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ライカ

遡る事三日前。凪の月{5月}三十一日ライカ領西部、アルリア王国城砦都

市カミラより二百四十ルークに在る狐人族の集落のテントにその男は居た、

この場所へ居を構えてから半月、今日はもう日も暮れたがそろそろ戻って来

ても良い頃合いだと考えていた、調査に手間取れば一日二日は延びるだろう

、横になろうかとしたその時に外に気配を感じて声を上げた。

「誰だ!」

その誰何に聞き覚えの有る声が返り、中へと招き入れる。

「ご苦労、まあ座れ、其れで向こうは何が有ったんだ」

せっつく様な質問に顔を顰めながら文句を返された。

『お茶位出せ!少しは休ませろ!お前は人使いが荒すぎる!もう少し気を使

え!だからお前はモテんのだ!』

頭から扱き下ろされてお茶の準備をしているのは、ここの狐人族族長をして

いるブラドである、扱き下ろした人物はここの部族の戦闘隊長エレナだ。

この二人、過去に恋愛に関する因縁が有るのであの様な言い方になる、ブラ

ドはエレナに頭が上がらないのである。

『大体お前は女の事を知らな過ぎる!強いだけで通るのは獣だけだ!』

「判った、判った、悪かった、謝るからその辺で勘弁してくれ!」

ブラドがお茶を出すと暫しの静寂の後ブラドがボソリと零した。

「やっぱり族長はお前がやらんか?」

『強い者の居らん部族に興味は無い、元々私は流れ者だ、同族のよしみで助

けはしたが強くなる気の無い部族にここライカでは未来は無い、何故他の地

へ移ろうとしない?』

「それはお前も判っているだろう?元々この辺の森は俺ら部族の縄張りだっ

た、昔は皆平和に暮らしていたんだ、最初はこんな事も有るのだと諦めても

いたが他の同族に会った時に聞いたんだ。

”この内戦を仕組んだ奴らが居る”ってな、俺はあの時、女も子供も老人さえ

も見境無く殺されていく光景を見て何も出来ずに逃げるしか無い自分が情け

なかった、”せめて一矢報いたい”そう思ってここまでやってきたんだ」

『憎しみを忘れろとは言わんが、それに捕らわれたらお前が死ぬぞ、それを

忘れるなよ?』

場の雰囲気を一蹴しようとエレナが話を切り替える。

『それじゃぁそろそろ向こうで聞いてきた話をしようか、実際の話カミラ迄

しか行っていないから真偽の程は定かで無いがアルリア王国首都で大きな”地

揺れ”が有ったらしい、首都から半径二十ルーク辺りまで地割れが出来たそう

だ、高城も城壁もほとんど崩れたそうだ、それが起きたのが凪の月{5月}の

十八日だったそうだ』

「そうか、天災か・・どうりでな、皆が怯えた理由がやっと判った、お前が

出てから三日程は争いが起きた気配が一切無かった、静か過ぎて不気味な位

だったからな」

『それとな、もう一つ小耳に挟んだ事が有るんだ、アルリアで戦争が始まる

らしい』





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