セラピニスト
昨日、エラルド夫妻が長時間居たのが目立ったのか、昼を過ぎた頃からレクチ
ャー目当ての客が増えていた、その動向の急変に危機感を覚えたセリアは急遽
商会員を1人増員する事に決めた。
「ねえオルガ、1人増員したいんだけど誰か良い人居ないかしら?出来ればそ
の後の事を考えて4,5人転属予定者を見繕って置きたいのだけど」
「私は今年入会したばかりですから、紹介出来るのは同期生位ですが」
「あら?そうなの、今幾つなの?」
「今年16歳に成ります」
「・・・・でも個人接待に成るから体力も要るわね、人材育成も考えれば若い
方が良いか・・・」
セリアは独り言の様にブツブツと呟いた後、オルガへ言い渡した。
「オルガ、次のお客様から貴女も立ち会ってこの仕事を憶えなさい、貴女には
新店舗立ち上げの時、店長に成って欲しいの、個人をお持て成しする大変な御
仕事だけど、引き受けて貰えるかしら?」
「はっ、はい!宜しく御願いします!」
「それと取り敢えず1人紹介して貰えるかしら、副店長候補で将来店長昇格予
定者ね?2人が1人前に成れば貴女には全国店舗を廻る統括主任、その下の子
にはダークエルフの里のエリアマネージャーに成って貰います、セリア商会の
一角を担う部門に成るので、頑張って頂戴ね」
そして次のお客で立ち会ったオルガは、その時始めて業務内容を知るのであっ
た。
「あの、セリア様、私その手の経験が全く無いのですが」
「あら?奇遇ね、私もまだ乙女なのよ?経験としては攻めのBまでね」
「でも、貴女も参加して判ったと思うのだけど、この仕事は半分以上が医療な
のよ?」
「そうなのですか?」
「お客様の心に溜まったストレスを取り去るお手伝いをする御仕事で病気や事
故、家庭不和などを防ぐ事が出来るの、まだ試験段階だから出来る事は少ない
けど、出来る手立てはどんどん増やして行く積もりよ、だからやっている行為
だけで無く、お客様との会話の内容も重要に成ってくるわ、使う言葉1つで癒
す事も、貶める事も出来ると言う事は貴女にも判るでしょ?」
「はい・・・」
「だから、使う言葉は良く考えて使わなければ成らないの、それと貴女、魔法
は使える?」
「人並み以上には自信が有ります」
「遮音魔法は使える?」
「いえ、立ち会った時に始めて知りました」
「そう、保有魔力は多く無いのよね」
「え?そんな事、判るんですか?」
「ええ、判るわよ、貴女だとお客様1人がやっとの様だから、私の眷族に成ら
ない?」
「成るとどうなるのですか?」
「魔力は多分10倍以上に成るわね、私の指導を受けるとレベルアップが早い
わ、そして武闘派に仲間として認められるわね」
「ナ・リ・マ・ス!」
この日オルガは、セリアの話術とテクニックを漏らす事無く習得していったの
である。
そして閉店後、その道の初心者にも拘わらずセリアに一気にB+まで叩き込ま
れたオルガは、ニナへの憧れなど遠く彼方へ吹き飛んでセリア一色に染まって
しまったのであった。