11話―魔法、スキルの特訓は1日にならず
昨日、魔法を使ってみて分かった。
俺は──魔法が下手だ。
(いや分かりきってたけどね。上手かったら逆に怖いし、これが普通だ)
ただ、このまま制御せずに突っ走っていくと、いずれ暴走して森一個くらい消し飛ぶかもしれない。ちょっと自惚れがすぎるか。
(でも、それを抜きにしても特訓しとくべきなんだ)
その理由は2つ。
この多すぎる魔力を操れるようになれば、使える魔法も多くなる。具体的に何に使うかはまだ分からないが、そっちの方が俺も楽しい。これが1つ目。
実践したい魔法ももちろんあるのだ。魔力制御が追い付かないのでできないが。
もう1つは圧倒的私情だ。
……前にも言ったが、俺は「自分の強さが分からず、『俺、何かやっちゃいました?』という異世界転生主人公」が嫌いなのだ。どうしようもなく。この系統のラノベを読んでいると腹の奥がフツフツしてくるのだ。私情というか私怨だな。
なので、自分の力を分かっておきたい。それを理解した上で、どれくらいに調整するか決める。自重の度合いを確かめる。
(そこまで強くなかったら、しなくていいかもしれんからな。今のうちにやっておくべきだろう)
というわけで俺は、アクロア北部の荒野、昨日の森とは反対側の誰もいない場所にいる。それもアクロアから結構離れている。万が一でも見られる訳にはいかない。
ちなみにここまで全力疾走で一時間ほどした。身体強化ありで。10何キロもあるのに。
(それでも疲れてないのは、やっぱ《癒し之神》のおかげか。我ながら恐ろしい。これも要確認だな)
では、始めるとしよう。特訓、及び実験を。
まずは魔力の制御からだ。実はこれが一番難しい。今までなかった物を操作しろ、とか無茶ぶりにも程がある。
「でも、やってみるしかないか」
そう言い、目を閉じる。
体の中に流れている、血液とは違う熱い何か。おそらくこれが魔力だ。体感するのはこれが初めてだな。
全身に流れている魔力を少し、8%ほどを手に集める。残りは遮断して、身体強化に回す。
集めた魔力を使い、簡単な魔法を唱えてみる。
「『火球』」
手のひらにサッカーボールほどの真っ赤な球体が生まれる。近くの岩に打ってみると、バラバラに砕け散った。
8%でこれかよ。昨日の『火炎砲弾』は大体30%くらいで打ったが、それがどれほどオーバーキルだったのかが分かる。
「この分じゃ、対人戦は1、2%が限度だな。ロウゼンの時魔法使わないで良かった。危うく殺人してるとこだった」
さっきの調整にも時間がかかったし、いっぱい練習しておこう。実戦でこんな猶予はない。1秒くらいでできるように上達せねば。
その後、魔力を使いまくったおかげでだいぶ上達した。まだ3秒だが、及第点だろう。
「よし、次はスキルだな」
俺の転生ギフトのスキル。《癒し之神》だ。
俺はこのスキルにただ甘んじるつもりはない。貰い物の力を真に自分の力にしなければならない。
(まずは魔力をすっからかんにしてみよう。そこでどのくらいのスピードで回復するのか確かめる)
というわけで俺はひたすら燃費の悪い魔法を使い続けることにした。破壊力を抑える必要があるので中々考えるのが大変だ。
結果、一番よかったのは、
「『全力強化』!」
全力で身体強化をかけ続ける。そして何もしない。ただ魔力だけが消えていく。これが一番無意味に魔力を消費するはず……だった。
(どういうことだ?全然減らないぞ?)
減った端から回復していっている。それもどんどん回復量が増していっている。
想定外にこのスキルは強かった。予想以上にズンドコ回復してた。神話級スキルはやはり神話級に強かった。
(ま、まあ……無意識で発動するし、特に気にすることもないか……)
そもそもこのスキルは自分にしか作用しない。他人に分からないならいいかもしれない。
魔力、スキルは終了。最後はこのスキルだ。
「《絶剣》……どうやって特訓しよう?」
俺がロウゼンに勝てたのはこのスキルがあってこそだ。特に動体視力強化と剣術習得が非常に役立っている。これがなくては俺は生きていけない。
ただ、このスキルも無意識で発動する。臨戦状態になれば自動的に発動するのだ。
(今まで意識的に使ったことはないが、できるのか?試してみるか。……《絶剣》、発動)
そう念じた途端右手が勝手に刀を抜き、構えを取った。やっぱり、この体と精神が切り離されたような感覚は慣れない。
この構えはすごくキレイにきまっているが、これを自分でできるまでにしないと、《絶剣》は使いこなせない。剣術素人の俺が、剣術普通くらいになれば、それに応じてスキルも強くなる……と思う。確証はない。
(《絶剣》なしで素振りするか。何かコツが掴めるだろう)
それから俺は素振りを始めた。腕が痛くなっても、《癒し之神》で直す。一見超スパルタ特訓っぽいが、痛みがないのでそこまで苦しくない。
「ふっ、はっ」
でも精神的な疲れは取れない。細かな呼吸音を刻みながら、俺は刀を振り続けた。汗で長髪が頬にくっついて鬱陶しかった。切ろうかな。
修正を重ねながら、無心で振り続ける。気づくともう日が落ち初めていた。
「もうこんな時間か。ずいぶん長い時間素振りしてたな。よし、今日は帰ろう」
帰りは少し新しい魔法を試してみよう。男の、いや人類の夢のような魔法だ。魔力制御が上達した今の俺ならば使える気がする。
「母なる地を離れ、今空を羽ばたかん。『飛翔』!」
唱えると──俺の体が10mくらい宙に浮かぶ。背中に翼を生やすのと、空気を収束させて足から噴き出す。この2つのイメージでできる魔法だ。
「おお!せいこ……うわわっ!」
少しバランスを崩すと、スケート初心者のようになる。が、思ったより操作は簡単だった。慣れれば気持ちいい。
実はこの魔法。この世界の人には難しかったりする。
「翼もないのに飛べるはずがない」と疑ってしまい、上手く発動しないからだ。対して俺は、地球のアニメなどで人が飛ぶ光景を想像できるので、魔力が間に合えば簡単に使える。
「よし、これで帰ろう。あと念のため、『防護』」
身体強化を全て体の頑丈さを上げるものにする。これで墜落しても問題ない。
アクロアに方向転換して、空気を集める。
「どのくらい速さが出るだろうか。物は試しだな。んじゃ、ゴー!」
集めた空気をジェット機のように噴射する。
途端、空気が一気に顔にぶつかった。周囲の景色も新幹線のように動いている。
「ちょっ!?速っ!?ヤバいってこの速さは!」
慌ててスピードを緩める。すると逆に急ブレーキしたせいで空気にぶつかった。
危なかった。今のを続けてたら街の門に激突していた。魔法をかけていても痛かっただろう。
見ると、街の北門は少し先にあった。数秒で10キロ以上とか洒落になってない。
(魔力制御はできたけど、調整ができてなかったな……それができればすごく便利な魔法だ)
おそらくこの世界で最も速い移動手段だろう。俺の他に使えるのは一部の化け物だけだろう。そう思うと俺も化け物の仲間入りか。
ここからは普通に走って門に向かう。ここで使ったら門を貫通してしまう可能性もある。
……あと、髪がスーパーサイヤ人のようにボサボサになっていた。ここも改良しないと。
ブクマが1話ごとに一個増えてる。コツコツガンバロ。
ブクマ、感想たくさん待ってます!
1話につき10個くらい付くと嬉しい!(強欲)




