終戦
トール近郊、この辺は林は在るが大きな森は無く、見通しも割と良い緩丘陵
の穀倉地帯戦闘で踏み荒らされるのは心が痛むが苦情を言える場面では無い
ので考えないに超したことは無いと思考から排除した。
(あたしの方が人の事が言えん立場になるかも知れんしな)
とか考えている内に敵の先頭が見えてきた、おおよそ幅は100リック{1
00m}後続はまだ見えない。
一緒に連れて来たエレナはまだ車の中で気を失っている、まぁそう言う風に
走って来たのだから当たり前なのだが・・・
敵の数は三万六千このままでは勝ち目は薄い、殲滅したいがすぐそこがトー
ルの町、目に見える大魔法は使いたく無いので撃ち減らす事にしてへ◯ート
を出し伏せて射撃姿勢を取る。
ジャベリンタイプの貫通弾を弾倉内にイメージし創り上げる、目標は敵中央
部分水平、スコープはまだ無いので目測、探索を打ち測距、射程2ルークに
全軍が入るのを待つ。
・・トリガーを引いた瞬間”シュボッ”と音がした、迫力は無いが反動はやは
り凄い、要改良だな。
弾速は2000リック{2000m}戦車砲より速い、隊列を見れば弾丸の通り
過ぎた所だけ背が低い、隊列の長さから考えればおよそ600位は瞬殺だろ
う、十秒間隔でそれを延々と繰り返す。
合計20発撃ち込んだ所で敵が走り出した、こちらを認識したのだろう。
弾種を圧縮ファイアーボールに切り替えて5発撃ち込む、着弾で炸裂するタ
イプだ。
既に敵との距離は500リック{500m}を切っている、頃合いなので移
動する事にした。
一旦南へ走り友軍を認めて東へ転進する、1500リック程離れ両軍が衝突
する前に貫通弾を6発程、車窓射撃をして様子見を決め込んだ、ここから見
てもゴブリン軍の方が少ないのが判るので
エレナを引きずり降ろし車を収納、エレナを叩き起こした。
「ほら!!起きろ!!エレナ!!」
『んん?何だ?お昼ご飯か?』
「何寝ぼけてる?戦争だ!行くぞ!!」
『ん?お?おぉ!判った!!』
その後の戦闘は1時間も続きはしなかった、半数以上減った辺りで敵軍は散
り散りに逃走を始めた。
友軍もそれなりの死傷者が出ていたので追撃は掛けずに救護に廻っている、
掃討戦は各都市に任せるのだろう、エレナは物足りなそうに敗残兵を追い駆
けて行ったがあたしの知った事では無いので放って置こう、飽きたら勝手に
帰って来るだろう。
辺りを見廻すと畑が随分荒れている、タイヤの跡もクッキリだ、”農家さん御
免なさい”と心の中で頭をさげておいた。
ここでのんびり眺めているあたしは現場に着いた時に全身に隠蔽魔法をかけ
ていたりする、流石に正体がバレる訳にはいかない、あたしはまだイネスに
居る事になっているのだから。
そんな光景をトールの砦壁の上の見物人に混じり勝利の歓喜とは違った感情
を持った者が数人眺めていていた事に気付く者など誰も居なかったのだった。




