20話―エクスプロージョンッッッ!!!
今日の寝起きは憂鬱だった。やはり昨日遅くまで話し込んでしまったのが原因か。瞼がバカみたいに重い。
幸い、寝ぼけたルーンが俺の寝袋に入ってることはない。良かった。
ムクリと起き上がり、寝癖を直しながらルーンを起こす。
「ルーン、朝だ。そろそろ起きろ」
「………あと5分」
「駄目だ。今日は超特急でムルクスに行くんだから。起きないと寝袋から引きずり出すぞ」
「………起きる………」
俺より盛大な寝癖をつけてルーンが起き上がる。アホ毛がとても立派だった。
一応ルーンに背を向けて着替える。一応。
まだ着替え終わってないルーンを見ないようにしながらテントを出ると、もう全員起きていた。騎士団の人は早起きらしい。
「おはようございます。レイ殿」
「おはようございます。オルバス副団長。ルーンはもう起きてるよ」
「そうでしたか。いつもはまだ熟睡しているのに………」
分かりきっていたが、ルーンは朝が苦手だ。顔を洗わないといつまでも寝ぼけ顔でいる。
まだ寝癖を直さずあくびしながらテントから出てきたルーンがその証拠だ。
「ルーン。ちょっとこっちに顔向けろ」
「ん~何~?」
「『水かけ』」
「わっ!?何すんの!?」
「眠そうだったから顔を洗ってやった」
水が水素と酸素でできていることくらい知っている。今の『水かけ』は、空気中の水素と酸素を無理やり結合させて水を作る魔法だ。非常時にも役立つ。
ルーンもさっぱりしたようだ。寝癖は直ってないが。
地図を広げながら、副団長が確認してくる。
「では、もう行きましょう。朝食は行きながらになりますが、よろしいですか?」
「ああ。全然大丈夫だ」
「私も大丈夫。ねぇ副団長、ここからムルクスまでどのくらい?」
「………ざっと六時間といったところでしょうか」
六時間か………結構かかるな。どうにか短くできないかな。
「副団長。どこかショートカットできるルートとかないのか?」
「………オススメはしませんが、まっすぐ行けば岩山があります。そこを突っ切れば二時間ほどで着くことができます」
「なるほど………岩山ね………」
それならあれが試せるかもしれない。少し不安だが、仮に失敗しても強行手段がある。
それにしよう。いつ炎黒狼が街まで降りてくるか分からない。
「そのルートにしよう。俺に考えがある」
「岩山を通過するのは不可能ではありませんが、著しく体力を消耗します。本当に大丈夫なのですか?」
「昨日会ったばかりで信用できないかもしれないが、安心してくれて良いよ。上手くいけば昼頃にはつける」
「レイ、今上手くいけばって言った?上手くいかないこともあるの?」
「大丈夫。俺の考えが失敗しても昼頃につけるから」
「ふむ………ではレイ殿に従いましょう。これより、ムルクスに向かい直進する。荷物はすべて持ったな?では、行くぞ!」
副団長のかけ声におー!と返事をして、俺たちは岩山のある方向に向かった。
♢
「………思ったより岩山だな………」
今俺の目の前にあるのは正しく岩山。とんがった岩がゴロゴロとあり、傾斜も急だ。ロッククライミング上級者でも手こずりそうだ。
「長年、この岩山にトンネルを作ろうとしているのですが、硬すぎてピッケルも通らないのです。ここが開通すれば王国はもっと豊かになるのですが………」
確かにムルクスからの商品をわざわざ迂回せずに運べれば、それだけで大幅な輸送費削減につながる。この岩山に浅い傷がいくつもついているのも頷ける。
試しに軽く刀で切ろうとしたが、文字通り歯が立たない。腕がビリビリしただけだ。
「この分じゃ、身体強化しても大して利かないか」
「どうするの?剣が利かないんじゃどうしようもないでしょ?」
「いや。この世界には魔法という便利な物があるじゃないか。ちょっと危ないからみんなは下がっててくれ」
そう言って俺は岩山に手を当て、魔法を準備する。
俺に科学の専門知識などない。が、そんなもの気合いでどうにかなる。いや、させる。
数秒黙り込み、ようやく発動させる
「───『発破』」
唱えた瞬間、破裂したように目の前の岩が吹き飛び、破片が散らばる。
砂ぼこりが止むと、目の前に3mくらいの穴ができていた。
急な爆発音にビックリしていたルートが震えた声で言ってきた。
「………な、何やったの?」
「聞こえなかったか?ただの『爆発』だ。少し工夫はしたけど」
「………工夫、とは?」
「岩の内側まで魔力を持っていって、そこで爆発するようにしたんだ。燃費が少し悪いけど、俺なら気にならない」
イメージとしては、爆薬を岩の内側にあるとしてそれを起爆させる。それだけだ。そこそこ強めに爆発させているから一発で砕ける。
爆薬がそのまま魔力を使うことになるから、普通の魔法使いなら5発と持たないが、俺の場合は回復量が上回っているので全く問題ない。
さっきはちょっと調整をミスって爆散したが、次はもっと上手くやろう。
ドンドン爆破して進んでいく俺に、ルーンと副団長が唖然としていた。
「………やはり、レイ殿はルーン殿のお仲間ですね」
「レイは私より色々ぶっ飛んでると思うよ」
「ぶっ飛んでるとは失礼だな。俺はみんなの前だからこんなに曝け出してるんだよ。普段はもっと抑えてる」
「そういうことじゃないんだけどな………」
「?」
自重を知らないなろう主人公のように、どこでも全力全開で全てを曝け出してる訳ではないし、何も問題ないと思うんだが………何かやったか?
そこから俺はひたすらに爆破を続けた。
「『爆発』『爆発』『爆発』『爆発』」
それはもう他作品の爆裂娘のようにエクスプロージョンと唱え続けた。少しゲシュタルト崩壊が起きてた。
(エクスプロージョン………エクスプロージョンってどんな意味だ?エクスカリバーとローションが合体して生まれたのか?それはただのヌルヌルした聖剣じゃないのか?………何言ってんだ、俺は)
こんなになるまで爆破し続けているのに、まだ終わりが見えない。どんだけデカイんだ、この岩山。
ただただ無心で唱え続け、ようやく今までと違う手応えがあった。
「やっとだ!やっと終わりが見えてきたぞ!」
「嬉しそうですね………」
「そりゃあ、あれだけ爆破してるんだもん。終わりが見えれば嬉しくもなるよ」
「それじゃ最後の、『爆発』!」
最後の岩が爆散すると、光が差し込んだ。
まだ森っぽいが、遠くに建物がある。ちゃんとムルクスまで貫通したようだ。
久しぶりの日光は真上から射している。まだ正午だ。
「この後はどうするんだ?」
「一度、火山付近の見張り場に行き、街の者に現状報告を」
「今日中に討伐しに行けるのか………」
「それですが………今日中には無理ではないかと思われます」
「え?火山まで行くのにそんなに時間かかるの?」
東を見れば溶岩っぽいのが流れてる山がある。さほど遠くないと思うのだが。
ルーンの疑問に、副団長は顔をしかめながら答えた。
「移動にはそれほどかかりません。ですが、道中の魔物が他とは比べ物にならないほど強いのです。おそらく、炎黒狼の眷属でしょう」
「迂闊に攻めたら囲まれて袋叩きにされるんだね」
「…………」
炎黒狼の眷属か………多分銀人狼よりもちょっと弱いくらいだろうけど、確かにキツいな。しかも、それを何体も相手しなければいけないのがたちが悪い。
せめて無力化くらいできればいいんだが…………。
「とりあえず、麓の見張り場に行きましょう。何か策があるかもしれません」
「レイなら思い付くかもね」
「俺は策士じゃなくてただの冒険者だぞ」
「岩山を魔法で貫通させられる人はただの冒険者じゃないと思う」
「う、うるさい!早く行くぞ!」
もう俺が「ただの」冒険者でないことくらい分かってるが、改めて自覚すると、なんか悲しくなるんだよ。
♢
街が「勇者様が来た!」と騒がないように外を通っていったため少し時間がかかったが、魔物に遭遇する事なく見張り場に到着した。
「おお!お待ちしておりました!来ていただきありがとうございます、勇者様!」
「や、やめてください。まだ討伐は終わってないんですから」
ルーンは勇者になって2年と言ってたが、こういう扱いは苦手らしい。慌てるルーンというのもレアだ。
副団長が咳払いをし、中の席に着いた。ちなみに俺は後ろに立っている。まだ正式な仲間じゃないし。ルーンに隣に座ってと言われたが。
「して、状況はどのような?」
「はい。まだ炎黒狼は山頂に居座っています。ですが、他の魔物による馬車が教われる被害が日に日に増加しています。それも、食料などを奪うなどの」
「ふむ………さしずめ、王への貢ぎ物といった所か………。死者は?」
「20人超でしょうか。これから増えると思われます。村が壊滅するまでの被害が出ていないのが、せめてもの救いですね」
「ああ、しかしそれも長くは持たないだろう」
副団長の言う通り、その程度の被害で済んでいるのはまだ活動が活発になってないからだ。
馬車がいなくなったら、迷わず村を襲うだろう。そうなれば被害は今までの比じゃなくなる。
「魔物の危険度はどれくらいだ?」
「ムルクスの冒険者ギルドに依頼書は出していますが、未だ1人も受けてくれません。あれはBランク冒険者でも厳しいでしょう」
「そうか………」
ベテランといわれるBランクでも厳しい、か。かなり強いな。しかもそれが大勢いるんだ。ここにいるメンバーでもいけるかどうか。
報告を終えて外に出る。外は少し曇っていた。
「どうしましょうか。無策で突撃するのはあまり無謀ですし………」
「いっそ一回入って、どのくらい強いか確かめてみる?」
「それが良いかもしれない。それで何か作戦が浮かんでくるかもしれない」
「では、登りきらずに中腹に満たない場所にしましょう。撤退しやすいように」
ひとまず敵情視察ということで、火山に登ることになった。
火山といっても、溶岩が露出しているのはずっと上だけ。中腹なら普通の山登りだ。
みんな常に気を張っているので、言葉が少ない。副団長はもちろん、ルーンも山に入った所から戦闘体制だ。
俺もずっと『敵意感知』という、敵意のある生物に反応する魔法を張っている。半径10mくらいであれば察知できる。
「………いないね」
「はい、不気味なほどに」
「魔法にも反応なしだ。反対側に行ったのか?」
おかしい。これはいなさすぎる。ちょうどボスの所に行ってるのか?
不審に思いながら歩いてると、ようやく反応があった。
場所は───上。
「っ!?」
咄嗟に剣を抜き、上に構えるとそこに鋭利な爪を振り下ろす人狼がいた。
完璧な不意討ちだ。ここまで気配を消せるのは素直にすごい。
どうにか防いで押し返したら、今度は無数の人狼が木から落ちてきた。
状況の理解できていない騎手たちに、副団長が号令をかける。
「慌てるな!落ち着いて剣を構えろ!技ではこちらの方が有利だ!」
「何でこんなに隠密が………!?」
「眷属ってのは本当らしい!こいつら、普通の人狼よりもずっと強い。油断してると首持ってかれるぞ!」
通常より強いとはいえ、一体一体は難なく倒せる。
しかし、いかんせん数が多い。木が多いので大体の数も分からない。
足場も悪く、完全にアウェイだ。ここは一度撤退した方が良い。
なんとか三体を同時に切り捨てると、副団長に向かって叫ぶ。
「副団長!一旦撤退しよう!このままじゃ全滅する!」
「分かっております!全員、撤退!!」
「聞いたかルーン!退くぞ!」
「分かった!みんなが行くまで、ちょっとだけ抑えてるから!早く行って!」
何でそういうとこだけ真面目なんだ。
ルーンがねばるなら俺もねばる。こいつだけに大変な思いはさせない。
騎士団のみんなが後退している間に、そこへ行こうとする奴らをルーンと一緒に切っていると───副団長の声が聞こえた。
「レイ殿!後ろに!」
「え………?」
振り向くと、今まさに腕を振りおろしている人狼がいた。
しまった。戦闘中に敵意感知を切っていたのが仇となった。
この速度では、剣で受けることもできないし、避けられない。
しかし、人狼の爪が俺に届く寸前、間に誰かが入った。
───ルーンだ。
「レイ!」
「グルァ!」
胸当てごと切り裂いて、ルーンの胸から鮮血が飛び散った。
それでも、ルーンは剣を振って人狼を斬り倒し、ガクリと膝から崩れ落ちた。
傷は深い。出血量も異常だ。これじゃ………
「ルーン殿!レイ殿!退きますぞ!早く!」
「でも、ルーンが………」
呆然とする俺に、副団長は少しだけ悲しそうな顔をし、
「大丈夫です!ルーン殿は生きてます!ですから早く!」
「………………」
ギリリと奥歯を軋ませながら、俺は立ち上がった。気を失っているルーンとを副団長が背負いそれを追いながら、全速力で撤退する。
人狼の群れは、さほどしつこく追ってこなかった。
だが、
(何で………)
俺の中には、深い自責と後悔が居座り続けていた。
タイトル、著作権に引っ掛かんないかな。大丈夫かな。
やったー!ポイント増えてる!わーいわーい!
もっともっとくれても良いんだよ?(強欲)
なんなら感想くれても良いんだよ?(強欲)




