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家族の絆

最近自分を見つめ直した時、自覚するのは”女”である事だ、”男であった”と

いう意識は余り表層には出て来ない、”そう言えば”程度にしか思い出さない。

二つの知識についても一人のあたしが経験してきたものの様に感じている。

それでも現状を鑑みれば理解出来ない事は無い、それは”あたし”と”私”が

お互いを認識しているからではないかと思うと辻褄が合う。

しかし、時々ふと二人に経験の無い知識を思い浮かべる時が有る、普通であ

れば”ひらめき”で済むのだろうが、そう言えない事情があたし達には有る、

表層に出ない”質の高いそれ”が関与しているのは確かだ、若しかしたら表に

出ているのかも知れないが、あたし達には判らない、”それ”に気が付いたの

は企画書を書き上げた時だ、そんなものはこの世界には無いし向こうの世界

でも関わった事も無い、書式も仕様も知らない筈だった。

自分に自分の違いなど判る訳も無い、気が付いた事自体が奇跡に近い”いつか

自分が消えるのではないか”と言う不安が常に纏わり付いている、自分が自分

で有る確証が持てない。

「裏付けが欲しい」”あたし”わたし”がまだ残っている事を。


仕事が終わり、向かいの酒場で食事を済ませ、帰路に就いていた。

心の片隅に有る漠然とした不安を押し込め、お風呂に入れる喜びで押し消そ

うとする。

そこを曲がれば自宅だが、あたしの脚がそちらへ向く事は無かった。


目の前にはエルフ大使館、ついこの間まで住んでいた所なのに敷居が高く感

じる。

暫く眺めていると後ろから声を掛けられた、見れば護衛のテオである。

『セリア様、どうされたのですか?』

「あぁ、クラーシュ様お疲れ様です、なに、ちょっとした哀愁に浸かってお

りました」

それを聞いてはにかむ様に笑うとこう告げた。

『お三方とも御在宅ですのでどうぞ中へお入りください』

まぁ、入るだけならなんて事は無いので、後ろから付いて行った。

後ろを振り向きテオが言う。

『皆さんはまだ食堂にいらっしゃいますから、そちらへどうぞ私は他に仕事

が有りますので、これで失礼致します』

テオと別れ、食堂へ向かうと扉の前に護衛が一人、あたしを見留め扉を開け

てくれた。

室内に入ると一斉に視線が集まる。

一瞬の雰囲気を読んだのか母が声をを掛けてくれた。

『あら?どうしたの?急に来るなんて昔みたいに甘えたくなったのかしら?』

そう言われ、外れてもいないかと思い微笑みながら母に返した。

「そうかもしれませんね、急に母様達の顔が見たくなりました」

席に就けと言われ着席すると間髪を入れずに紅茶を出された。

紅茶を嗜む静かな空間に何時もと違う雰囲気を察したのか、母と姉が父に目

配せをした。

〖私はまだ仕事が有るのでお先に失礼するよ〗

父はそう言うと給仕を連れて退室して行った。(流石は父様、空気が読める)

父が退室した事を確認し、母が口を開いた。

『それで、どうしたの?』

「母様と姉様に聞きたい事が有ります」

暫しの黙考の後、意を決して話出す。

「あたしは・・誰に見えますか?」

母と姉は顔を見合わせた後、母を手で制し姉が切り出した。

〖貴女が意識を取り戻した後、貴女は私をユリアと呼んだ、暫くしてから姉

様に変わった、そして大して魔力を込めた風でも無いのに木の幹にボーガン

で大穴を開けた、そしてワーウルフとの戦闘で何故か剣で闘い使えない筈の

土の高等魔法を使った、言葉遣いも丁寧になった、そして私に対する態度が

変わったわね〗

口の端を受け母が口を開いた。

『あれ以来、甘えなくなったわね、それと紅茶を美味しそうに飲む様になっ

たわ、あとは恥じらう様になったわね!後は2日続けて同じ食事でも文句を

言わなくなったわ』

「そんなに・・違いましたっけ?」

〖倒れる前は私を姉様とは呼んだ事は無かったわ、魔力量もそこそこ一緒、

戦闘も魔法をぶっ放して終了、私に対抗していたのに頼る様になった、何よ

り私から奪う事はあっても物をくれるなんて事は一切無かったわ〗

”そうだったわね”と母がケラケラ笑い後を継いだ。

『ユリアと何か有る度に私を味方に付けようと甘えて来たのよねぇ~紅茶は

渋いとか言ってたしお風呂上がりに素っ裸で堂々と歩く貴女を見た時の、あ

のレオンの所在無さったら見ていて可哀想だったわ』

腹を抱えてケラケラ笑っていると追い打ちを掛けてきた。

『そ~そ~、レオンも最近はセリアも仕事に対する自覚と責任感が出来てき

たって喜んでたのよ?』

(どんだけダメダメだったんだあたし・・)

”久し振りに笑ったわ”と母は喜んでいるが、あたしの立つ瀬が無くなってし

まった。

凹んでも居られないのでこちらから切り出した。

「あたしに聞きたい事が有りますよね?」

『無いわよね?』母が姉に尋ねた。

〖無いわ〗

そう言った後、姉は一つだけ教えてと言い質問をしてきた。

〖意識を取り戻した時”私”と言っていたのに、何故”あたし”に戻した訳?〗

答えは”彼女”の記憶にしか頼れないので素直に応える事にして返事をした。

「姉様と同じは嫌だったからです。」

最後の質問で”自分達”であった事に気付き涙が溢れてしまった。


















話も進み予告もしましたので、予告に合わせてあらすじを追加しております。

明日から暫く夜21時頃の投稿になります。

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