表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/39

14話―VS勇者

 闘技場に来た。約5分ぶりに。

 今から戦うのは、ロウゼンとは比にならないほどの強者。

 しかし、そんなことは目の前の少女からは欠片も感じられない。


「じゃぁやろっか。さっきも言ったけど、すぐには倒さないから安心してね」

「頼むぞ。逆に俺が瞬殺する可能性もあるがな」

「ほほう、面白いね」


 戦闘前の会話からもそれは見てとれる。セリフに圧倒的強者感が混じっているが、それはこちらも同じだ。

 審判は、前と同じ目付きが鋭い女の人だ。未だに名前は知らない。

 ルールは簡単。先に一本取った方が勝ち。

 場外はOK。魔法も何でも使って良し。大怪我上等。治癒魔法もあるし、万が一は寸止めする。

 お互い剣を抜く前に、勇者が一つ付け加えてきた。


「あ、私は魔法が苦手だからあんまり使わないよ。そっちが使う分には全然かまわないし、思う存分力を発揮してよ」

「意外だな。勇者が魔法苦手なのか。てっきりそっちもヤバいのかと思ってた」

「基本は剣メインだね。それでも負ける気はないよ。勇者だからね」


 魔法を使わない……良いことを聞いた。これで勝率が少しだけ上がる。

 それでも、剣だけでSランクまで上り詰めたのだから、決して油断はできない。

 勇者が剣を抜いたが……あれはヤバい。見た目は普通の長剣だが。下手したら《虹龍》並みの業物だ。魔力の波動がこっちにまで伝わってくる。

 その迫力に気圧されそうになるのを我慢し、こちらも剣を抜く。

 その時、勇者が不思議な物を見る目で見てきた。刀身がないからだろうか。


「それ……刀だっけ?珍しいね」

「えっ?名前知ってるのか?これの」

「うん。東にあるイースィアって国で見たことがあるの。まさかそこ出身?」

「……いや、この国生まれ」


 イースィア……名前は知っている。大陸の極東にある小国だ。まさか日本刀がこの世界にあるとは……いつか行ってみたい。

 刀身が見えないことにはノーコメントか。やはりそこまで珍しくないのか。

 そろそろ話もやめよう。審判さんがこっちをちょっと睨んでる。

 息をスーッと吐き、相手の動きに集中する。

 その時──背筋に悪寒が走った。

 戦闘モードに入った勇者に先程までの笑顔はなく、獲物を狩るフクロウのような圧力を放っている。

 武者震いというやつが止まらない。やっぱり勇者か、こいつも。


(落ち着け。何のための特訓だ。こういう時のためのじゃないのか。こんなこと想定できなかったが、それでも俺は十分強い)


 こいつは瞬殺はしないと言った。つまりロウゼンとの初戦のように、いきなりくることはない。

 ──だが、こっちは別だ。



「始め!」



 その瞬間、勇者の背後に俺が回った。

 合図の直前、身体強化でスピードを限界まで上げ、高速で移動したのだ。

 そして、上から刀を振り下ろす。これもスピードを上げて。

 この一撃で終わる……ことはもちろんない。


「なっ……⁉️」

「へぇ、速いね」


 ──避けられた。

 一切の無駄なく、流れるように。後ろにも目があるかのように。

 一瞬で反応し、気配だけで避けた。流石勇者と言うべきだろう。

 しかし、こちらもそこまで甘く見ていない。

 下まで降りる前に、強引に止めて横に振る。

 それも避けられる。

 また一回、二回、三回、その次も、すべての斬撃をかわされる。


(こいつ、やっぱバケモンだな。ここまで一回も当たんないとか)


 Sランクはこんな奴ばっかなのか。嫌になってくる。

 ……ちょっと熱くなってきた。

 実は今までのは《絶剣》を発動していない。自分の力だけだ。

 もう隠す気はない。本気で行ってやる。

 スキルを発動し、剣のキレを格段に上昇させる。

 もう体が独立したような感覚はない。スキルを自分の力にできたおかげだ。

 勇者の顔に、少し余裕がなくなってきた。なのに、少し楽しそうだ。


「すごい。まだ速くなる。これはちょっとキツいね」

「喋ってて良いのか?……『身体強化(パワード)』!」


 ここで詠唱ありの身体強化。もはや剣は音速くらいになっている。

 それでも勇者は避ける。だが──


「ッ!」

「……よし」


 勇者の頬の皮に、赤い筋が一本走る。一撃当たったのだ。

 これだけやって頬の皮一枚とか、本当に嫌になる。

 そこで後ろに跳び、一端体制を整える。


「まずは一回。今度は一本取るぞ」

「……これは、もう抑える必要もないかもね。──次からは本気でいくよ」


 勇者の魔力の流れが変わり、全身に纏われる。

 ここからが本番か。もうだいぶ疲れたのに、まだやるのか。

 ……いざとなれば、また本気を出そう。

 そうして、第2ラウンドが始まった。



 ♢



 勇者が本気を出してから、俺は防戦を余儀なくされた。


「はぁっ!」

「くっ……」


 一撃一撃が重く、速い。俺のより遥かに。

 ギリギリ防ぐか避けるかできているが、それも後どれくらい持つか分からない。

 反撃する余地はなく、受けるのが精一杯だ。


(……仕方ない。全力だ。ここまできたらとことん本気だしてやる)


 俺が腹をくくり、身体強化を俺が出せる最大出力まで上げる。

 勇者の斬撃が、さっきよりゆっくり見える。それでもこの速さは異常だ。

 俺はその攻撃を流し、カウンターを入れようとする。しかし、それは体のひねりでかわされる。

 ならば──別の手段で当てる。


「くっ!」


 勇者の腹に俺の膝が入った。流石にこれは読めなかっただろう。

 俺の膝蹴りも、魔力を腹に集めたことにより、大したダメージはない。

 が、体は吹っ飛び、何回かバウンドして立ち上がった。頑丈だな。


「フフフ……ホントすごいね。私を相手にカウンターなんて」

「楽しそうだな。ここまでの接戦は久しぶりか?」

「ううん、初めてだよ。だから、もっと君の本気を見せて」

「……分かったよ。後悔するなよ!」


 俺はまだ性懲りもなく、奥の手までは出さないつもりでいた。ここで見せてしまえば──それは初見殺しではなくなるから。

 だが、Sランク冒険者とタメを張れるのだ。もういいだろう。

 勇者は笑みを浮かべて、俺に突進してくる。俺はそれを避け、魔法を発動させる。


「……『飛翔(フライト)』」

「!?」


 その途端、俺があり得ない動きで勇者の後ろに回り、その回転を利用して横薙ぎをお見舞いしてやった。

 一応剣で受けたが、それでも後ろに下がるほどの威力。


「面白い魔法を使うね。腕が痺れてるよ」

「本気をだせと言われたからな。言う通りにしただけだよ」


 俺が使用したのは『飛翔』。

 それを限界まで出力を小さくすることで、低空をスケートのように滑れる。

 摩擦や踏み込みがなくなり、タイムロスがなくなった。回転を加えることにより、斬撃の威力も増す。

 これが俺の奥の手、『空駆け』。

『飛翔』の練習の末に編み出した。初めてならほぼ当たるのだが、反応したこいつは何度も言うが化け物だ。

 だが、奥の手はまだある。


「行くぞ。『纏炎』」


 《虹龍》の刀身に炎が巻き付かれる。俺以外から見れば、炎の刀身が現れたように見えるだろう。

 こうすることで、切れ味が増す。そして、


「『炎弾(ファイアバレット)』」

「なっ!?」


 刀身から炎の弾丸が5発分離し、勇者に襲いかかる。

 こんなトリッキーな攻撃もできる。アドバンテージは大きい。

 音速並の弾丸の回避をしている間に、俺も追撃をする。

 ……なのに、この勇者はまだ反応してくる。しかも、段々となれてきている。恐るべき才能だ。


「せやぁっ!」

「はぁっ!」


 お互い一歩も譲らない。もはや観客の冒険者には認識できない戦いなっている。

 魔力量も技量もほぼ互角。技数ではこちらが勝っているものの、適応力はあっちが勝っている。

 よくSランク冒険者にここまでできたなと思う。だけど……こいつも手加減している。

 どこかこの戦いを楽しんでいる。なんと言うか、オモチャを貰った子どものような無邪気さが感じられる。


(……勇者だからかね)


 その理由を察し、だからこそ本気で立ち合う。

 上段切りをあえて受け、魔法を唱える。


「『爆発(エクスプロージョン)』!」

「嘘……!?」


 剣と剣がぶつかり合っている所で、小型の爆発を起こす。攻撃力ではなく、爆風を起こすための。

 その爆風は音速を超える。強く握っていた俺は刀を落とさなかったが、勇者の長剣は宙を舞った。これで丸腰だ。

 俺は勇者の首筋に刀を寸止めさせる。



「そこまで!勝者、レイ・ナナセ!」


 ────俺の勝ちだ。

 少しの静寂を置き、大歓声が沸き起こる。

 勇者はというと、爆発の衝撃で尻餅をつき、呆然としながら俺を見ている。

 俺はそっと刀をしまい、勇者に手を伸ばす。


「お前の言った通り本気を出したぞ?これで満足か?」

「…………」

「どうだ?生まれて初めて負けた感想は?」

「!!」


 ……こいつが戦いを楽しんでいた理由は分かった。

 勇者だから、今まで誰にも負けたことがなかった。勇者だから、今まで誰とも対等に戦えなかった。

 それどころか、負けるのに飢えていたのかもしれない。

 それが、初めて自分を下せるほど強い相手に出会ったのだ。楽しくもなるだろう。

 沈黙していた勇者は、今日一番の笑顔を見せて答えた。


「……すっっごい悔しい!負けるってこんなに悔しいんだね!」

「それは良かったよ。」

「だからもう絶対に負けない!次は必ず勝つからね!」

「あぁ。望むところだ。俺も負けるつもりはない」


 そうリベンジ宣言をして、勇者は俺の手を取った。

本格的なバトル描写はどうでしたか?やっぱりまだまだですよね……

どうしたらもっと良くなるか、とか教えてくれると嬉しいです!

ブクマ、感想励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ