9話―冒険者はみんな変人
女の子扱いにぐったりしながら受付へたどり着いた。さっきの戦闘よりよっぽど疲れた。別にこの顔じゃなくても、ロウゼンに勝ったんだから話しかけられるのも無理はないか。
そんな俺を見て、戻っていた受付嬢さんも労いの声をかけてくれた。
「お疲れ様です。無事に終われて本当に良かったです」
「はい、確かに疲れました」
戦いに疲れた訳ではないけど。
「では、冒険者登録ですね。まずは書類に必要事項を書いて下さい」
差し出された紙には、名前、年齢、性別、経歴などがある。さほど細かい内容はないが、一番下に「前科」という欄があった。俺の前の冒険者は何したんだよ。
(経歴か……まぁ何も書かなくていいか)
名前は、普通に「レイ・ナナセ」でいいか。ナナセなんて姓の奴、この世界にいるんだろうか。いないだろうな。
年齢は16。この世界では15歳で成人と見なされるので問題ない。
そして、性別は……どうしよう。
(体は女、頭脳は男なんて、前例はないだろうし……嘘を書いても特に何も言われなさそうだが──)
「あ、内容を偽ったら詐称の罪になりますから。気をつけて下さい」
駄目だった。そういう所はしっかりしていた。反則も見逃してたんだし、これも良くない?ほぼ一緒でしょ。
(くっ……仕方ない。見た目は女の子だから、女にしとくか……)
断腸の思いで性別の欄に「女」と書く。これを出すとき、受付嬢さんに「絶対に言わないで下さい!」と念を押しておいた。「個人情報は漏らしませんよ」と笑顔で言われた。ちょっと変な物を見る目も混じってたが。
「これでおしまいです。あなたも冒険者の仲間入りですね」
「え?もう終わり?もっと審査的なのは?」
「ありませんよ。自由が売りの冒険者ですからね。最低限の情報があれば誰でもなれますよ」
なるほど。面接も必要ないとは、地球の就活生が聞いたら殺到するだろうな。
「では、冒険者になったということで、これを進呈しますね」
「何だ?これ」
渡されたのは、色々難しい文字が書いてあるカードだ。左下に「F」と書かれてあった。
「これは冒険者カードです。冒険者の証、言わば身分証明書ですね。他の街へ行く時の通行許可証としても使えます」
「このCってのは?」
「それはランクです。冒険者には7つのランクがあって、低い順に、F E D C B A Sです。レイさんは成り立てですので、一番最初のFランクからですね。クエストのクリアによって、ランクは上がっていきます」
ちなみに、Aランクはベテラン冒険者。Sランクは国に数人しかいないらしい。
便利な物をもらったな。これで他の街にも自由に行ける。
「ランクを上げられるよう、頑張ってくださいね」
「分かりました!」
ひと悶着あったが、ようやく念願の冒険者になれた。よし!早速クエストに……
「おめでと!これで仲間入りだね!」
「得意分野は何だ?やっぱり剣か?」
「いやいやこう見えて魔法かも知れないぜ?どうよ。そういう話もかねて、今から飲まねえか?」
「えっ?」
この人たちはあれか。俺がロウゼンと戦うのを止めてくれた人たちか。今からクエストに行こうと思ってたんだけど……
今日は遠慮しておこうと、俺が口を開こうとすると、別の所から声があがった。
「えっと、今日は……」
「お?新人歓迎会か?ならたらふく飲もうぜ!」
言葉を被せてくるな!こっちは早くクエストに行きたいんだから!
諦めずにもう一回遠慮すると言おうとしたが……駄目だった。
「きょ、今日は……」
「良いな良いな!勝者に感想聞こうぜ!ついでに敗者にも」
「宴会なら賛成だ。あと、敗者って言った奴誰だ?出てこい」
また被せてきやがった。ついでにロウゼンも賛成してた。
なんなんだこいつら!人の話聞けねぇのか!
いや、まだだ。まだ諦めないぞ!
「だから、今日は……」
「あ、いつものですね。分かりました!お酒いっぱい開けときますね!」
おいー!受付嬢さん?あんたは常識人だと思ってたのに!あんたもそっち側の人間か!
俺が心の中でツッコミを入れていると、さっきの冒険者が肩を叩き、とどめとばかりに言い放つ。
「そんなわけだから……今日はお前の歓迎会だ!たくさん飲もうな!」
……さすが冒険者。まともな奴はいないか。
♢
なし崩し的に発生した宴会は予想以上に賑やかだった。
「プハー!おかわりくれー!」
「俺にもー!」
「私にもー!」
「ハイハイ分かりましたよー」
俺がいない所でも、普通に宴会していた。こいつら酒飲みたいだけなんじゃないか。
俺のとこにも来ている。何人も。そしてひっきりなしに質問してくる。
「なぁ、どこから来たんだ、お前?」
「と、遠くの村から……」
「剣は誰に教わったの?」
「我流と言うべきかな……」
「なぁ、試しに俺と付き合ってみない?」
「うるさい。俺は男だ」
「俺だけ態度違わない⁉️」
こんな感じだ。お陰で俺は全然食事にありつけてない。たまに告ってくる奴もいるが、雑に断っている。
みんな酔ってるせいか、すごい質問もしてくる。
「ねぇ、レイちゃんって彼氏とかいるの?」
「ブフーッ!」
「アハハ!その反応は一度もないね。良かったね男衆!レイちゃんは処女だよ!」
「「「うおーーー!!!」」」
「当たり前だ!俺は男だ!ちゃん付けするな!あと、お前らも喜ぶな!」
ツッコミ疲れる。今のところ女冒険者さんからのセクハラしかないが、男がやってきたら迷わずぶちのめしてやろう。
かくいう俺もだいぶ酒が回ってきた。クラクラするし、ピントが合わない。思考もうまくできない。もうそろそろ宴会が終わってくれるのがせめてもの救いか。
その後、宴会は終了し職員さんたちが片付けをしていた。お勤めご苦労様です。
ちなみに俺はもう限界だ。さっきギルドの横の細い道でモザイクを出してきた。
「じゃあな!レイ!今日は色々楽しかったぜ!」
「期待してるから!頑張って!」
「お、おう……さよなら……」
今日一番にぐったりしながら、宿に帰る。なんか今日、ぐったりしてばっかな気がする。
(すごく少年漫画っぽい流れになったが、まぁいいだろう。明日から冒険頑張るぞ!)
改めて闘志を燃やしながら、重い足を引きずって帰った。
…………次の日、俺は二日酔いで1日寝込んだ。やっぱ強引にでも断っときゃよかった。
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