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思い遣る心

オープン3日目、銭湯の客足は朝から行列が出来る程になっていた、新型パン

ツも好調だったがテレス支店で前倒し販売をしていた御陰で順調と言うレベル

で落ち着いた動きをしていた、そんな中、整理券を配らねば成らない程の盛況

を見せているのがセリアのセラピーブースである。


衆人環視嗜好の1人目のセラピーを終えたセリアは、流れを理解した4人にそ

の場を任せ、事務所横の倉庫を急遽セラピールームに改造するべく額に汗して

いる。

既にセリア建設には、銭湯の隣接地に店舗建設を指示しているが、とても間に

合う話では無いからだ。


午前中ギリギリでセラピールームを仕上げたセリアは、カウンターに座るアン

ジェへと声を掛けた。

「お疲れ様、様子はどうかしら?」

「ギリギリで回して今4人目だ、ニナと3人でやってる、部屋の方はどうだ?」

「出来たわよ、次の予約からコンビを組んで使って頂戴」

「そうか、それなら今入っている予約時間の隙間に入れてくれ、次の客からあ

たしがそっちの部屋へ入るよ、取り敢えず新人と2人で昼メシを食べてくる」

「了解よ、悪いんだけど戻る時私に何か軽食を持って来て貰えるかしら」

「はぁ~あんたは働き過ぎだよ、もう少し余裕を持った方が良いんじゃないか

?」

諦めの溜息を吐きつつも気遣うアンジェに、笑顔で返す。

「有り難う、でもこの後長期休暇を取らなければ成らないのよ、その前にこの

事業を軌道に乗せて置きたいの、私が居ない間にもう3人教育して置いて欲し

いわ、滞在は3日の予定だから旅程も合わせると8日間の留守に成るから御願

いね」

「何時からなんだ?」

「そうね、10日の昼には出るわ」

「何処へ行くんだ?」

「魔国のハンス邸よ」

「そりゃまた遠いな、お供は?」

「今回は連れて行かないわ、お呼ばれしてるのにゾロゾロと連れて行けないわ」

「向こうはそう思って無いと思うぞ?」

「短期の滞在だから1人で行くわ、貴女達も1人立ちする良い機会でしょ?」

「これは手厳しいな、でも帝国に着いたらティアの相手はしてやれよ?」

「えぇ、心得ているわ、その為の10日の出立ですもの」

「そうか、余計な事を言ったな」

「そう言う貴女の優しい所も私は好きよ?」

「あんたのそう言う所が1人立ち出来ない原因なんだけどな」

「あら?それは困ったわね、もう直し様が無いもの」

「だから、帰って来たらタップリ甘えさせて貰うさ」

「貴女も口が上手く成ったわね」

「あんたが相手だ、そうでも成らなければ相手にして貰えないからな」

「判ったわ、帰ったらの約束ね」

「あぁ、これで置いて行かれても暫くは頑張れそうだ」

「甘え上手にも成ったのね”暫く”だなんて」

「そう言って置けば、早く帰って来てくれるだろ?」

「仕方が無いわね、今回だけよ?それとイレーネの事、御願いね?」

「あぁ、任せておけ」

そう言ってセリアはアンジェの唇へと優しくキスをした。

アンジェにとってセリアのキスの効果は、その後4日間続くのであった。





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