アルリアへの帰還
14日夕方、セリアはようやくアルリア王都へと戻っていた。
開戦時イネスに滞在していた事になっていた為、徒歩旅程に合わせての帰投
だ。
その辺で ブラブラしていても仕方が無いのでアルリア近郊の水無し川の上
流で鉱石から金属の採取などをしていた、暫くは何をするにも困りはしない
だろう。
帰り着いてまず向かったのはセリア商会、まだ就業時間内なので帰着の連絡
だ。
事務所入口から入り店先に顔を出すも今日はアンジュでは無かった。
居場所を聞けば現場に出ていると言われ其方へ向かう。
向かった先はあたしの家の隣である。
温泉を掘った翌日の朝、アンジュに企画案を口頭で聞いたのだが、その足で
現地へ行き、当日の内に買収と改修工事が始まったのだ、建設施設は高級温
泉旅館と庶民向け銭湯、銭湯は明日開店予定だ。
旅館の方は従業員の教育に時間が掛かるので20日のオープン予定である。
明日開店の銭湯の方だろうと、其方へ顔を出すと案の定アンジュが、真剣な
顔で仕上がりのチェックをしていたので声を掛ける。
「やぁアンジュ、精が出るね、明日は行けそうかい?」
『あら?代表お帰りなさい、当然仕込みはバッチリです、ですが明日はプレ
オープンですので招待客のみですから』
「頑張るのは良いけど、根を詰めない様にしてくださいね」
『有り難う御座います、代表にそう言われるともっと頑張れそうです』
(あ~そう言えばそう言う人だったな~この人は)
そう言うあたしも自宅に帰ってから旅館従業員の”接客マニュアル”とか”料理
レシピ”なんかを書いていたので人の事は言えんな。
夜食事を済ませてから相手の食後の時間を狙い撃ちしエルフ大使館へと赴い
た。
父への帰投の報告だ、大使の娘たるものしっかり仕事は熟さねばならない。
階段を上がり、衛兵に軽く会釈をし通り過ぎる、向かうは会食室ドアの前の
衛兵に食後な事を確認、ドアをノックし中へ入った。
正面に座り紅茶を嗜む父にエルフ式の敬礼をし、帰還の報告をした。
他に用も無いので母と姉に軽く会釈をし退室しようとした所で父に呼び止め
られた。
”少し聞きたい事がある”と着席を促されて座る。
『私はあの時イネスに滞在と言ったがイネス防衛本部寄宿舎に行かなかった
のは何故だ?』
これは元々予想していた質問だ、返答に窮しはしないので直ぐさま答えた。
「イネスからの探索魔法では精度に欠けますので、イネス北方5リックにて
探索拠点を構築し探索任務に当たっておりました」
『そうか、その後帰還命令で徒歩で帰還したと言うのだな?』
「その通りです」
その後父は暫く黙考してから口を開いた。
『お前はエレナ・ライカと言う女性を知っているな?』
そこであたしは言葉を失い固まった。
それを見ていた父は、溜息をつき語り始めた。
『戦闘終了の当日の夜、家族がここに居ると聞いた彼女はお前がここに居る
と思いここへ訪ねて来た、”セリアは居るか”と、私は”今はイネスに居る”と
答えたのだすると彼女はこう言った”そのイネスから戻り二人で開戦前にベ
ルゼに居たらしい”とそれで彼女が気が付き参戦した時、敵はアルリア軍よ
り少なかったそうだ、あまりにも呆気なく戦闘が終わってしまったので残敵
狩りをしていたら”セリアに置いて行かれた”と”くるま”が無いので居ないか
とも思ったが訪ねてみた、アルリアの高城前で配給を食べているので声を掛
けて欲しいと言っていたぞ?』
何も言わないあたしを見て父は続けた。
『あの日ベルゼには我が軍の派遣員も居てな、ダンジョンの様子を見に砦壁
の上に居たのだ、当然戦闘前から総てを見ていて報告を受けている”くるま”
とはあの箱の事か?イネスから開戦前に着くとは凄い速さだな、私も乗って
見たいものだ』
そこで母から横槍が入った。
「貴方は実の娘を虐めて楽しむ趣味でもお有りでしたのかしら?」
その言葉に父が顔色を変えて話を戻した。
『すまん、話が逸れてしまったな、あの時アルリア軍は敗色が濃厚だった、
それがたった一人によって助けられたのだ、お前があの人らしき者に会う事
が有るならば、一言礼を言っておいてくれ”ありがとう”とな話は以上だ、も
う下がっていいぞ』
そしてあたしは何も言わぬまま、お辞儀をしてその場を立ち去った。




