二兎を追う者
雨の月{6月}某日ダークエルフの里
首都テレス、政務院宰相執務室に長旅より帰ったばかりの外交官ランス・ハ
ルデマンの姿があった。
「それで?豚共の出方はどうだったのだ?」
『其れが最初は非常に乗り気だったのですが、ある日突然渋り出したと思っ
たら止めるの一点張りでこうやって追い出されて来た次第です』
「それは少しおかしな話だな、向こうにしてみれば、散々ちょっかいを出し
て来ていた相手だ、ここで厄介払いが出来るなら、その方が都合は良いと言
うものだろうに・・・
攫って犯して喰うしか能の無い連中に情けをかける筈もなし・・・
何処かから横槍が入ったと考えるべきか?」
『その可能性は大いに有るとは思いますが情報時限で考えますと随分絞られ
ます距離的にはオーガ、ドワーフ、ライカ、アルリア、精霊群、未開の民位
ですが』
「にしても前出の4国には何1つメリットが無い、可能性が有るのは四大精
霊か未開の民位だな、だがそれをする意図が判らん、四大精霊はあそこに入
りさえしなければ何もしてきはしない、未開の民も同じだリザードの奴らに
はそんな高等な企みなど出来るはずも無い、後顧の憂いが無いからこそ今回
の作戦計画を立てたのだ、まさか開始前に頓挫するとは思いもしなかったぞ」
『遠方国が念話なりの通信手段を手にしていれば話は変わりますが?』
「それで可能性の出る国は?」
『エルフを除けば、帝国、魔族、共和国ですね』
「伝え聞いている各国の内情を鑑みてもメリットは何も無いではないか?
まぁ時差が大きいからその後の動向によっては有るかもしれんがな」
『それでは我々には動き様が無いと言う事ですか?』
「そう言う事だな、今ならお前の外交経費で済む話だ、諦めるしか無かろう
、違うか?」
その結論に落胆したランスは恭しく礼をすると”失礼します”と言って退室し
て行った。
「目の上のたんこぶを取る一石二鳥のタイミングだと思ったのだがな、世の
中そう上手くは行かんと言う事か」
ランスを見送った宰相レジス・クランデはそう呟くのであった。




