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レストランにて

開拓村の、総ての雑務を終えて村を出立したのは昼食を摂ってからの事だった。

アウラへ向かったのはニナ、アンジェ、フランカ、エレナの4人である。


今日の運転手は、ニコニコ顔のアリエスだ、昼食後の運転手争奪ジャンケン戦

は熾烈を極めた、何しろ今日の乗車人数は10人、余裕で座れるのは運転席と

パッセンジャーシート1席しか無い、勝ち抜け順に席が決まっていく、アリエ

スが勝った時、突き上げた拳を輝く笑顔で見つめていたあの表情など、過去に

見た事の無い程のものだった、ジャンケン戦初勝利と言うものが、そんなに大

した事の様には、とても思えないのだが、本人が嬉しいならそう言う事なのだ

ろう。


リド、リーゼルをスルーして西へ転進する事3時間半、ギーゼラに到着したの

はPM18時半頃。

門番が横柄な態度と下心満載で舐める様な視線を浴びせた後、セリア商会の鑑

札を見て180度態度が変わったのを利用し、酒場と宿屋を紹介して貰った。

立ち去り際に殺気を込めた見下す視線で返礼するのを忘れないセリアである。


紹介されて訪れた酒場は酒場では無く、最早レストランとと呼べるその店構え

に、嫌な予感を覚えつつ店内の受付カウンターに控える男性へと視線を向けた

瞬間、後ろから割り込む様に入店してきた役人風の男が受付の男へと歩み寄る

と耳打ちする事数瞬、軽く会釈をすると直ぐに店外へと立ち去っていった。


気を取り直しカウンターへと近寄るセリアに、腕を室内奥へと差し伸べ彼女達

を誘う。

誘われるままに向かった部屋には、20人は座れ様かという円卓に立派な上座

が1つの一見会議室風、上座に向かい半円に座らせられた座席位置にセリアは

仕込まれた事を確信した、先の討伐の1件は随分と知れ渡っているらしい。

(これは、また厄介事だな、誰が来る事やら)


待つ事10分程、その人物はやって来た、ノックもせず礼の言葉も掛けずに上

座へと座る男に、腕を組み瞑目して何も語らないセリアである。

そして男は行き成り本題を語り始めた。

「今この城都には手に負えないならず者が増えてきている、それらの討伐を命

ずる」

大仰な態度で上から目線で言い放った男は何を勘違いしたのか、満面に笑み

を浮かべている。

そして誰も反応しない事に焦りの色を顔が浮かび始める。

数瞬の間を置き目を見開いたセリアが言葉を発した。

「帰るわよ、ここは食事処では無い様だわ」

席を立つ面々に焦りながらも待ったを掛ける男が言い募った。

「何を言っておるのだ!元々は其方らのせいなのだぞ!」

立ち上がり、男を見遣ってセリアが返した。

「百歩譲って我々のせいだとして、それを取り締まるのは衛士の仕事でしょう

?通りすがりの我々が、例え貴方がここの領主だとしても命令される言われは

ありませんが?」

「そっ、それは判っておる!判っておるのだが、束になっても勝てんのだ!」

「大量の死人でも出ましたか?」

「いや、死者は出ておらんのだが・・片っ端から喧嘩を吹っ掛けて廻っている

のだ、3日前に衛士鍛練所に乗り込まれて、軒並み叩き伏せられた、もう誰も

勝てんのだ」

「拳闘家ですか?」

「そうだ、相手は3人、女で配下を引き連れている、配下の実力は判らん、闘

った事が無いからな」

「ではギルドに依頼するべきでは無いのですか?」

「言われるまでも無い、当然依頼は出したのだ」

「では何故?」

「衛士すら束になっても勝てんのだぞ、噂が拡がっていれば受ける者など居る

筈が無かろう?」

「そうですか・・・、ではお受けしましょう、ですが報酬は頂きます、ここに

居る全員の今日と明日朝の食費と今晩の宿泊費でどうですか?」

「判った、受けよう」

「で?其奴らの根城は?」

「北門周辺の貧民街の辺りと聞いている」

「では、明日にでも」

それを聞くと男はさっさと引き上げ、それを見届けアリエスがセリアへと声を

掛けた。

「いやに簡単に受けたじゃね~か?手下の人数も聞いてね~し」

「そんなの、頭を潰せば終わりでしょ?ものの数にも入らないわよ、でもアン

ジェが居たら喜んだでしょうね、あの子殴り合いが好きだから」

「そう、そう、鍛練してると時々素手で剣を受けてるからな、どんだけ好きな

んだよ、とは思っていたけどな」

「立ち話も何だから、食事にしましょう、皆今日は食べ放題よ、好きな物をど

んどん注文なさい」

座り直すセリアにアリエスが聞いた。

「所でアイツは誰だったんだ?」

「そんなの誰でも良いでしょ?言葉が足りないのか、頭が足りないのかは判ら

ないけど、全部前払いなんですもの、胸くそ悪かったけど気前が良かったから

受けただけよ?」

「相変わらず容赦が無えな」

誰だか判っていても食事が不味くなるので口には出さない2人であった。

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