北の地
R15、種族特性で残虐な描写が有ります、敢えて柔らかい表現はしていませんので
気になる方はお控え下さい。
この土地の冬は厳しい、北の大海を挟み遙か遠方には年間を通して景観の変
わらない白い大山脈が連なっているのが見える。
漸く雪も消え恵みの季節がやって来る、ここ近年は不作が続きで餓死者も増
えている、隣国との小競り合いで奴隷として攫い孕袋として廻すにも派手に
やれば戦争になる、使い込んでも妊娠期間は短いが五十人も産めば壊れてし
まうし養殖しようにも生まれれば赤子はすぐに喰われてしまい上位種がもっ
と居て管理出来なければ打つ手が無いしその上位種もなかなか生まれて来な
い。
誤魔化すのはとうの昔に限界が来ている、ここで手を打たなければ自然増の
望めない私達ではこの先滅びるしか道は無い。
それも一つの選択肢なのだが、民は其れを許してはくれないだろう、深層心
理の大半を”生きて”殖やす”と言う本能が占め奪う事に喜びを感じる種族では
、幾ら止めようと私を踏み越えて選ぶ道は一つだろう、さて今年はどうした
ものか・・
そんな取り留めも無い事を考えながら、屋敷のベランダから大海原を眺めて
いたその時、締め切られたベランダへの扉が開き恭しく頭を下げながら部下
が歩み寄って跪いた。
『ご報告いたします!アルリアに派遣していた奴隷間者から連絡が御座いま
した、凪の月{5月}18日、アルリアに於いて大規模な災害が発生し死者、
負傷者多数、城壁、城は各所が崩落、城下も甚大な被害を被ったとの事です』
「・・・判った」
部下を手振りで下がらせ、篝火で暖められた室内に戻るとソファーに座り質
素な執務机を右手指先で叩きながら暫し考えた後、将軍達を呼ぶよう指示を
出した。
将軍と言ってもホブである、上位種は旧大戦以来出ていない、トロールでも
居れば心強いが無い物ねだりをしても仕方が無い。
そんな事を考えていると、無遠慮に入ってきた将軍達が執務机の前に有る会
議テーブルの席に着く。
着席したのを見計らい、其方に移動し着席したタイミングで右手前の血の気
の多いガーズ将軍が切り出した。
〖また、何処ぞの隣国との小競り合いの話ですかな?〗
そう言ってニマニマしながら腕を組んでふんぞり返った。
辺りを見回せば皆同じ様な顔をしているが無視して話を切り出した。
【十日程前、アルリアで大規模な災害が起きた、被害は甚大で多数の死者や
負傷者が出たらしい、城壁や高城、城下にも相当な被害が出たらしい】
『其れは大変そうですな、あそこは産業も余り無く農業主体の国で大して金
廻りも良くないと言う話ですからな』
全く以て他人事だと言う素振りで左奥に座るバル将軍が鼻で笑った。
【別に世間話をする為に諸君を呼んだ訳では無い】
訝しむ四人を見渡して、今後の方針を告げた。
【アルリアへ出兵する】
その言葉に目を見開き、将軍達は歓喜の表情を浮かべお互いを見合っている。
その様子を見て彼は思った。
(これが本能と言うものか、悲しいものだな・・・・)
その後四将軍と行軍行程の打ち合わせと作戦立案をして解散した、クレア山
脈登坂ルートは三箇所、南西、南、南東の比較的低いルートを兵士二千、民
兵一万で総計三万六千で三隊各ルートに斥候を放ちルート確保と偵察、南進
隊は下山後、暫く待機、両翼隊はロミルダ、グリンデの町を避け南進、西北
西と東北東より王都へ侵攻、南進隊はテレーザ手前まで進軍し停止、ロミル
ダ、テレーザ、グリンデの警備隊を引き付ける事で決まった。
進軍開始予定は雨の月{6月}六日と決まった。




