17話―騎士団探しは大変
アクロアを出て、ちょっと歩いたとこでルーンに聞いた。
「ルーン。今どこに向かっているんだ?」
「え?知らないよ。レイこそどこに行ってるの?」
「…………」
「…………」
こいつ、当てもなく歩いてたのかよ。場所くらい知ってると思ったのに。
確かに騎士団さんはルーンを探し回ってるし、遠い場所だから、当てなんてないか。
仕方ない。あの手を使うか。
「お前、どの方角から来た?」
「えっとね……あっち」
そう言って指差したのは南西。まっすぐ行けばこの国一番の商業都市がある方向だ。
方角が決まれば話は早い。
俺はルーンの前にに立ち、
「ちょっと失礼」
「えっ?あっ、ちょ……」
ルーンをお姫様抱っこした。
おい、ちょっと赤面するな。顔を背けるな。こっちだって恥ずかしいんだから。
落ちないようルーンに注意して、俺は魔法を唱える。
「『飛翔』」
そして俺はロケットのように、ブーツから風を噴出させて空に舞い上がった。
「わぁっ!すごいすごい!」
「あんまりはしゃぐな。落っこちるぞ」
「レイすごいね!飛行魔法なんて使ってる人見たことないよ!」
「戦ってる時に見せた魔法もこれと同じだぞ?」
「そうだったの!?」
はしゃぐルーンをたしなめ、上空に停滞する。
このくらい高く上がれば、騎士団も見つけ安いだろう。
念のため、『望遠』の魔法で視力も上げておく。これで漏らしなく見つけられる。
スピードを緩めて、ヘリコプターくらいの速度で上空を移動する、真っ黒冒険者と勇者。見つかったら迎撃されないか心配だ。
未だ空を飛んでることにはしゃいでいるルーンに俺は尋ねた。
「なぁ、お前どのくらいの距離を移動したんだ?」
「私の全力疾走で半日だから……200キウル(約100km)くらいかな?」
「さすが翻訳魔法。単位換算までしてくれるか」
「翻訳魔法って?」
「いや、何でもない」
100km……その距離を半日でか。新幹線かこいつは。
そんだけ離れてると、1日で見つけるのは困難かもしれない。
「騎士団の人達って、目印になる物とかないのか?」
「う~ん……あったかな……」
「何でもいいんだ。何か上から見れば一発で分かるような……」
「あ!副団長の魔力で見つければ良いんじゃないかな?結構強かったし」
「なるほど。なら、気を張ってないとな」
そう言って、俺は遠視魔法を切って、『魔力探知』を発動する。周囲に微弱な魔力を広げることで、そこにある魔力を感知する魔法だ。魔力消費量がエグいことになっているが、俺なら問題ない。回復が間に合っている。
そうして───三時間が経過した。まだ見つかってない。もうすぐ100kmなのに。
「ねぇー。レイー。暇ー」
「やめろ。揺さぶるな。俺だって暇だよ」
もうルーンは飽きてきている。俺も超暇だ。さっきしりとりしたけど、それでも一時間消費した。もう限界だ。
魔力は余裕があるものの、魔法をずっと維持するとなるととんでもない集中力がいる。このままでは、いつ墜落してもおかしくない。ここまで持たせたのを褒めてほしい。さっき墜落しかけたけど。
(もう無理だ。一旦降りて休憩しよう)
そう決めてルーンに言おうとしたところ……強めの魔力の反応があった。
丁度真下のあたりだ。速度も歩いてるっぽい。
「おい、ルーン!いたぞ!多分副団長だ!今すぐ降り……って起きろ!船こぐな!よだれを垂らすな!」
「えっ!あっ、寝てないよ!瞑想してただけだから!」
「言い訳はいいから!見つかったから降りるぞ!」
「やっと見つかったの?良かったー。危うく寝るとこだった」
今寝てただろ、とツッコむのはやめて、急降下する。
ルーンを下ろして、一緒に魔力のある方向に向かう。
……気のせいかな。人の足跡がない。
「おーい!副団長!見つけましたよー!」
「おい、ルーン。なんか嫌な予感がするんだが……」
駆けていくルーンに不安げな声をかけるも、ルーンは聞こえてないっぽい。
見えてきたのは人影だった。良かった。ちゃんと副団長…………。
「「…………」」
二人揃って黙る俺たち。
そりゃそうだ。副団長だと思った人影は……
「……フルルルルル…………ワオォォーーーン!!!」
……銀人狼さんじゃないですか……。
♢
銀人狼──人狼と呼ばれる魔物の最上位種。
その名の通り、全身が白銀の毛で覆われている狼と人が合体したような魔物。
攻撃力防御力が高く、特に俊敏性ではあらゆる魔物の中でもトップクラスといわれている。
本来ならAランク冒険者が束になってやっと仕留められるヤバい奴だ。
(まずいな。こいつ一匹だけならなんとかなるんだが……)
そう、そいつ一匹だけなら、俺とルーンなら倒せる。
しかし……こいつは群れで動いていた。数匹の人狼と、数十匹の魔狼だ。これだけの数はちょっとキツイ。
横を見ると、ルーンはもう戦闘モードに入っている。
……仕方ない。やるか。
「ルーン。銀の奴は任せた」
「分かったよ。名前長いもんね。略したくもなるよね」
「うるせぇ。減らず口叩く余裕あるなら大丈夫そうだな」
こいつは精密な魔法が苦手だ。大勢を相手するのは向いていない。
スピードでも、ルーンなら負けないだろう。
俺の相手は群れの長以外全部。中々骨が折れる。ただでさえさっきまで魔法を使い続けていたのに。
……まぁ、やるしかないだろ。
「ルーン。まずは銀の奴とそれ以外を俺が分断させる。そしたら一対一だ。子分らはそっちに行こうとすると思うが、そこは俺が仕留める」
「うん。分かった」
「あいつ、見た目より速いから、ちゃんと目で追えよ?」
「速さなら誰にも負けないよ!」
「俺に負けたけどな」
「う、うるさい!」
準備万端みたいだな。狼共もまだ動いてない。仕掛けるなら早い方が良いな。
ルーンに合図する前に俺は魔法の準備をした。
まず、俺は銀人狼とそれ以外を分断する必要がある。
そこで俺はひとまず、爆発でも起こして周りの雑魚を吹き飛ばそうと思ったのだ。
あわよくばそのまま全部倒してしまおうと。
「……吹っ飛べ『火炎砲弾』!」
圧縮した炎の弾丸が、群れの中央、丁度銀人狼のいるとこに亜音速で突き進んでいく。
避けられない……と思ったのだが、銀人狼の攻撃力は伊達じゃなかった。
「グルァ!!」
太く強靭な腕が振られたと思うと、弾丸が上空に飛ばされ爆発した。一応腕にアザができていたが、その程度だ。
さすが最上位種。周りの雑魚では受けられないから自ら守るとは。攻撃力だけじゃなく知能も高いらしい。
……なら、こっちも頭を使って倒してやるよ。人間舐めるなよ。
俺は笑みを浮かべて、久々ルーンに指示する。
「ルーン。今からでっかい奴だけ上空に打ち上げるから、木を伝って仕留めてくれ。できれば一発で」
「一発!?レイの魔法吹き飛ばしてもアザしかできてないあれを一発!?」
「できるだろ?勇者様」
「……分かった。でもどうやって打ち上げるの?」
「今から見せてやるよ。ちゃんと見てろよ!」
「グルァッ!」
そこで丁度狼たちが動き出した。間が悪い奴らだ。
幸い雑魚だけなので少しの間ルーンに任せよう。
「ルーン。少し集中が必要だから、相手しててくれ」
「リョーカイ!」
ルーンが雑魚を薙ぎ払っているうちに、俺は魔法のイメージをする。
……この世界では、攻撃魔法は手や杖からしか出ないと思っている。
だが、それは間違い。その方がイメージが固めやすいからに過ぎない。想像力と魔力さえあれば、自分の周りから出すことも可能だ。
それを利用して、銀人狼を打ち上げる。調整が難しいが、俺ならできる。
「──風よ、彼の敵を遥か空へ運びたまえ──」
イメージは上昇気流。『飛翔』を応用して、銀人狼の足元に爆発的な上向きの突風を巻き起こす。反応なんてできるもんならやってみろ。
「──『上昇気流』!」
「……フルァ!?」
銀人狼の体が花火のように上空に吹っ飛ばされた。
いくら知能が高かろうと、これは予想できない。
もう半数以上の魔狼を倒したルーンに、合図をする。
「今だ、ルーン!一発決めてやれ!」
「おお、ホントに打ち上がった。よし!行くよ!」
忍者のように木を登ったルーンは、あっという間に銀人狼に追い付き、上から流星のような上段切りを見舞った。
「はぁっ!」
「グブァ!!」
「くっ……」
そして、まさしく隕石のように落下し、土埃を起こす狼。だが流石の防御力だ。ルーンの渾身の一撃でもまだ息がある。
──このまま逃がすわけないだろう?
一旦雑魚はほっといて、俺も銀人狼に追撃する。
地面に直撃し、バウンドして宙を舞っている銀人狼目掛けて、居合いの姿勢をとる。
《絶剣》も発動し、足に魔力を回す。神速の居合いを決めてやる。今日初めて居合い切りするけど。
目が合おうとした瞬間、俺が動いた。そして……
「───グルッ!!?」
──直後、そのうめき声を最後に、銀人狼の首が落ちた。
踏み込みまで込みで、反応を許さず斬った。まさしく神速。初めてでこれなら上出来だ。というか我ながら恐ろしい。
木から降りてきたルーンも呆然としている。見えなかったようだ。無理もない。
動こうとしたら、足がガクンとなった。結構無理させたようだ。
魔狼たちも、リーダーが殺されたことで動けずにいる。
「ルーン。ちょっと回復に時間かかるから。あいつらは任せた」
「う、うん。分かった。レイは休憩してて」
走るルーンを尻目に、俺は一息つく。
熱くなってしまったな。最近思うのだが、俺は少し戦闘狂のきらいがある。少し自重しないと。
狼を次々と倒していくルーンを見ながら、俺はスキルの出力を上げた。
バトってばっかですね。皆さんはこんなんで良いですか?
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