開拓村にて
セリアが開拓村へと戻った時、村内は慌ただしかった。
「セリア様!丁度良い所へ!」
セリアを見つけニナが駆け寄る。
「如何したの?慌ただしいわね?」
「ライカの配給部隊がもう直ぐ来ます」
「あら、丁度良かったわね、誘い込んで一網打尽よ、殺生は無し生け捕りにし
て」
「了解です」
「ベレス、ブラド、貴方達三文芝居位出来るわよね?」
「「任せてくれ」」
「まるで兄弟みたいにハモるわね、種族が違うのに」
セリアの指示を受けて、メンバー全員が住宅内へと身を隠し、息を潜める中、
配給部隊が村内へと入ってくる、森林内の輸送である為、全員背負子だ。
「やあ、お疲れさん、荷物は全部そこの村長宅の前に置いてくれ」
ベレスがリーダーらしき女に声を掛けた、全員女性である、人数は40人。
「待たせたな、腹空かせてるんじゃないかと心配してたぜ」
ベレスが不思議に思いリーダーへと問い掛けた。
「何故今回は女ばかりなんだ?」
「男共は全員出陣準備さ、女が分けて持ったらこの人数に成っただけだ」
「そりゃご苦労だったな、まぁ、ゆっくり休んでくれ、今茶を煎れる」
「あぁ、すまんな」
全員が荷物を降ろし、剣をはずして炉端へと座り込み、紅茶を飲み始めた時、
一斉に抜剣すると共に首筋へと剣先を向けた。
紅茶を飲みかけの姿勢のまま、リーダーの女がベレスへと問い掛ける。
「これは、どう言う事だ?」
「すまんな、殺す積もりは無い、俺達はもうライカ軍では無くなったのさ」
「意味が判らんな、どう言う事だ?」
「抵抗する気は有るか?」
「出来る訳無いだろう、剣を持ってけ」
セリア達は剣の接収を見届けた後、ゾロゾロと炉端へと集った。
それを見てリーダーがベレスへと問い質した。
「それで、この人達は誰だ?」
リーダーの声を聞いたエレナがひょっこりと顔を出した。
「お?誰かと思えばジェーンじゃない!」
「?!エレナ!」
「久し振りだな~ジェーン元気そうで何よりだ」
「お前こそどうしてここに?」
「あたしはな、今この人の従者をやってるんだ」
エレナは自分の斜め前に立つ人物を指差した。
そこでセリアが突っ込みを入れた。
「貴女、自称弟子じゃ無かったの?」
「あっ、そうだった!弟子だった、ゴメン、ゴメン」
「お前少し会わない間に明るく成って、綺麗に成ったな」
「身成もそうだが、中身も綺麗だぞ?」
「お前のジョークなんて始めて聞いたよ、で?その人は誰なんだ?」
「聞いて驚け、この人はセリア商会会長セリア・トラーシュ様だ」
「な!!あの300人全滅の・・・」
二の句を継げないジェーンを横目にエレナがジェーンを紹介した。
「師匠、コイツは元ライカ王国軍少尉のジェーンです」
「宜しく、ジェーンさん」
「こちらこそ」
「それで、1つ聞きたいのだけど貴女は何故、現ライカ軍に従軍を?」
「そりゃここに居る連中と一緒さ、聞いたンだろ?この連中にも?」
「貴女は誰を?」
「両親と弟だ」
「理由が無くなれば従軍する気は無い訳?」
「そりゃそうだろ?あたしは元々王国軍兵士だ盗賊上がりに下げる頭なんか持
っちゃいね~よ」
「ここに居る子達も貴女と同じと思って良いの?」
「あぁ、そう思っていいぜ、大体あのクソ野郎の直臣なんてあんたが殆ど倒し
ちまってるよ、残ってるのはアウラの取り巻き位なもんさ」
「それで人質は何処に?」
「アウラの城下に居る奴全部がそうだ、ライカはもう陸に食いもんが無い、ア
ウラに人質を集めて漁港で投網を投げさせてる、それにも限界は有る、農夫に
剣を持たせる国じゃ先がな無くなるのも分かるだろ?」
「助けてやると言ったら、協力する気は有る?」
「あぁ、勿論だが出来るのか?」
「ジェーン、この人に勝てる人なんて居ないぞ?」
「エレナ、軍隊の間違いじゃないか?」
そんな話をしている2人にセリアが声を掛けた。
「人質を解放すれば、現国王の周りは敵だらけと言う事?」
その言葉にジェーンが返す。
「軍隊すら城内には入れて貰えないからな、城門が破れればこっちの勝ちだ」
「ニナ、振動魔法の使い手を3人連れて城門の閂を切ってきなさい、まだ軍隊
が居る内が良いわ、そうすれば勝手に雪崩れ込むでしょう、エレナももう使え
るわよね?ついでだから、討伐するかしないかはエレナに任せるわ」
「あぁ、使える、あたしの国だし行ってくるよ」
「ジェーン、貴女達はアルリアへ行きなさい」
「何故だ!本丸高城戦なら当然あたしも・・・」
それを遮りセリアが問い質した。
「貴女達は戻るまで何日掛かるの?」
「おおよそ7日だな」
「ウチのメンバーなら今日の日が沈む前に着くわ」
「そんな馬鹿な話がある訳無いだろう!420ルークは有るんだぞ」
「そうね、1時間休憩を入れても夕方には着くわね」
「ベレス、ブラド、ジェーンを頼んだわよ?」
「「了解です」」
「宜しい」
訝しむジェーンにエレナが声を掛けた。
「なあ、なあ、ジェーン、ちょっと見てろよ」
そう言うとエレナは、走歩ですっ飛んで行って、戻って来た。
「どうだ?」
エレナはニコニコ顔である、ジェーンは口をあんぐりさせながらもやっと理解
したのかボソリと呟いた。
「・・・もう何も言わんよ」
この後目を輝かせたエレナの語るセリアの伝説にセリアの怖さを叩き込まれた
ジェーンであった。