心配事
新米女神ティアナは重い足取りで上司の元へ月に1度の定期報告へ向かって
いた。
正式着任以来3度目の点検と観察状況報告だが、現場担当官との折り合いも
悪く、あの地へ行くと非常に疲れるし神経が磨り減るのだ、帰って来て”もう
2度と行かない”と思う無駄な努力が足取りの重さを更に加速させていた。
「只今戻りました~」
『お疲れ様、戻って直ぐで悪いが報告を頼む、時間もあまり無いのでな』
溜息を吐きつつ目の前に来たティアナに(然もあらんな)と
思いつつ報告を待つ統括神であった。
「総体点検は現場担当官と共に行動、結界、南大陸内共にこれと言った異常
は見当たりませんでした」
『結界の魔法探査はしたのか?』
「はい、行いましたが異常反応は観られませんでした」
『うむ、今回は大丈夫な様だな、(色んな意味で)ご苦労だった』
問題が起こって引っ張り出されるのも嫌なので今回は手抜きをしていないテ
ィアナであった。
戦闘より数日後、イーベとジー将軍達は広大なアルリア平原に点在する林や
森に身を隠す様帰還する為に移動していた、たまにアルリア軍の討伐隊が姿
を現すからだが無勢の為か森の中までは入って来ない、戦端を開けば良い勝
負が出来そうな位は居るのだが、ここでそうする意味は無い。
あの戦闘の状況の報告と開戦に至った経緯を知るまでは死ねない。
あの戦いとは到底呼べない殺戮。
あの日私は勝利を確信していた、3日近くを走り通し開戦予想日をずらし敵
に準備をさせなかったからだ。
私は最初何が起きたのか判らなかった、兵士が列を成してバタバタと倒れて
行った、数瞬の間に三割が減り、また数瞬の後に”白い劫火”で三割が消え去
った。
指揮どころの話ではなかった、恐怖に縛られ突き進むしか出来なかった、三
度目の攻撃の後、敵とぶつかり漸く正気に戻れた時には既に手遅れだった。
あんな戦い方が出来る者が居ると判っていたら最初から開戦などする筈もな
いか、勝てる訳が無いのだから。
生き残れた者が無事領地に戻れる事を祈る事しか出来ないイーベ将軍だった。




