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雨の月六日

ゲオルトは領館のバルコニーから庭先に集まる将軍直属部隊千人の整列を眺

めていた。

もうゲオルトの演説は終わっている、今は各将軍達が激を飛ばしていた。

領館の庭先は全軍を集められる程広くは無い。直属部隊のみの激励会だ。

実りが有ればもう三日は早く・・・いや実りが有れば戦争などする筈も無い

か・・実りが悪く糧食の収集に時間が掛かるのが判っていた為にこの日の出

兵とななったのだ。

ゲオルトにとっては早かろうが遅かろうがどちらでも良かったのだが。

出兵の時間と成り出立の号令が掛かる。

歓声と共に隊列が動き出して行く、全隊が動き出すのを見て将軍達が敬礼を

して立ち去って行く。

開戦予定は王都前二十~三十ルーク辺りで十四日、果たしてどれ程の兵が

生きて帰れる事か神に聞いてみたいものだ。

そんな事を考えながら遠離る隊列を見えなくなるまで見送ったゲオルトであ

った。




ライカの狐人族エレナは今城砦都市カミラに居た。

ライカに戻ったその日に族長ブラドを説き伏せ、翌日にはアルリア王国へと

再度出立したのだ。

エレナはカミラを素通りしハヌマンの町で昼食、更に足を伸ばし王都より二

十ルーク辺りで野営、残り二十ルークで七日昼にはアルリア王都に着きたい

と思っていた。

順調に旅程を熟し昼も近くなった頃、ハヌマンの町が見えてきた、今日は天

気も良く風も穏やかだがハヌマンの右に有る風のダンジョンの辺りで砂埃が

舞っている、軍隊の行進でもあるまいにと訝しみながらも進んでいく、ハヌ

マンの砦門近くまで来た時に漸くそれが何なのか理解した。

戦闘である。

既に砦門は直ぐそこなので急ぎ門番へと近づき声を掛けた。

「済まない、話を聞かせてくれないか?」

『あぁ、良いが手短に頼むよ、魔物が襲ってきたら逃げなきゃならんからな』

「魔物?!あれは魔物と戦っているのか?」

『そうさ、ダンジョンから溢れてくる魔物と戦っているんだよ、三日前から

出始めて丸二日、昨日応援が来たけど余裕な程でも無いみたいだぜ、アンタ

も加勢するかい生き残れば報奨金が出るぜ』

「ああ、そうさせて貰うよ」

エレナはそう言うとダンジョンに向け駆けだして行く。

ダンジョン近くまで来たエレナは戦場全体を睥睨し、全体を把握した。

ダンジョンから出て来ているのはコボルトが三割、七割がキラービーだ。

これでは、苦戦する訳である、キラービーが先陣で縦横無尽に飛び回り攻撃

を仕掛ける、上を向いて対抗している隙にコボルトが斬り掛かる、これでは

手練れで無ければ避けられない。

死傷者が増えて行くだけである、転がっている魔石の数から湧き出る数は減

っている様だが交代要員も少なく、下手をすれば押し切られると判断し即座

に参戦した。

群がり来るキラービーをバスタードソード一撃で斬り落として行く、両手持

ちで一匹ずつ確実に仕留めて行く、片手で振り回すとキラービーの速度に付

いて行けなく成りそうだからだ。

こんな時にはレイピアが欲しいものだと思うが詮無い話である。

コボルトから仕留めたいがそうも行かない、相手の動きに翻弄されない為、

先手で動き人を避けつつ正面戦に成らない様、走り抜ける様に突き進んで行

く、混戦で立ち止まる事は限り無く死に近づく行為、止まれば狙われるので

ある。

そんな攻撃を幾度となく繰り返し、小班交代で対応出来る様になったのは篝

火が必要になる頃合いだった。





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