもさでもさ」


 肩をチョイチョイとつついてきたので、ルーンが指を指してる方を見ると、

 ………あれ?こんなにいたっけ?

 俺らのほうに近づいてくる奴がなんか増えてる。一組だったバカが何組にもなってる。


(………いや、違う。こいつらナンパじゃないな)


 なんとなく分かる。目付きが違う。

 ナンパする気楽さではなく、寝踏みするような視線だ。

精神感応(テレパシー)』の魔法でルーンが伝えてきた。


(レイ。多分この人たち奴隷商だよ。結構多いからよく知ってる)

(奴隷商………あぁ、あれか。連れていかれたらヤバいやつか)


 奴隷商といえば、ラノベでたまに出てくる悪役の一つだ。

 この世界にももちろんあり、一般的には非合法の組織として知られている。

 他国と奴隷を取引して、とんでもなく稼いでいる。しかし、奴隷制度は数十年前に廃止された。なので、明確な犯罪組織だ。

 こんな大きな街なら、そりゃいるよな。


(どうしようか?奴隷商なら心置きなくぶっ飛ばせるけど)

(俺もそうしたいけどな………。今のところは何もしない。路地裏に入って巻こう)

(路地裏って非合法組織の住処だよ?すぐ見つかるよ?)

(大丈夫。俺ら級のバケモノがいない限りはな)

(?)


 ルーンが首をかしげた。その手を引いてすぐそこにある路地裏に入った。

 その後ろに奴隷商の奴らもついてくる。

 少し早足でクネクネと道を曲がり、一瞬俺らが見えない位置になった。

 そこで俺は魔法を唱える。


「『光学迷彩(インビジブル)』」


 唱えた俺たちは、一見何も変化がないように見える。

 しかし、俺たちを探してるあいつらは違う。


「どこに消えた?」

「探せ。近くにいるはずだ」


 成功だ。

 しゃべらないよう、ルーンに釘を指しておき音をたてず『飛翔(フライト)』で路地裏から出る。

 話していいぞと許可すると、予想通りの疑問を投げ掛けてきた。


「何やったの?見失ってたみたいだけど」

「俺らに光の屈折を調整してうんたらかんたら………と言っても分からんよな」

「うん。分かんない」

「とりあえず、相手の視界から自分を消す魔法ってことでいい」


 昨日1日暇だったので、暇潰し程度に練習していたのだ。

 光学迷彩はよく知らないけど、光のことは中2の時に習った。

 それで完成したけどいい名前が思い浮かばなかったから光学迷彩にした。

 暗殺者とかが重宝しそうな魔法だ。


「あれ、本当に逃がして良かったの?犯罪組織だよ?」

「言ったろ。『今のところは』って。今度お礼参りに行ってやろう」

「さすがレイ!ところで、今どこの向かってるの?」


 ああ、うん………。

 もういっかな。隠し事は苦手だし、どうせこいつは一緒に来るだろうし。

 サプライズにならないのは残念だけど、仕方ない。


「ちょっと買い物に」

「そうなんだ。何買うの?」

「ついてからのお楽しみ」


 そう言って俺は、副団長にもらった地図を見ながら目的地に飛んだ。

ブクマ100いったらすごいんですかね。よく分かんないです。

1000いけるよう頑張りますね。

みんなも協力してくだちい

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