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目覚めてみれば

涼やかな風が頬を撫で通り過ぎて行く

まだ寝ていたい気分だが腹の虫が鳴ると共に一気に意識が浮上し目が覚めて

しまった。

ふと窓の外を見ると日も中天に差し掛かり顔に陽射しが当たらなくなってい

た。

ハッと我に返り胸に手を当てると

「やっぱりあるよ」

恐る恐る股間に手を伸ばし

「やっぱり無いよ」

深い溜息を吐きつつ周りを確認する。

左側には両開きの板窓が開いている、右側には木製の椅子とテーブルの上に

は同じく木製の水差し?とコップらしき物、顔を丁度右へ向けると扉が開い

たままで大きめのテーブルと椅子が見える、ダイニングだろうか?

微かに話声が聞こえ、起き上がろうと躰を動かすがあちこち軋んで痛い、

そう言えばひと月寝ていたとか言っていた事を思い出す。

仕方がないかとベッドサイドに腰掛け改めて躰を見下ろしたがやはり女であ

る。


茫然自失になったが腹が鳴って現実に引き戻され、椅子とテーブルを杖代わ

りに立ち上がったが如何せん、よろけてテーブルに当たり空のコップが大き

な音を立てて床を転がってしまった。

「セリア?起きたの?」

そう問い掛けられる、多分今日の朝私を看病してくれていた彼女が扉の向こう

から駆け寄って私を支えてくれた。

ここは多分「すまない」では無く「ありがとう」なのだろうと思い彼女に声

をかけた。

支えられながらもダイニングまで歩き一番手近な椅子に腰掛ける、斜向かい

には扉の付いていない出入り口が有り誰かが調理している様で良い香りが漂

って来ていた。

「ちょっと待っててね、今出来るから」

姿を見せずに声を掛けられた、女性だ。

暫く待つ間に辺りを見廻すと左側には扉が二つ有り他にも部屋が有る様だ、

キッチン入口の左側には食器棚、テーブルには椅子が四脚、右側は左手にド

ア、右手に横滑りの板窓が葉陰に揺れる陽射しを遮る様に開いている。

壁は横板張り、屋根は切妻、太い梁が通り天井板は無く、半透明のボールの

様な物が吊り下がっている、他には何も無い。

一通り見渡し、質素を通り越し最早小屋だなと思った頃、奥のキッチンから

土鍋の様な器をトレイに乗せて近付く女性に声を掛けられた。

「ハァ~イ、出来たわよ~病み上がりだから少し消化の良い物と思ったのだ

けどどうかしらね?」

そう言いながら出された器には細かく刻まれた野菜やお米?や麦?の様な物

が混ざったお粥と言うよりすいとんに近い物が入っている。

「まだ熱いから気をつけて食べるのよ?」彼女はそう言うともう二つ、向か

いの席に配膳しユリアと名乗った彼女と共に椅子に腰を下ろした。

「さぁ、冷めないうちに食べましょう」そう促され木匙で一口食べてみれば

薄い塩味で少し物足りない、最低でも味噌か醤油が欲しいが作って貰った上

に腹の減り具合が尋常では無い事に無言のまま掻き込んだ。

匙を止め、此方を見ているユリアと言った女性が柔やかな笑顔を見せると口

を開いた。

「おかわり、要るわよね?」

「・・・はい」










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