重なる不運
そろそろ城下を走り廻る兵士の姿が増えてきた。
通りの瓦礫は既に綺麗さっぱり無くなっているが、城壁の修理は北門周りが
完成しただけだ。
今日は二日、敵の王都襲来予想時期は雨の月{六月}十二日以降、城壁も平
らに総て崩れた訳では無い、壁門はないものの人の背丈以上に基礎部分は残
っている、今は門周りを急ピッチで修理している様な状態、籠城戦は期待出
来ない、場合によっては参戦しなければならないだろうとは父に言われてい
る。
大軍相手は初めてなので少し不安だ、何せ平和ボケの日本人なのだから。
そんな事無かれ主義だったあたしも護らねばならないものが増えてきた。
お店は壊れても直せるが、喪えば取り戻せないものがある、それだけは断じ
て許す訳にはいかない。
午前中は店番をし、お昼ご飯を食べながらそんな事を考えていた、午後から
交代して開発依頼の来ている魔導パソコンの魔法陣プログラムをしなければ
ならない、やる事も無いので不安を紛らわすには丁度良いのかもしれない。
さて、頑張るか。
二日の午後高城の兵士が冒険者ギルドへと駆け込んで来た。
震災後は兵士が居る事も有ったが今は落ち着いた為、人の数はそれ程多くは
無いそんな中、兵士が駆け込んで来れば目立たない訳が無い。注目を集めた
兵士はカウンターまで駆け寄ると声を上げた。
「ギルマスにお会い出来ますか、緊急案件です!」
受付嬢は鬼気迫る兵士の様子に、”少々お待ちを”を言い切らないうちに二階
へと走り出しノックを無視して扉をを開いた、声が聞こえていたのか声を上
げたのはギルマスだった。
『ここへ通せ』
それを受けて受付嬢は降りるのももどかしいのか兵士を手招きして中へと誘
った。
ギルマスは息を切らせた兵士を少し落ち着かせ頃合いを見て切り出した。
『それでどうしたと言うのだ?』
それを聞いて身を正した兵士が声を上げた。
「本日未明クトウの町とホテプの町にあるダンジョンより魔物が多数溢れ出
し、現在冒険者と駐在兵により抗戦するも劣勢なり至急応援か指示を求む、
との事です」
『今日の今日で判ると言う事は魔法伝令か?』
「そうで有ります、現在隣国の警戒任務中の魔法伝令兵が駐在中の為の速報
です」
ギルマスは暫し黙考し決断を下した。
『両町を放棄、テレーザへ向けて全町民の避難を指示、テレーザより護衛隊
を送る途中で合流し退避せよ、と伝えて貰えるかね?』
「了解いたしました」と言うと兵士は敬礼し伝令所へと駆けて行った。
それを見送ったギルマスは外の廊下で待っていた受付嬢に先程の情報と指示
に加えクトウとホテプを除く他のダンジョン町六箇所とテレーザへ早馬で伝
令を出す様指示をし受付嬢を見送る。
開戦間近の情報に冒険者がダンジョン潜入を控えていた事で魔物が溢れたの
だがこの時ギルマスは一つの可能性を見出していた。
『こんな時に・・・吉と出るか凶と出るか』
連休中は昼投稿です。




