砦の町ルイーゼ
あ~、そよ風が心地良い、少し揺れるがこの枕はいい
もう少し寝ていたい・・・・
微妙な揺れに寝辛くなって枕に抱きつく形に寝返りを打った、その数秒後に
セリアは跳び起きる様に目が覚ます事になる。
回した両腕で確かめる様に揉んだそれはとても触り心地が良くもうひと寝入
りしそうになったが、それが何かに気が付いたからだ。
『あら!?起きたのねもう少し寝ていても良いわよ?』
半分寝ぼけつつも姉を見詰めるあたしに向かってユリアはそう言った。
状況が飲み込めず、暫く其の侭で居るとニコリと微笑みながら追い打ちを掛
けて来た。
『わたしのお尻の触り心地はどうだったかしら?』
焦ってしまってしどろもどろになったが少し俯き頬を染め、ぼそっと返事を
した。
「とても、良かったです姉様・・・」
それを聞いて満面の笑みを浮かべ
『そう、ありがとう』
そい言われ、顔が更に赤くなり顔を上げられなくなってしまった。
そんなあたしを引き寄せて、もう一度膝枕をさせる姉を呼びながら自然に
先程と同じく抱き付いてしまった。
『あら!?甘えん坊さんなのね、昔に還ったみたいだわ』
そう言われ姉の存在を確かめる様に抱き付き直すと再び微睡みの中に落ちて
行った。
程なくして、馬車の揺れが収まった事に気が付き頭を上げる
『丁度今着いた所よ』
言われて見れば領壁が見える、高さは10リック(約10メートル)程、
人の頭の高さの所に小穴が横一列に無数に開いている、それが上に向かって
四列、領門は見える限りで一つ。
衛兵が入領のチェックをしている、まだ50リック位あるので暫く掛かるだ
ろう。
何も考えず空を眺めてボ~ッとしていると自然と口から言葉が洩れていた。
「ルイーゼかぁ」
領内の道行きは昔と余り変わらない、道は石敷き、建物は石造り、焼きレン
ガ、木造と節操が無い、それも長い間戦が無かったせいなのかも知れない、
そう進まないうちにいつも宿泊している宿屋に着いた。
{砦の宿亭}である、馬車の護衛が降りて宿へ入っていく
あたし達は右奥の通路を裏手へ進み馬舎へと馬車を駐め、馬舎番に銀貨二枚
を渡して宿へと入った。
案内された部屋に荷物を置き、まだ日暮れまで時間が有るので出掛ける旨を
母に伝え宿屋を出る。
三本程横通りを戻り左に折れ、数軒過ぎた右側に在るのが目的の場所{エル
ザの魔法具店}。
勝手を知っているのでズカズカと奥へ這入り込んでいく、廻りの棚には乱雑
に物が置かれ、躰を斜めにしないと進んで行けない、奥へ抜けると目的の人
物が煙管を吹かして佇んでいる。
「エルザ婆、久し振り!」
そう声を掛けると視線だけをを此方に向け返事をした。
〖おお、セリアじゃないかい、そのババア呼び止めてくれんかね?
見た目は人族ならまだ四十代じゃ、流石に心に刺さるわ、大体一年振りの
第一声がそれでは喜びも消え失せるわ〗
「そう思うならその年寄り言葉を止めればいいだろう?
前にも止めれば改めると言っただろうに?」
〖第一声で言ったお前が言うでないわ!まったく・・・主も変わらんのう、
少しは物腰が柔らかくなった様じゃがじゃじゃ馬っ振りは変わっとらんの〗
「そりゃそうさ、で無ければ魔導師何ぞやっておれんからな」
そうカラカラと笑った後、真面目になって切り出した。
「所で、何か入荷しているのか?」
〖お~、入っとるぞ、ほれっ魔導原書〗
そう言いつつ足元から何やらゴソゴソと引っ張り出すと自分の目の前の机の
上にポンと放り出した。
「おおおお~!やっと有ったか、もう半分諦めていたが見つかると喜びも一
塩だな!」
両手に持って歓喜しているとボソッとエルザが言った。
〖但し、高いぞ〗
「いくらだ?」
〖金貨五百枚〗
「・・・・・取り敢えず十枚置いていく、暫くしたらまた来るから取り置い
てくれ、頼む!」
〖ああ、構わんよ、付き合いも長いし、どうせこんな物はお前さん位にしか
売れんからな〗
これで財布の中身もスッカラカンになってしまったセリアは一旦宿屋へと引き
揚げる事にした。
宿屋に戻り二階の部屋の扉を開けると、母と姉が優雅にハーブティーを嗜ん
でいた。
〖セリア、ここに座りなさい、少しお話が有るの〗
あたしが席に向かうのと入れ替えで姉はお茶を貰いに階下へと降りていった。
扉が閉まるのを見届け、母が話し始める。
〖貴女、躰は大丈夫?どこかおかしな所とかはないの?〗
一瞬何の事かと思ったが、この間のワーウルフ戦の事かと思い直し別段変調
は無い事を伝えたが、首を左右に振られた。
〖その事じゃ無いわ・・・ユリアが戻ったら話しましょう〗
余り間を置かずにティーカップとポットを持って姉が戻りお茶を注ぎ足す、
母に目配せしながら席に着いた姉が話を切り出した。
『では、聞きます。あのボーガンは何処で手に入れた物ですか?』
突然の予想外の質問に即答出来ずに固まるが、無意識に口を突いて出た言
葉に場が静まる。
「あれは、あたしが創った?・・・」
母と姉が顔を見合わせて、代わって母が聞いてきた。
〖貴女、土魔法使えなかったわよね?〗
それに対するあたしの応えに一瞬驚くが顔を見合わせて二人は笑い出すので
あった。




