新たな人生
イラリオで一泊し何事も無くテレイヤへと到着した。
昨日は宿も食事もミレーヌさんと一緒に取らせて貰った。
大手取引先ともなれば、道中ならば互いの利益供与で済むが終わってしまえ
ば過剰接待になり受け身に成らざるを得なくなってしまう、今回はそれでな
くともメイドさんの件で劣勢に廻らざるを得なかった。
なので今日の歓待は総てお断りして総て自前だ。
送られてくる請求書の内容には少し怖いものがあるが、自分の持つ矜持をそ
う易々と曲げる程、私は腐ってはいないつもりだ。
さて、ここまで来た最大の案件から処理して行くとしますか。
ここテレイヤは他の国と大きく違う所は城壁が丸く無いと言う所。
四角形だ、土地の有効活用と整備の効率化を優先した結果なのだろう、戦術
的にも丸よりも四角の方が実は守り易いのだが私の知った事では無いので割
愛だ。
配置的には他と変わらず中央に高城、それを取り巻く様に重要施設が密集し
ているこちらの世界に来て1番困ったのが案内看板が1つも無い事だ、建物は
在ってもそれが何の建物か判らない、どの国も同じで行政機関には絶対に無
い、これだけ平和になったのだから看板位は欲しいものだ。
ウロウロするのも嫌なので1発で判る人に聞く事にし其所へと向かう。
高城正門前の門番、ここに立つ門番だけはどの国でも城下の事を熟知してい
るここへ来て感心したのは正門脇に”門番所”が有った事だ、向こうの世界の
交番位の広さがある、やはり経済立国は気を使う点が違うのだと思う、詰め
ている門番は2人、1人は市民相手に道案内をしている様なので手空きの門
番に声を掛けた。
「すまない、政務院の奴隷管理課に行きたいのだが場所を教えて貰えないだ
ろうか」
するとテキパキと道順と距離、院内のどの辺りに有るかまで丁寧に教えてく
れた。
感心する事しきりだ、行政はこうでなければと言う見本だな。
奴隷管理課までは迷う事無く辿り着いた、因みに今付いて来ているのは2人
だけ、サラと奴隷ちゃんだ。
テキパキと事務処理を済ませていく、2人の所有者名義を解除し終わり係官
が尋ねる。
「新規所有者名義はどなたになさいますか?」
「所有者が居ないと問題が有るのですか?」
「いえ、未定で出る問題は首輪の取り付けが出来ないと言う事と盗難時に登
録されてしまうと取り戻せなくなる事ですね」
2人を見遣ると登録してくれと懇願しているのが判った。
然し、私の出した結論は”空白”だ、登録はしない。
2人の首輪も外され、晴れて自由の身となった。
2人を伴い政務院を後にするが、まだ城下には行かない、この辺は人も殆ど
居ないが人目の届かない場所へと移動し2人に話掛けた。
「これから貴女達に魔法を使います、そこに2人並んでジッとしていてくだ
さい」
そう言って2人の胸に手を当てて魔法を発動する。
淡く煌めく光りが2人を徐々に包んでいく・・・
全てを包み終わると砕ける様に弾けて消えてゆく・・
セリアは2人の強力な呪いを数瞬の内に解除してしまったのだ。
「では貴女達に尋ねます、サラ貴女はこれからどうしたいですか?」
「叶う事ならセリア様に一生お仕えしたいと思っております」
「ミラ、貴女はどうしたいのですか?」
「あたしもお仕えさせてください」
「それで良いのですね?2度と心の自由は取り戻せませんよ?」
2人は顔を見合わせ声を揃えて言った。
「「それが私達の望みです」」
「判りました、では貴女達に名を与えます、サラ、ミラ貴女達はセカンドネ
ームにセリアージュを名乗りなさい、サラはサラ・セリアージュにミラはミ
ラ・セリアージュに、貴女達を私の眷族とします」
そう言うとセリアは胸に当てたままの手から再び魔法を発動した。
煌めく光りを纏いゆっくりと、流し込む様に・・・
光りが消え行き、2人が目を開ける。
「どうですか?」セリアが微笑みながら問い掛ける
2人はおもむろに片膝を着くとその問いに応えた。
「これ程の幸せをくださり有り難う御座います今後は貴女様の為に全て捧げ
て参ります」
「貴女達は私の眷族になった事で魔法が使える様になりました私はサラを鍛
えます、サラはミラを鍛えなさい魔法の鍛練も忘れずにね?」
この先このセリアージュ姉妹の名が世界に轟く事になるとは誰も思っていな
かったのだった。




