アデーナ街道にて
アルリア王国東部、帝国国境より五ルーク、ここから二十ルーク南へ下れば
、光のダンジョン、イザナギの町が有る。
ダンジョンでひと汗流すのもいいものなのだが、今回の目的に合わないので
西方のイネスを目指す、イネスまでは五十五ルーク無理をすれば一日で着く
がこの先予定が有る訳では無いので足の運びも緩い、偶には、のんびり野営
も良いものだろう。
帝国内と違いアルリア王国での旅程に緊張感は無い、我が領地と違い風景の
色も目に染みる程の緑だ、遠い祖先が何故この地を選ばなかったのか甚だ疑
問に思うが、心の何処かで”ここでは無い”と告げている気がしてならない。
そうは思っても滅多に観られない景色なのだから観光では無いにしても、少
し位はそんな気分を味わってみてもペトラは許してくれるだろう。
この街道には、四十ルーク置きに野営地が有る、イネス手前二十ルークに一
つ有り予定よりは少し早いのだが、今日はここで野営をする事にした。
辺りを見廻すと既に野営の準備をしている商隊や旅人が数組いる、何処へ行
くかは知らないが、町を避ける理由は大凡節約なのだろう。
空いている木陰に陣取り、野営の準備をする。
夕食にはまだ早いので情報収集も兼ねて、商隊の男に声を掛ける事にし、近
づいていく、馬車を見れば横の煽り板に帝国の徽章と数字が焼き印されてい
る、荷台は空に近い。
間違い無くアルリア王都方面からの帰りである事を確証したので声を掛けた。
「お疲れ様です、アルリアから帝国へお帰りですか?」
『ん?ああ、そうですよ帝国への帰りです』
「行商の方にしては荷物が少ないのではないですか?」
『この間の災害でアルリアは物入りなんですよ、生活用品や食料品何かは持
って行けば飛ぶ様に売れますからね、満載で行けば、帰り荷が無くても儲か
るんですよ』
「成る程、それで荷物が少なかったんですね、因みに”災害”とはどんな災害
だったのですか?」
『アルリアへ行かれるのですか?災害と言うのは”地揺れ”の事ですな、街道
の修繕は大体終わっているのですが、二十ルーク程まで近付くと至る所に地
面の亀裂が残っております、王都の城下は既に綺麗に片付いておりましたが
大層死傷者も出たそうです、城壁などはまだ崩れたままでしたな、城門など
は直っておりましたが』
「そうだったのですか、何か有ったらしいとは聞いていたのですが地揺れと
は知りませんでした、教えて頂き有り難う御座いました」
『あぁ、それともう一つ、何処かと開戦になるかもしれないと言う噂話が真
しやかに流れていましたのであちらに行かれるのならお気を付けになられた
方が宜しいですよ』
「重ね重ねの御忠告有り難う御座います、気を付けて参ります」
軽く会釈をして野営場所へと戻った。
腰を降ろし際ベノンから、紅茶の入ったカップを受け取り、先程の話を軽く
した後黙考して思考の整理を始める。
(到着を待たずに事の真相は掴めそうだが、かと言って確証は無い、私の予
想が正しいかは開戦してくれれば、ハッキリする訳か、ならば行くしかない
な)
ベノンにアルリアまで行く事を伝え、明日早くに出立する為、早めに就寝す
る事にし横になるもワクワクしてなかなか寝付けない自分が居る事に気が付
いたのだった。




