その地へ至った理由
結界を抜けて村落へ到着する迄1時間以上の時間が掛かった、ここに掛けられ
た結界は、村を護ると言うよりもクレア山脈とライア山脈に挟まれた、この森
林地帯全てを護るものだとセリアは理解した。
ミリアに案内され、彼女の自宅へと車を横着けしたセリアは、ゾロゾロ入れる
程の家では無いのでアリエスを入れた3人だけで室内へと入った。
両親とミリアとの感動の再会劇を尻目にテーブル席で紅茶を嗜む女にセリアが
話掛けた。
「また会いましたね、フレイヤ様」
「遅かったわね、結構待ったわよ?」
その理解不能の会話にアリエスが混乱しているが無視するセリアである。
「で?それは誰ですか?」
「これは私よ?」
「こんな所で茶目っ気出さないで、簡潔に説明してくださいね?」
「貴女馴れ馴れしく成ったわね?」
「そう思わざるを得なくしているのは貴女じゃないですか?」
「言い返せない自分に、腹が立つわ」
「そうですか、まぁ、どうでも良いですけど、そのままでは不味いですよね?」
「そうなのよね、どうしようかしら、悩む所ね、彼を2人創る何てどうかしら
?」
「お断りします!大体からして女の躰じゃないですか!変な事考えてませんよ
ね!?」
「あら?一瞬で思い当たる貴女も凄いわね、とんでもないのが出て来るかも知
れないわよ?」
「そんなのは要りません!私が創ります!」
「あらま!?お熱い事、隅に置けないわね?」
真っ赤な顔のセリアが話を逸らしに掛かる。
「そんな事より現実的な方法を提示してください!」
「じゃあ、私を1割こちら側に移すから、貴女のも1割頂戴?」
「そうしたとして、減った分は如何するんですか?」
「だって貴女、自然に増えるじゃない、私が減った分も元通りに、均等に増え
る様に調整するわよ?」
「仕方が無いですね、1割そっちに混ざっても私の性格が出る事は無いでしょ
うから良いですよ」
「有り難う、セリアちゃん、それじゃあ早速移しましょうか」
2人で向かい合わせに席にすわるとお互いの胸に掌を当ててゆっくりと魔法を
発動していった。
そして魔法の粒子が全て消え去った時、セリアが突然フレイヤに抗議した。
「あっ!!フレイヤ様!どう言う事ですか!」
「あっ、御免なさ~い、彼のも1割取っちゃったわね」
「何ですか、そのわざとらしい言い方は!」
「そんなにプンスカ怒らなくても良いでしょ?均等に殖やすのは簡単だけど、
1つだけ別なのは面倒くさいのよ」
「だったら最初からそう言ってください!」
「あんまり怒りんぼだと彼に嫌われるわよ?」
「だ・れ・の・せ・い・だ・と・お・も・って・る・ん・で・す・か?」
フレイヤの頭を拳骨でグリグリする程、切れかけているセリアであった。
そんなセリアと拳骨の痛みを無視してフレイヤが幕引きを図った。
「後はユリアから、1割移せば器の6割だから何とか成るわね」
平静を取り戻したセリアが疑問の有る彼女の生い立ちを聞いた。
「所でそのレプリカントは誰が創ったんですか?」
「彼がこの世界に弾き飛ばされる前に干渉した世界の人間よ、そして彼の残り
の雫を持つ男よ」
驚愕するセリアがフレイヤへと詰め寄った。
「彼の雫は私の中に有るだけじゃ無かったんですか!?」
その問い掛けに真面目な顔で答えるフレイヤ。
「そんな訳無いのは良く考えれば判る事でしょ?貴女の中に彼は10、貴女が
6、私が4、要約すれば彼が5割、貴女が3割、私が2割、足りないのは誰か
しら?」
「・・・・7割の私の雫を持つ者が居る・・・」
「正解よ」
「彼よりも、寧ろ貴女の方が厄介なの、彼は飛ばされた時、波長の合うあの男
とぶつかって雫が入れ替わったけれど、貴女の雫は儀式の時に彼の雫に弾き飛
ばされた、意識の主導権が貴女に有る事自体が奇跡なの、まぁ、彼が居てこそ
の話なのだけど」
「では、ユリアも・・!」
フレイヤは掌でその言葉を遮ると優しくセリアに語り掛けた。
「安心して、ユリアの場合は私が残りを預かっているの、何時でも元通りに戻
せるわ、そんな事より、今問題なのはその男が敵側に協力していると言う事よ」
「何故そんな事に成ったのですか?」
「私がこの子を横取りした形になって、こちら側に不信感を抱いたのが1番で
しょうね」
「それで私にどうしろと?」
「そこが悩み所なのよね」
「出来れば私かユリアがあの男と会うのがベストなんだけど、多分無理よね」
「エルフ軍であれば父様を通せば穏便にコンタクト出来るのでは?」
「その男を保護している相手が問題なのよ」
「大抵の相手なら融通は効くと思いますけど?」
「エルフ単独派少将の腰巾着で強硬論派のメルヴィン大佐、簡単に言えばハイ
エルフの天敵みたいなグループよ」
「そうなると融和派の父様には荷が重いかも知れません」
「それでも貴女の父様を巻き込む形にしないと纏まらないかも知れないわね」
「その場合フレイヤ様も全面に出てくださるのですか?」
「こちらの陣営内に限るけど、そうでないと動いてはくれないでしょう?」
「判りました、1度父様を交えて話をしましょう、話はそれからですね」
「そうね、所で貴女、ここへは何しに来たの?」
「あっ、忘れてました、巫女の件でメアリーに会いに来たんです」
「まぁ、懐かしい名前ね、私も会いたいわ、じゃあ明日にでも会いに行きまし
ょう」