疑心暗鬼
ちょっとシーン転換で日付が戻っております。セリアの父の名前を変更、修正致しました。
アルリア王国、北と西にクレア山脈を抱きそこを境に南と東に凡そ三百キロ
ほぼ円形の小国である。
山脈を北に越えれば仮想敵六国が横に連なり隣国同士互いに牽制していて小
競り合いが尽きない、南にベリー山脈、そこを超えると未開地である、東に
帝国(人族)、北東にドワーフ、南東にライカ(獣人)、南西にエルフ、西
のクレア山脈を越えるとダークエルフ、国と名が付くのはこの大陸では自国
を入れて三国だけである。
それらの国と地域(エルフを除く)とは友好の信書を交わしている。
エルフとは唯一同盟を結んでいる、この国の安寧はエルフとの同盟が肝に成
っているが、それが余り有効で無い事もニコル王は良く理解しているのであ
った。
震災翌日の朝、この国の王、ニコル・ローランスは高城の隣、騎士詰め所に
居た。
高城上部の崩落と他にも崩れる危険が有る為だった。
建屋の入口に衛士が一人、ドアには居ない。災害の援助や救援の為に出払っ
ているからだ。
詰め所では、とても王が使う物とは思えない様な机に向かいニコルが執務を
熟していた。
文字を書く音だけが響く中ノックも無く突然その男は入って来た。
『陛下!緊急事案がございます、何卒お時間を!』
「既に入っておるのに時間も何も無かろう?何事だ?」
その男はセリアの父、ハイエルフ駐アルリア大使レオン・トラーシュである。
『他国がこの地に向けて派兵の準備に入ったとの情報が入りました』
この時ニコルは驚かなかった、その可能性が在ったからだ。
「やはりな、して詳細は在るのか?」
『いえ、御座いません、攻めて来ると言うだけで・・・』
「お主はどこだと思う?」
『ゴブリン・オーク・オーガ・帝国・ライカ・魔族の順かと思われますが』
「わしもそう思う、北方六国は近年不作だと聞いておる、取り敢えず友好国
には大使を、仮想敵国国境の街道付近、クレア山脈の山越えルート付近には
斥候を密に派遣し監視させよう、各城砦領主にも通達を忘れるでないぞ」
『心得て御座います』
レオンは恭しく礼をすると伝令所へと向かった。
騎士詰め所を出て右へ曲がり進んで行く、高城前を通り過ぎた頃後ろから声
を掛けられた、高城の政務院から出てきたで有ろうその人はダークエルフ駐
アルリア大使クレル・フランテール、振り向くと”精が出ますな”と労われた
ので社交辞令で返す。
『同盟相手を手伝うのは当然の事ですからな、フランテール殿も里に御家族
を残され単身で赴任されていては何かと大変でしょう?』
「お気遣い有り難う御座います、妻の躰の事を考えれば少しも気になりませ
んよ」
『愛妻家でらっしゃいますな』
”それでは”と軽く会釈した時声を掛けられた。
「これからどちらへお越しですかな?」
『陛下に言伝を頼まれましたのでそれを伝えに、それでは」と
まだ公表する事も、出来る立場でも無いので当たり障りの無い返事でその場
を後にした、余り絡みたくは無い相手である事に変わりはないのだから。




