王都への出立
昨夜は出立が朝早い事も有り早々床に就いた、辺りが明るくなり始めた頃に
母様に起こされる。
【セリア、準備をしておいて頂戴、その間に朝食を作るから】
と言いつつ布袋を置いて行った。
中身を見ると旅装具、エルフ定番のグリーンの上衣で半袖、裾は少し長い、
前面に蔓模様の金糸の刺繍が控え目にされている、グレーの短パンに白のロ
ングブーツ、薄茶色のグラブにプラチナカラーの小降りなティアラ、旅の
間の髪留めだと何故か素直に理解した。
手早く身支度をし装備も整える、小手、胸当て、脛当てベルトを巻いてアイ
テムを付けていく、左側にレイピア右側に結晶石、色は白、赤、黄、緑の四
つ、矢筒とボーガンも付けられるが今は付けずにテーブルに移動、外が何や
ら騒がしいが気にせず三人でいつもの朝食を取り終わった頃朝日が昇り始め
た。
食器類を片付け無意識の内に顔と口内に洗浄魔法を掛け装備を持って三人で
表に出た。
そこには、馬車に荷物を積み込む男性達と馬に跨がる弓を背負った狩人風の
男性が馬上で佇んでいた。
一人は馬を降りていて、こちらに気付くと声を掛けて来た。
〖お早うございます、アリア様準備が整い次第出立致しますので前の馬車に
お乗りください〗
【お早う、テオ、今日から暫く宜しくね】
〖おまかせください〗
と軽く頭を下げ、男性はその場をすぐに退いた。
馬車へ乗り込み際にチラリと見廻すとこのキャラバンは単騎の護衛二人を先
頭に、あたし達三人が乗った幌馬車に続いて荷物を積んだ幌馬車の二台で各
々御者と護衛が一人ずつの総勢9人になる。
護衛の身成はあたしと似た様なものだが強いて言えば短パンとズボン?の違
いで御者は村人Aにチョッキを着せた感じだ。
程なくして準備が整い出立となった、ゆっくりと村内を走る馬車の通りしな
に村民が手を振ってくる、幌馬車と言えども後ろに垂れ幕は無いので結構長
い時間営業スマイルで手を振るのは流石に疲れた。
先頭の護衛が結界を抜けた所で馬を止め様子を伺っていたが間を置かずに合
図があったので馬を止める事無く結界を通り抜ける。
すぐに周りを探ったがこの間感じたピリピリする様な殺気無く普段と変わら
ず小動物の気配だけだった。
暫く何事も無く景色を見ながら進んでいると護衛の一人が近付いて来てこの
先1ルークにて昼食にすると伝えられ空を見上げると既に太陽は幌に隠れて
見えなくなっていた、王都まで残り116ルーク、アルン峠手前まで2ルー
クであった。
少し走ると隊列は左に折れて行く、今までの道程が略直線で変わり映えの無
い森だったので、休憩場所に着いたのだとすぐに理解した。
馬車が止まるのを見計らいすぐに飛び降り背筋を伸ばす。
馬車に乗っていた御者と護衛四人が昼食の準備を始めた。
二人は北に見える小川へ水汲みと薪拾いへ、一人は荷下ろしそしてもう一人
が土魔法で手際良く竃を創っていた。
その光景を黙って見詰めるセリアが、その時何を観ていたのかを知るのはも
う少し先の事になるのだった。
初めて使った魔法が洗顔と歯磨きでした。そして三人目の・・・